『アウト!』
7回表。洛山高校の投手が変わったみたいだけど……。
「先発の人よりも球速は遅いのに、打ててないね……」
「そりゃ黛は今の洛山高校のエースだからね。黛の実力が、洛山高校野球部の環境がただ球速が速いだけが投手のあり方じゃないと物語っているようなものさ」
それはなんとなくわかるかも。球速の速い投手は確かに評価は高いけど、その逆も、球種と配球次第では完全に相手を抑え込める事が出来るんだから……。
「まぁこの回は下位打線だし、前のイニングまでで速い球に身体が慣れてしまったから、一段階遅くなった球を打つのには苦労するだろうね」
「確かに、リズムが乱れてますね」
『アウト!』
「さて、これでチェンジだ。最終回は彼方に投げてもらって、私達がリードしたまま逃げ切ろう!」
よし……!遂に私の番だね!張り切って投げるぞ~!
「ユイには念の為に洋子と交代でサードに、必要はないと思うけど、亜紀も交代かな。明美、センターに入って」
「了解でっす!」
「や、やっぱり彼方先輩が出て来たわね……」
「これは、不味いです……」
「そ、そんなに凄い投手なの……?」
「凄いなんてものじゃないわよ!彼方先輩は……」
「お姉ちゃん待って。……和奈さん、非道さん、彼方先輩の実力は私達が説明するよりも、その目で見た方が早いと思います」
「よっぽど風薙ちゃんの投げる球が凄いんだね~。良いよ~。この最終回は私の打順からだから、リンゼちゃんの言葉の意味をこの目で確かめて来るよ~」
「よーし!投げるぞ~!」
彼方先輩……嬉しそう……。よっぽど投げたかったのね。
「よろしく~」
向こうの先頭は非道さん。清本さんとは別のベクトルで厄介な打者だけれど、彼方先輩はどう出るのかしら……?
ズバンッ!
『ボ、ボール!』
「ありゃ?コース外れちゃったかな?」
コースギリギリにストレート。ただでさえ手が出し辛いコースなのに、それに加えて彼方先輩のストレートだから尚更手が出ないわね。
(確かに速いね~。でもこれは私のよく知るストレートの速さだから、打てないって程じゃないかな~?)
サードから非道さんを見ると、まだ余裕そうに見える。あれ程のストレートを打つ手立てがあるっていうの!?
(2球目は反対のコースにストレートを……)
(うん!)
2球目は1球目と反対のコースにストレート。これに対して非道さんは……。
カキーン!!
掬い上げるように彼方先輩のストレートを打った。その打球はレフトスタンドへグングンと伸びていく……。
『ファール!』
(彼方先輩のストレートがあそこまで運ばれたのは真深を相手にした時以来……。しかもあんなにあっさりと……!?)
(う~む、少しタイミングがずれちゃったね~。でも風薙ちゃんの持ち球がストレートだけなら、このままスタンドへ運んじゃうよ~?)
(ストレートだけじゃ抑えられない。じゃあ次は……!)
3球目、彼方先輩が投げたのは……!
ズバンッ!
『ストライク!』
(ドロップか~。かなりのキレと変化量だね~。これを捕れる水鳥ちゃんは流石、川越リトルに在籍していただけあるね~)
(風薙が投げたドロップに対しても余裕のある見送り……。同じ球を続けて投げるのは危険……か。次はこれで)
(了解だよっ!)
カウントはワンボール、ツーストライク。彼方先輩は振り被って4球目を投げた。
(おっとっと~?)
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(よし!まずは三振1つ!……でも次に非道さんを相手にする時は気を付けた方が良いかなぁ?)
流石彼方先輩ね。あっさりと三振にしてしまったわ。
「う~ん……。なんとかしてでもカットするべきだったかな~?」
「仕方ありませんよ!彼方先輩のストレートに対応出来ただけでも凄いです!」
「まぁあの球速のストレートは大豪月さんもよく投げてたからね~」
「そ、そうなんですか!?」
「そうそう~。だからストレートは問題なかったって訳~。それで次は清本ちゃんな訳だけど、ちょっと耳貸して~?」
「は、はい……」
「…………」
「わ、わかりました。やってみます!」
「行ってらっしゃい~」
「非道さん、和奈に何を言ったんですか?」
「ん~?風薙ちゃんの球種はストレート、ドロップ、ナックルの他に多分もう1つあると思うから、それを探って来てって言ったんだよ~」
「もう1つ……?」
「おやおや~?風薙ちゃんと同じチームにいたから、わかるものだと思ってたけど~?」
「……多分それを知っているのは彼方先輩のルームメイトだった真深さんとユイさん、そして彼方先輩の球を捕っていた当時の捕手だけだと思います。彼方先輩は完成してから見せるって言ったきりで、私もお姉ちゃんも知らないんです」
「……成程ね~」
「お、お願いします!」
(清本さん……。ユイちゃんの球を3度に渡ってホームランにした、真深ちゃんに匹敵するスラッガー)
そんな打者と勝負出来るってだけでワクワクするよね!
(非道にはストレートを打たれてるし、清本にストレートを投げるのは危険。ここはドロップとナックルで攻める……)
志乃ちゃんは清本さん相手にストレートを投げるのは危険だと判断してるみたい。確かに盾ちゃんと同様、ストレートが得意な感じはするよね。
(じゃあまずはドロップを!)
どうかな……?
カキーン!!
う、打たれた!?
『ファール!』
あ、危ない危ない。まさかドロップがあんなにあっさりと打たれるなんて……。
(……次はナックルで)
(うん!)
2球目に投げるのはナックル。不規則な変化で空振りや凡打を誘う球なんだけど……。
(ナックル……変化の軌道は……!)
カキーン!!
嘘!?これも打たれた!?
『ファール!』
打球はレフトに切れてファール。これはナックルの軌道を完全に読まれてるね……。
(彼方先輩の変化球をまるでピンポン球みたいにあっさりと打つなんて……!)
(真深でもあんな簡単には打ててないわよ……!)
(よし、なんとか着いて行けてる……。この勢いでホームランが打てれば、また流れは洛山に傾く筈……!)
私の変化球が通用しない……。ユイちゃんの球をホームランにした事と言い、こんな凄い打者がいるんだね!
(どうするの……?)
(『あれ』を投げるよ!)
(……良いの?練習試合では投げない予定だったんじゃ?)
(『あれ』じゃないと清本さんは抑えられないと思うから……!)
それに1球だけだし、大丈夫だよ!大丈夫だよね……?
(行くよ……!)
かつて私が朱里ちゃんに教えたストレートに見せ掛けた変化球を改良に改良を重て編み出した……私だけのオリジナルを見せてあげる!
(これは……ストレート……?)
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(嘘……そんな……!?)
(また面妖な球がきたもんだね~。あれの対策はどうしたものか~)
よし、三振!あと1人……!
「和奈さん……」
「い、今のが彼方先輩が言ってた彼方先輩の最高の球……なのかしら?」
「多分……。でも不可思議な球だったね……」
「実際に空振りした和奈が1番そう思っているわよ。まさかあんな球があるなんて……!」
「ごめん。三振しちゃった……」
「ドンマイドンマイ~。でもただで三振した訳じゃないんでしょ~?」
「それは……。多分ですけど、最後に風薙さんが投げた球について、なんとなく違和感がありました」
「もうヒントに辿り着いたの!?」
「うん。なんとなく……だけどね?まだ確信には至ってないかな?」
「それでも充分凄過ぎると思います……」
「ううん、多分瑞希ちゃんや朱里ちゃんなら今の1打席で攻略方法が見付かってると思う」
「二宮ちゃんと早川ちゃんの洞察力は並々ならぬものだからね~。まぁ私達は私達でやっていこうか~」
『はいっ!!』
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
5番打者も三振に抑えて、ゲームセット。14対11でなんとか私達が逃げ切ったよ!
彼方「洛山高校との練習試合はこれにて閉幕!」
真深「打ち合いに勝てて良かったですね……」
ユイ「どの打者も勢い良く振ってくるから、結構ヒヤヒヤするのよね……」
彼方「さて!今回洛山高校に入学した2人……エルゼ・シルエスカちゃんとリンゼ・シルエスカちゃんですが、2人の登場を提案してくれた……たかとさんが書いている球詠の小説の『詠深の従姉妹はホームラン打者』にも出演が決まりました!」
ユイ「それって真深が主人公の小説ですよね?」
彼方「ユイちゃんも活躍してるよ!あと瑞希ちゃんもいます!」
真深「エルゼちゃんとリンゼちゃん……。向こうでも私達が知っている2人ではないにしろ、洛山高校みたいな打撃全振りの成長を果たしていなければ良いけれど……」
ユイ「あれは洛山が特別なだけだと思うわ」
彼方「2人が向こうでどのような活躍をするのか……それはたかとさんの小説に乞うご期待!」
真深「決して無理をせずに、頑張ってください」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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