最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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才能の壁

彼方先輩は調べる事が出来た……と言って、どこかに出掛けて行った。水鳥先輩の件についてかしら……?

 

「真深、とりあえず私達だけでも水鳥先輩を説得しましょう」

 

(昨日の状態を見る限り、水鳥先輩の説得は簡単ではないけれど……)

 

「……そうね」

 

色々思うところはあるけれど、今は水鳥先輩と話がしたい。

 

 

ピンポーン。

 

 

呼び鈴を鳴らして、出て来たのは水鳥先輩ではなく、黒いマスクをした女性だった。

 

「……水鳥ならおらんぞ。今日は水鳥の祖母……このアパートの管理人と話しに行っとるからな」

 

「あの、貴女は……?」

 

水鳥先輩を名字で呼んでいる事から姉妹や親戚の類いではないわね。そもそも似てないし……。

 

「……ウチは外藤。外藤恭子や」

 

「私達は……」

 

「上杉真深とウィラード・ユイやろ?あともう1人、風薙彼方も合わせた3人、かなりの有名人やで?野球やっとったら知らん奴はおらんよ」

 

遠前野球部では天王寺先輩以外は私達の事を知らなかった様子だけれど、野球やってる人は皆知っている……とばかりに外藤先輩は言うけれど……。

 

「それなら水鳥先輩は私達の事を……」

 

「もちろん知ってる。あいつは訳ありで、野球やってる奴には塩対応するからな」

 

(……だから、どこか冷たい印象を感じたのね)

 

(それを表に出さないのは、アパートの管理人代理を勤めているから……)

 

「まぁあいつは才能……ってもんを知ってしまったからな。それで野球は辞めたみたいや」

 

「才能……?」

 

「才能……ってよりは上杉にもある『異常』の方に当てはまるな」

 

「い、異常!?」

 

私ってそんな風に思われていたの……!?

 

「もちろん良い意味での話や。ちなみにウィラードはその一歩手前に属してる」

 

「……私はまだまだ真深には追い付いていないのね」

 

ユイ、今そこは論点じゃないのよ?

 

「あいつはリトル時代にそれを目の当たりにした……。おまえ達は川越リトルって知っとる?」

 

川越リトル……確か早川さんや二宮さんがいたチームね……。

 

「はい……」

 

「水鳥もそこのリトルで野球やっとったみたいでな?あいつは才能ある選手やったから、4年生の時点でスタメンマスクを被って、冷静なリードで味方投手の力を引き出して、相手打者を翻弄させた事で将来を期待された捕手になる予定やった……」

 

順風満帆な野球生活を送っていたのね。

 

「でもそれならなんで……?」

 

「……その1年後に1人の捕手が入って、そこからあいつの歯車は狂い始めたんや」

 

1人の捕手……まさか!?

 

「二宮瑞希って言っとったっけ?曰くそいつも『異常』の持ち主みたいやで」

 

(ねぇ真深、二宮さんって年末に出会った小柄の……?)

 

(ええ。その二宮さんで間違いないわ)

 

だとしたら、水鳥先輩は二宮さんの才能に、『異常』に……?

 

「普通に自分よりも上手い奴、才能のある奴やったら井の中の蛙で済むけど、水鳥は才能の遥か先にある『異常』に押し潰された……」

 

「それで、水鳥先輩は野球を……?」

 

「恐らくな。まぁウチが聞いたんはそれだけや。これ以上は知らん」

 

水鳥先輩……。野球をこのまま辞めても良いんですか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

私は水鳥さんを説得すべく、彼女と話をする為に、学校へ呼んだ。

 

「水鳥さんっ!」

 

「貴女……風薙彼方?話って何?」

 

「私達と野球やろうよ!」

 

「また……その話?私は金輪際野球は……」

 

「……二宮瑞希」

 

「っ!?」

 

やっぱり……。静華ちゃんの言う通りだったよ。

 

 

『水鳥殿は川越リトルで4年生からレギュラーを取っていたのでござるが、その翌年に瑞希殿が加入し、スタメンマスクを奪われたのでござるよ』

 

「そんな……。それだけで?」

 

『それだけで済めば良かったのでござる。彼女の場合は瑞希殿の異常性を目の当たりにして、それに畏怖したから、野球を続けるのが怖くなった……。まぁこれはあくまでも拙者の想像でござるが、水鳥殿は瑞希殿の見透かされたような、暗い闇のような眼で丸裸にされそうになったのでござる』

 

「丸裸に……?」

 

『左様。瑞希殿はリードが優れているだけでなく、捕球技術の高さ、情報量と情報力の多さ、味方投手を立ち直らせる才能、味方投手の力を上手く引き出す才能等々、捕手に必要なものを全て揃っているでござる。だから小学4年生の時点にして、中学……いや、高校レベルを越えているのでござるよ』

 

「そ、そこまでの捕手って普通はいないよ!?」

 

『だから瑞希殿は『異常』なんでござるよ。まぁその代わりと言ってはなんでござるが、打撃能力は当時並以下でござった』

 

「それで……水鳥さんは……」

 

『瑞希殿の才に嫉妬しているならまだマシでござったが、そこから弱気になり、ズルズルとリトル引退まで引き摺り、そのまま野球を辞めてしまったのでござるよ』

 

 

……というのが静華ちゃんが集めた水鳥さんの情報。静華ちゃんって何者なんだろう?本人は忍者って言ってたけど……。

 

「そう……。知ってるなら話が早い。私は二宮瑞希に負けて、逃げて、塞ぎ込んだ弱虫。こんな奴に構うより、新しい捕手を探した方が良いんじゃないの?」

 

水鳥さんは諦めたように、すべてがどうでも良いかのように呟く。私はただ……水鳥さんと野球がしたいだけなのに……。

 

(一体どうすれば良いの?)

 

こういう時、真深ちゃんやユイちゃんならどうするのかな?或いは遥なら……!

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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