「あの投手……二宮さんが何か助言したと思ったら、急にピッチングにメリハリが出始めたわ」
「確かに……ボール球にも関わらず相手打線を上手く空振りさせているわね」
「流石、二宮ちゃんだね~。それならあの大振り打線を抑え込めるって訳か~」
「非道さんは二宮さんが何を言ったのかわかるんですか?」
「まぁね~。でも投手であるウィラードちゃんならあの投手がどんなピッチングをしているかわかるんじゃない~?」
「!?まさかホームベース2つ分の幅を使ってる……?」
「お~。せいか~い」
「ホームベース2つ分……成程ね。確かにこれなら上手く使えば相手打線を抑え込める……という事」
「上杉ちゃんも気付いたみたいだから説明はいらないかな~って思ってたけど、念の為に説明するね~。二宮ちゃんがあの投手に言ったのはホームベース2つ分の幅を使って変化球を投げる事なんだよね~。台湾打線は碌にコースを見極めもせずにブンブンと振り回しているから……」
「その戦法が効果的……という訳ですね?」
「その通り~。あれだと我が洛山の打線も一部を除いて抑え込まれそうだね~」
「一部?」
「ん~?少なくとも私や清本ちゃん、そしてアメリカ代表にも通用しないんじゃないかな~?それこそあの投手が何か新しい戦法を身に付けでもしない限りはね~」
『アウト!チェンジ!!』
陽春星さんにホームランを打たれ、二宮が助言する事に寄ってなんとか十六夜さんは立ち直った。
「に、二宮さん!ありがとうございました!二宮さんのアドバイスのお陰で台湾打線を抑える事が出来ました!」
「私は変化球投手のあり方の一部を言っただけに過ぎません。それを物にしたのは十六夜さん自身です」
「でもまさか本当にホームベース2つ分の幅を使って変化球を投げるなんて思わなかったわ……」
「変化球はストレートと違ってボール球でもバットを振らせる事が可能です。台湾打線は陽春星さんを除いて碌にコースを見極めもせずにバットを振り回していますので、そんな相手に律儀にベース上で勝負をする必要はありません。ホームベース2つ分の幅を使って問題ないです」
確かに多少のボール球に逃げる変化球なら思わず振ってしまうものがあるよね。今回の作戦はその心理を利用したものでもある。
「更に先程までの十六夜さんは狭いベース上の、更に狭くなるコースを投げていました……。これは結構難しい事ですので、それを意識し過ぎ、制球力を乱してしまいました。ですがもっと簡単に、ホームベース2つ分の幅を使って内角と外角を狙って投げていれば自然と程良くボール球となります」
「つまり細かいコントロールは必要とせず、気楽に投げれば、瑠花ちゃんのカーブとシンカーを駆使して相手を翻弄出来る……という訳ね?」
「正解です。高橋さん」
「いや~。瑠花ちゃんのあのピッチングを見ると私達も負けられないね~!」
渡辺さんが十六夜さんの復活したピッチングを見て奮起している。まぁこの試合に渡辺さんの出番はないけどね……。
「さて、今度はこちらの攻撃ね。十六夜さんはこれ以上連打を食らわないと思うし、7イニング掛けてじっくりと逆転をめざす事にしましょう」
『はいっ!』
監督の攻撃方針は焦らず、ゆっくり、じっくりと……。私も似たような事を思ってたし、こういうところも親子なのかね……?
カンッ!
とは言えやられっぱなしではいられないのもまた事実。金原は初球からストレートを捉えてヒット。
コンッ。
2番の朝海さんは自身も生きようとセーフティバントが決まり、ノーアウト一塁・二塁のチャンス。
カンッ!
3番の高橋さんはサード後方の内野安打を決めて、ノーアウト満塁。そして打順は日本代表のスラッガーへと回ってくる……。
「まさかノーアウト満塁という展開が向こうと被るとは思わなかったよ……」
「そうでしょうか?日本特有のスモールベースボールを前の3人は見せてくれました。監督はああ言っていましたが、3人共表の守備で十六夜さんの力になれなかった事を相当悔しく思っているみたいです」
「そしてそれは今打席に入った清本も同じ……か」
カキーン!!
清本がお返しの満塁ホームラン。これで試合は振り出しに……。
「こうなってくると打ち合いが予測されそうだね」
「そうでもないでしょう。データによりますと郭上鈴さんはスロースターターな投手のようですし、本番はここからになる可能性も充分あります」
ズバンッ!
『ストライク!』
「さ、さっきまでとはストレートの威力が全然違う!?」
これが郭上鈴さんの本領ってところかな?これで本当に試合は振り出しに戻ったって訳だ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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