最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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恩師

上杉さんが私と(ついでに二宮とも)話がしたいと言ったので、武田さん達には席を外してもらった……というよりは武田さんが山崎さんと雷轟を連れてどこかに出掛けてくると言った。武田さんなりに空気を読んだのかな。

 

「真深ちゃんは今日泊まるみたいだし、タマちゃんと遥ちゃんとも良かったら一緒に泊まらない?」

 

「お泊まり!?したい!」

 

「私も……久し振りに泊まろうかな。真深ちゃんとも色々話したいし」

 

……という話を3人が出掛ける前に聞いた。私や二宮も誘われたけど、またの機会にしておく。あの人にも会いに行きたいし。その時に3人が凄く残念そうな顔をしていたのは見なかった事にしておこう。

 

……で、3人が出掛けて、二宮と上杉さんと3人になった。

 

「……それで?上杉さんは何を聞きたいのかな?」

 

まぁ大体聞く内容は予測出来るけど……。

 

「そうね……。色々と聞きたい事はあるけれど、早川さんに今の……3年前のリトルリーグの世界大会で私達に投げたあのストレートに見せ掛けた……球。それを教わったのはあの人で、良いのかしら?」

 

(まぁその質問になるよね……)

 

あの人に偽ストレートを教わった事を知っているのは私と二宮だけ。二宮の話によると村雨もあの人との交流があるみたいだけど、偽ストレートの事は特に何も言っていなかったらしい。

 

「……あの人って言うのは、上杉さん達と同じ高校に通ってて、1つ上の先輩で、雰囲気がどこか雷轟と似ている……『風薙彼方』さんで間違いないかな?」

 

「……そうよ。私達がお世話になっている彼方先輩で間違いないわ。私達は彼方先輩に救われたの」

 

やはりか……。風薙彼方……私に偽ストレートを教えてくれた、私にとって野球をまた始める事が、シニアのエースに昇格する事が出来た切欠をくれた私にとっての恩師。

 

(容姿が、雰囲気が、言動がどことなく雷轟と似ているのは……雷轟と風薙さんは血が繋がった本当の姉妹だからなのだろう)

 

ちなみに風薙さんに偽ストレートのヒントをもらったのは3年前の3月末で、その直後くらいに私は雷轟と出会ったのだ。当時は風薙さんのヒントがわからず、野球を辞めようとしていたのは私の胸の中に仕舞っている……。

 

「風薙さんは3年前の4月初旬まで日本にいて、それからアメリカに渡ったって話を聞いた……。上杉さん達が風薙さんと邂逅したのはその時なの?」

 

「……いいえ、私が彼方先輩と初めて会ったのはアメリカで間違いないけれど、それは4年前の春頃なのだから」

 

時系列が食い違ってるのは、風薙さんが私と初めて会った時は一時日本に帰国していた……という事になる。私よりも先に上杉さん達と出会っていたのか……。

 

「そっか……。あの人は元気にしている?」

 

「ええ……。いつも太陽のような明るさで私達を引っ張ってくれているわ」

 

雷轟の話が出るとどこか暗くなる事のある風薙さんだけど、基本的には底抜けに明るい。コミュニケーション能力も高いし、そういうところも雷轟にそっくりだ。

 

「私もここに来る前に風薙さんに会ってきました。性格とかは相変わらずでしたが……」

 

「えっ?二宮、風薙さんと会ってきたの?」

 

「会ったのは偶然です。本来なら静華さんに会って必要な情報をもらおうとしたのですが、その時に風薙さんと……ウィラードさんもその場に居合わせてました」

 

(成程……。現状風薙さんとウィラード・ユイさんは一緒に行動しているようだ。上杉さんの帰省が終わり次第、上杉さんもそこに合流する……という形を取っているのだろうね)

 

風薙さんって滅茶苦茶慕われてるなぁ……。それなのに、どうして雷轟とすれ違いが起きているのかがわからないよ。

 

「そして……そのついでと言ってはなんですが、風薙さんの球を数球受けてきました」

 

「!?」

 

「それで……どうだったの?」

 

私の知る風薙さんは偽ストレートを朝倉さん並の速度で投げる事、他の持ち球は凄まじい変化とキレのドロップとナックルを投げる事くらいかな……?

 

「……3年前の風薙彼方さんはもういませんね。彼女は既に別の次元へ進んでいます」

 

「別の……次元?」

 

「まずストレートですが、球速は大豪月さんを凌ぎます」

 

嘘でしょ!?高校生最速のストレートを投げる大豪月さん……。大豪月さんのストレートはプロの中でもかなり速い部類に入るって注目されていたのに、その上を行くの!?

 

「彼女の持ち球であるドロップも、ナックルも、更にキレを増しています。そして……」

 

「そして?」

 

「……これは私が説明するよりも、朱里さん自身が体験した方が早いと思います」

 

そんなに……風薙さんの投げる決め球は凄いのかな?二宮が説明を濁すくらいに……。

 

「風薙さん達はかつて私達が練習していた河川敷に足を運んでいるみたいです」

 

「あの河川敷に……」

 

以前に武田さんと山崎さんに紹介した河川敷……。あそこに風薙さんがいるんだ……!

 

「ただいま~!」

 

武田さん達が戻ってきたみたい。袋を複数持ってるけど、何か買い物にでも行って来たのかな……?

 

「……私はこれでお暇するね」

 

「朱里ちゃん……?」

 

まだ河川敷にいるのなら、会って話がしたい。色々と……。

 

「お邪魔しました」

 

「……私もこれで失礼します。お邪魔しました」

 

二宮も私に着いて来るみたいだ。二宮なりに、先程会ってきただけではわからない事もあるのだろう。

 

「私もちょっと出て来るわ」

 

「ええっ!?真深ちゃんまで!」

 

上杉さんも加わり、私、二宮、上杉さんの3人で風薙さんのいるであろう河川敷に足を運ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

シニアにいた頃はよく練習していた河川敷……。来るのは武田さんと山崎さんを連れた時以来かな?

 

「……ここに来ると思ってたよ。朱里ちゃん!」

 

そこにはウィラードさんと一緒に風薙さんがいた。私と風薙さんが初めて会った、この河川敷に……!

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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