雷轟は涙を目に溜めて私に助けを求めていた。下手な励ましは逆効果……。それなら私の本心をぶつければ良い!
グニッ!
「ふぁっ!?」
「野球を初めて数ヶ月の癖に何を一丁前の事を言ってるのかな?」
両手で雷轟の頬を引っ張る。雷轟の頬は柔らかくて、なんか癖になりそうだけど、今はお説教を続ける。
「ふぁ、ふぁかりひゃん!?」
「良い?スランプっていうのは長年やってきた事に対して思うようにいかない、出来てた事が出来なくなった、調子が低下した状態が続く事を差すんだよ」
まぁ意味合い的にも雷轟の言うスランプは間違っていない。でも雷轟はまだそれに悩むのは早過ぎる。
「ふぇ、ふぇも……!」
このままだと雷轟が上手く喋れないので、1度両手を頬から離す。
「でももストもないよ。今の雷轟は勝負してくれる投手が少なくて、勝負してくれるのが久し振りだから思うように打てないだけ……」
「朱里ちゃん……」
「雷轟は以前大村さんにこうアドバイスしたそうだね?『一球入魂』って……」
「う、うん……」
「今の雷轟に対して私は同じ事を言うよ。1球に全力を注ぎ、スイングする。別にその結果三振になってしまっても良い」
「三振でも……?」
「まぁ打てるに越した事はないけどね。それにそれが勝負をしてくれる投手に対しての礼儀でもある。1球1球に慎重になるのも悪くないけど、いつも通り勝負を楽しんでいる雷轟を私達に見せてよ」
私はそう言って先にベンチに戻った。あとは雷轟次第……だね。
『アウト!』
ベンチに戻ると2回表が終わっていた。
「芳乃さん、この回の橘はどうだった?」
「えっとね……。スライダー、カーブ、ストレートでカウントを取りにいって、スクリューで決めにいく……って感じの、前に対戦した時と変わらなかったよ」
ピッチング自体は変わらず……か。来年以降にまた変わる可能性はあるけど、変わらないのなら変わらないで橘の攻略に勤しむかな。
「よし!」
ベンチ裏から雷轟が出て来た。顔を見るとどこか吹っ切れた感じがした。
「もう……大丈夫そうだね?」
「うん……。私なりに考えたけど、やっぱり朱里ちゃんの言うようにするのが1番だったよ!」
「それなら良いよ。雷轟はうちの4番なんだから、頑張ってね」
「うんっ!」
いつもの雷轟に戻った。これなら打撃方面は心配いらないだろう。また同じように陥ったのなら、また同じように励ませば良いだろう。
(あとは……あの人との確執さえなんとか出来れば良いけど……)
家庭の事情に口を挟む訳にもいかないし、それは当人同士が解決するべきなんだけど、私は何か力になれるのかな……。
「……あっ!?」
だからと言ってスランプを理由にトンネルしても良い訳じゃないけどね!
「任せろ!」
主将も雷轟のカバーが良くなってる。いつもお疲れ様です!
(まぁこれも雷轟らしさ……なのかな?)
まぁこのままだと色々不味いから、雷轟の捕球率を上げたいところだ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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