1回裏。洛山高校の攻撃は……。
「来なさい!」
エルゼちゃんからだ。シニア時代はクリーンアップを打ってたけど、洛山では1番なんだ……。
「さて……。シルエスカ姉妹は彼方達とは元チームメイトだ。ユイの球をある程度は知っているだろうね」
「それだとこの対面はユイちゃんが不利って事?」
天王寺さんと明美ちゃんがユイちゃんとエルゼちゃんの対面について話し合っている。2人の総合戦績は6対4でユイちゃんが勝ち越してはいるけど、それはあくまでもシニア時代の話……。今はどうなんだろうね?
カキーン!!
いきなり大きい当たりを打たれた!?
『ファール!』
(いきなりやってくれるわね……!)
(これくらいなら次はスタンドよ。もっと本気で来なさい!)
に、睨み合ってる……。そういえばこの2人の対決はこんな光景がよく見えた気がするなぁ。尤もエルゼちゃんがユイちゃんの球をあそこまで飛ばすようになったのは大きな成長だけど……。
「初球から行かれたかと思ったよ……」
「まぁ仮に打たれたとしてもまだまだ問題はないさ。最悪彼方をぶつければ私達が負ける事はないだろう」
な、なんか私が過大評価されてるよ!?
「……でもそれだとユイを先発にした意味がない。アメリカで好成績を叩き出したユイ……いや、これは海外からの留学生全般に言える事だけど、日本にもまだまだ強力な選手が潜んでいるって事をわかってもらう為にこの試合を組んで、ユイを先発に選んだんだ。まぁシニアリーグの世界大会に備えての最終調整……と言うのもあるけどね」
「そういえばもうすぐなんだっけ?私、野球をやり始めたのは天王寺さんに誘われたからだけど、観るのは結構好きだったりするんだよね。テレビでだけど」
「シニアリーグの世界大会までもう2週間を切ってる。向こうの4番である和奈も出るみたいだし、互いに今の内から対策を練ってもらうのさ」
「ユイちゃんと……あと真深ちゃんはアメリカ代表で、洛山の4番のちっちゃな子は日本代表……。チームメイトとしてはユイちゃんと真深ちゃんを応援したいけど、日本人としてはどうも日本代表を応援したくなるんだよね……」
「それは明美の好きにしたら良いさ。私は状況に、打者や投手に応じて応援する相手を変えるけどね」
そっか……。もうそんな時期なんだ。私も朱里ちゃんと一緒でシニアリーグの世界大会は出なかったんだよね……。
(でも今年は朱里ちゃんも世界大会に出て来る……。真深ちゃんとユイちゃんにとっては朱里ちゃん最大の脅威になりそうなんだよね)
カキーン!!
『ファール!』
「……それにしてもこれで5球目か。やはりというか、ユイが不利になってきているな」
「そうなの?その割にはユイちゃんは余裕があるように見えるけど……」
「ユイはこの野球部に入ってからは打たせて取るピッチングを改めて学んだからね。全ては皆の守備練習も兼ねて……。しかしエルゼ・シルエスカを相手にすると今投げているユイの球だとスタンドまで運ばれかねない」
い、今とんでもない事を聞いたような……。超打撃チームを相手に打たせて取る守備練習をしてるの!?だからユイちゃんはまだ余力を残してるんだ……。
「……余計なホームランは避けたいし、1~4番に対しては縛りを解除しますかね。タイム!!」
天王寺さんがタイムを掛けて、ユイちゃんのところに駆け寄った。
「天王寺先輩……?」
「ユイ、1~4番相手には思い切りやって構わないよ」
「……良いんですか?」
「本来なら洛山打線が放つ鋭い打球を皆が対処出来るようになる為にこの試合を組んだところもあるけど、1~4番を相手にそれをやると余計な失点を招きかねないからね」
「……わかりました。全力で抑えに行きます!」
「頼んだよ」
あっ、天王寺さんが戻ってきた。
「ユイちゃんになんて言ったの?」
「1番のエルゼ・シルエスカ、2番のリンゼ・シルエスカ、3番の非道、4番の和奈を相手には全力で投げるように言ったのさ。これ以上粘られると面倒な事になるしね」
「そ、そうなんだ……」
天王寺さんはどこまで先を見てるんだろう……。
(天王寺先輩からも許可をもらったし、全力で抑えに行くわよ!)
(……!やっと本気を出すみたいね。私を相手に出し惜しみするなんて随分と余裕じゃないの)
空気が更にピリッとする……。この1球で2人の勝負が決まりそうだね。
(彼方先輩には遠く及ばなくても、これが私の全力……!)
(今までで1番速い!?)
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
ユイちゃんが最後に投げたストレートは私が知る限りで、1番速いストレートだった……。ナイスピッチだったよ!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない