満塁から連続で敬遠して、7対4となった。尚もノーアウト満塁のピンチで5番打者と対峙するユイちゃん。
カキーン!!
5番の選手からいきなり良い当たりを打たれる。その打球はライトへと……。
「ライト!!」
「任せぇ!」
バシィッ!
『アウト!』
「やった!ナイスプレー!!」
ライトを守っている恭子ちゃんのファインプレー!しかもランナーは飛び出してたから、タッチアップも出来ない!
「どんどん打たせぇ。そもそもこの試合はうちらの守備練も兼ねとるからな!」
「はい!頼りにしています!」
その後も6番、7番とファインプレーによって洛山打線を2イニング連続で無得点で終わった。
(これは少し不味いかな~?白糸台以来の苦戦を強いられそうだ~)
「よしよし!予想以上の展開で私は嬉しいよ!」
3回裏が終わると天王寺先輩は凄く機嫌が良さそうに頷いていた。
「私達のエラーでピンチを招いてごめんね……?」
「守備練習、もっと頑張らなきゃ……!」
「気にしないでください。この試合はバッティングで返していきましょう!」
ユイの言うように、この試合は打ち合いの予定。エラーを帳消しに出来るようなバッティングを見せればそれで取り返せると思うけれど……。
「ユイの言う通り!盾はホームランを打てるパワーヒッターだし、洋子も他所の高校なら上位打線を任せられるくらいのアベレージヒッターだ。この試合はとにかく打っていこう!守備はまた練習すれば良い」
天王寺先輩も私と同じ事を思っていたみたいね。本当にこの人は彼女達……遠前高校野球部をよく見てくれているわ。
「この回は亜紀からだ!まずは出塁していこう!」
「了解しました。出塁を目指して頑張ります」
士気が上がっている中で、亜紀ちゃんとベンチで寛いでいる由紀ちゃんだけが無表情で、無感情で、淡々としている……。それはまるで機械のようだ。
「ねぇ天王寺さん、亜紀ちゃんと由紀ちゃんっていつもあんな感じなの?」
「あんな感じとは?」
「なんか無表情で、機械的な感じがして……」
彼方先輩が私達の思っている事を天王寺先輩に尋ねる。すると天王寺先輩からは……。
「由紀、話しても良い?」
「構いませんよ。私と亜紀にとってはもう今更な事でどうでも良いですし、今は天王寺先輩もいますし」
由紀ちゃんに確認を取ってから、天王寺先輩は口を開く。
「……夢城姉妹は幼い頃に肉親を亡くしてからずっとあんな感じだよ。むしろ当時に比べたら明るくなった方」
「そうなんですか?」
肉親を亡くした……という言葉に対して私達は少し暗くなるが、由紀ちゃんは気にしなくても良いと目で語っていて、天王寺先輩もそれがわかっているのか、話を続ける。
「詳しい経緯は話せないけど、うちで夢城姉妹を引き取って、それから私との生活を共にした。今も私のわがままに付き合ってくれるのさ。この遠前高校では野球を始めてくれてまでね」
「……本当ならば、清澄にいた頃も、その前の学校にいた頃も、私と亜紀は天王寺先輩の力になろうとしていました。天王寺先輩にはそれだけの恩義がありますので」
「私の事は気にしなくても良いって言ってるんだけどね」
「じゃあ天王寺が各地を転々としているのを2人は着いて行ったんだ?天王寺の親とかは天王寺のわがままはもちろん、2人の処遇について何も言わなかったの?」
「まぁ私の所は私の所でちょっと特殊だからね!」
特殊……。天王寺先輩も謎に包まれているのよね。洛山の非道さんはどこか掴めない人なのに対して、天王寺先輩は謎そのもの。まるで人間ではない、人間の形をした何かだと思ってしまうわ。
カンッ!
「おっ?先頭の亜紀が繋いだぞ!まだまだ勢いはうちにある……。続け洋子!」
「う、うん……」
先程の話を聞いたせいで、どこか気まずいわね……。当の本人である由紀ちゃんは湯呑みでスポーツドリンクを飲んでいるし、天王寺先輩も気にせずに私達の応援をしてくれている……。
「……まぁ色々言いたい事もあるやろうけど、それは後で、各々で聞いたらええやん?いつまでも湿っぽい空気は止めとこうや」
「外藤の言う通り。……それに私達には何も関係のない話。気にするなとは言わないけど、いつまでも引き摺っていたらもう気にしていないって言ってる夢城姉妹にも失礼」
恭子先輩と志乃先輩の言う通りね。今は切り替えて練習試合に専念しましょう!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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