遠前野球部に入って初の練習が終わった……んだけど。
「意外とハードな練習だったわね……」
「確かに。初心者だらけの野球部の練習内容じゃないような……」
天王寺先輩の練習内容は私達のいたアメリカの高校でもかなりキツいもの。それを……。
「う~ん……!今日は思いの外よく動けた気がするよ」
「盾先輩が私達の中で1番伸びてるっすね」
「そう言う雫ちゃんも守備良くなったよ」
今日1日の練習を見る限りだと草野先輩と森川さんがこの中で群を抜いてた。その次に……。
「亜紀、私達は外野の双璧を成す存在になるべきよ。私がレフトを極めるから、亜紀はライトを極めなさい」
「由紀、外野の双璧を目指すのも悪くないけど、私達は天王寺先輩からの指令でサブポジションをこなさないといけないわ。特に由紀は風薙先輩とウィラードさんに続く投手にならないと……」
夢城姉妹。この2人に関しては外野の守備は完璧だった。由紀が言うように姉妹で外野の双璧を成してるんじゃ……?これは真深も危ないかも知れないわね。
「洋子ちゃん、私達も負けてられないねぇ……!」
「私達には私達のペースがある。もちろんそれを理由に停滞して良い訳じゃないけど、頑張っていこう」
矢部先輩と兼倉先輩はどちらもマイペースながらも、練習には何喰わぬ顔で着いて来ている……。
「あの、私達の練習……どうでしたか?」
「えっ?」
冴木さんが突然声を掛けてきた。
「……良かったわ。私達も負けてはいられない」
「あ、ありがとうございます……」
(これは正直な気持ち……。私達が新しく入った野球部はアメリカにいた頃と同じ……いや、彼女達が初心者だと考えるとそれ以上ね)
これであとは天王寺先輩が言う捕手候補の人が入ってくれれば……!
「態々残ってくれて助かるよ」
「気にしないで!私達にとっても大切な事だし」
今から私達3人は天王寺さんが言う捕手候補を勧誘に行くんだけど……。
「あの、本当にこっちで良いんですか?」
「合ってるよ」
こっちって私達が住んでるアパートの方向……だよね?
「さて……着いた」
「えっ……?」
「ここって……!?」
やっぱり……。私達が住んでるアパート……『水鳥荘』だ。
「みーずーどーりーさーん!私達と一緒に野球しましょー!」
天王寺さんが呼び掛けてるのは……水鳥さん?
「……うるさいんだけど?」
「なんだいるじゃん。前に来た時は居留守使われたから、強行突破しようと思ったのに……」
「それが嫌だから、嫌々ながらも対応に来たの。他の住人に迷惑掛かるし……」
私達が初めて訪れた時に対応してくれた……管理人代理の人だよね?もしかして私と同い年?
「それで?返事は?」
「何度押し掛けてきても同じ……。野球は2度とやらない」
「頑なだなぁ……」
本当に。水鳥さんに何かあったのかな……?
「……そうやって逃げるんだ?リトルの時と同じように」
「っ!貴女に何がわかる!?私が……どんな想いで、どんな惨めな気持ちになったか……!」
「わからないなぁ。私は水鳥さんじゃないからね。まぁ水鳥さんの場合は比べる相手が悪かったとしか言いようがない」
「……っ!とにかく、私は野球をやらないから。他を当たれば?」
バタンッ!
ドアを閉めちゃった……。
「駄目かぁ……。また出直すかな」
「ねぇ、水鳥さんに何かあったの?」
「う~ん……。まぁよくある事なんだけどね……?」
「まさか強行突破してくるなんて……」
「押し切られそうやったな」
「まさか……」
(そう……。私は野球なんか2度やらない。リトルの頃に圧倒的な実力差を感じてから、野球をするのが馬鹿みたいになった)
「別にあと数ヶ月やし、力を貸したってもええんちゃう?」
「……外藤は野球、するつもり?」
「まさか!ウチはこんなしょぼい高校で態々野球なんかせえへんよ」
「……だよね」
「ほな、ウチはこれで失礼するわ。また明日~」
「……という訳で水鳥さんのリトル時代のデータって調べられるかな?」
『任せるでござるよ。練習の合間にやっておくでござる』
「ありがとう静華ちゃん!」
水鳥さんに何があったのか……。それさえわかれば、力になれると思うから!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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