十六夜さんにとっては早くも正念場。ノーアウト満塁で、4番の陽春星さんに回ってきた。
「二宮はこの状況で十六夜さんがどうなると思う?」
「……今のままの十六夜さんでは陽春星さんに満塁弾を打たれ、そこから連打が続き、下手をすれば1回表が終わらなくなるでしょう」
「そ、そんなに酷い展開になるん!?」
「あはは……。これは不味いかもねぇ……」
二宮のあっけらかんな言葉に朝日さんが顔を青くして、渡辺さんが苦笑いしている。
「ちなみに一色さんには村雨さんと一緒に肩を作りに行かせているわ。状況次第ではワンアウトも取れずに投手交代も有り得るわね」
更に監督から容赦ない一言。本来なら中継ぎ予定の一色さんがこんな早い段階で出るとは思わないだろうねぇ……。
ちなみに我が日本代表の投手ローテーションは十六夜さんと渡辺さんが先発、一色さんが中継ぎ、私が抑え、非常用としてサブポジションとして投手が出来る高橋さん、朝日さん、三森夜子さん、友沢となっている。非常用多いな……。
「早川さんも4回くらいには肩を作りに行ってもらうわ。具体的に言うと一色さんと入れ替わりね」
「了解しました」
……で、視点を十六夜さんと陽春星さんに戻してみると。
カキーン!!
「あっ!?」
「これは……向こうのパターンに入りましたね」
十六夜さんが失投でど真ん中に行ったのを見逃さず陽春星さんは完璧に捉え、その打球は球場の上空に消えていく、場外ホームランとなった。
「こ、これって物凄く不味いんじゃ……!?」
「まだ試合は始まったばかりですよ」
二宮の言う通りまだ試合が始まったばかりなんだけど、向こうの連打パターンに火が点いているのもまた確か。
「…………」
「あ~あ。これ以上ボコボコにされる前に投手を代えた方が良いんじゃない?」
「確かにね。このままだと1回表が永遠に終わらないかもよ?」
誰が言ったのだろうか?ベンチから十六夜さんを交代した方が良いんじゃないか……と。
「……仕方ないですね。タイムお願いします」
「二宮……?」
二宮がタイムを掛けて、十六夜さんのところへ歩いて行った。
「……ここは彼女達を信じましょうか。まだ私が出張るには早過ぎるわ」
監督は二宮を信じる事にしたみたい。先程十六夜さんの交代を勧めた人達も監督の意見なら間違いないと思っているようだし、監督の……母さんの信頼は厚い。
「日本代表はいきなり4失点ね……」
「あの投げてる子が緊張しやすい性格なのか、思ったところへボールが行ってないのが原因で打ち込まれているわ」
「まぁ流石にここで負けるような事はないとは思うけどね~」
「ん……?二宮さんがあの投手の子に駆け寄ったわよ?」
「二宮ちゃんがいるなら、もうあの投手は大丈夫だね~」
「……そういえば私達は二宮さんの捕球技術しか知らないのよね」
「何をアドバイスするのかしら……?」
「ん~?2人は二宮ちゃんの資質を知らないの~?それならこのタイムが明けた後にわかるかもね~」
「うぅ……!」
「瑠花ちゃん、大丈夫?」
「まだ1回だし、私達で逆転するから大丈夫!」
「そ、そうだね。取られたら、盛りかえせば良いんだから……!」
「まだまだクヨクヨするのは早いと思います!」
「そうッスよ!」
「すみません、少し良いですか?」
「二宮さん……?」
「十六夜さん、耳を貸してください」
「は、はいっ!」
「…………」
「…………」
「そ、それで本当にいけるんですか?」
「向こうの大振りを見れば必ずこれでなんとかなる筈です」
「確かに……。これなら台湾の打線を抑えられる。瑠花ちゃんの変化球があれば!」
「…………?」
(どうやら高橋さんは気付いたようですね。これなら高橋さんのリードで向こうの打線を封殺出来るでしょう)
「お帰り二宮」
「瑠花ちゃんに何を言ってきたの?」
「簡単な事ですよ。十六夜さんの投げる変化球をホームベース2つ分の幅を使って投げるように言ったまでです」
「変化球を……?」
「ホームベース2つ分の幅を……?」
……成程。そういう事か。確かにそれなら十六夜さん程のキレと変化量を持つカーブとシンカーを駆使して、ホームベース2つ分の幅を使えばあの大振り打線を抑えられる。
『ストライク!バッターアウト!!』
「おおっ!?本当に良いコースに変化球が決まりだした!」
「まぁこれはあの大振りな打線を相手にするから出来る芸当であり、アメリカ代表を相手にすれば痛打されるか、見られて終わりですけどね」
まぁ何はともあれ向こうの打線の勢いを止めた。反撃開始だね!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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