カンッ!
『ファール!』
「初球から対応してきたね」
「過去のデータによりますとスミスさんはストレートのような速い球に対する打率は低めのようですが、流石に対応力が上がってきていますね」
人は成長するもの、時にはデータや予測を越えるもの……。デジタルでは計り知れないのだ。二宮はそれをリトル時代に学び、シニア時代になると予測範囲を広げ、仮に予想外の局面に直結した時になっても思考を廻らせ、冷静に対処するようになった。
(そして白糸台で更に成長し、今の二宮がいる……か)
カンッ!
4球目。スミスさんは低めのストレートを捉える。その打球はセカンド正面へ。
「よしきた!」
今日セカンドを守っているのは梅田シニアの雷さん。素早い動きで打球を処理する。
『アウト!』
足が速いとは言っても、上手く打球を処理すればセカンドフォースアウトも難しくない。今の守備はそれがわかる良いプレーだ。
『アウト!チェンジ!!』
一塁も間一髪アウト。初回は上手くこちらの守備力が機能してゲッツーを取れたけど、なんか嫌な予感がするんだよねぇ……。
「あのオーストラリア代表を相手にゲッツーを取るなんて……。中々出来る芸当じゃないわよ?」
「そうね。確かに今のセカンドはボール捌きが良かった……」
「……ですがあのままでは何れボロが出るでしょうね」
「えっ?」
「そうだね~。今のはたまたま上手く処理出来たに過ぎないからね~」
「非道さんまで……。どういう事なんです?」
「それはその内わかるよ~。まぁ願わくば日本代表にはそんな機会はきてほしくないだろうけどね~」
「よし!先制点取りに行こう!」
金原が意気揚々と左打席に立つ。
「うわっ!何あれ!?」
誰かが声をあげ、その視線を見てみると……。
「外野前進し過ぎでしょ……。内野後退の位置よりも前じゃない」
「あれがオーストラリアの野球名物。『二重内野守備』ですね」
「に、二重内野守備……?」
二宮の発言にピンと来ていない人がほとんど……。特に世界大会に初出場の人達は皆あの前進守備に驚いている。私も映像を見るまでは皆と同じ反応してただろうなぁ……。
「オーストラリアの野球選手は足の速さを活かした守備を見せる為に、外野手があのような前進守備をするんです」
「で、でもそれなら外野の頭を越せば長打のチャンスだよね?」
まぁ普通はそう思うし、実際に金原もそれを試みている。しかし……。
カキーン!!
「初球から行った!」
「フェンス直撃が狙えるんじゃない!?」
金原が打った打球はライトフェンスに直撃しそうな当たりだった。金原はオーストラリア代表の選手に負けないくらいに足が速いから、本来なら三塁打が狙える当たりで、外野があんな前進過ぎる守備位置をしてるので、ランニングホームランは行けそうな勢いだ。
(や~、普通ならランニングホームランいけそうなんだけどね~)
『アウト!』
あんなに前進していたライトがフェンスに追い付き、捕球した。
「う、嘘!?あそこからフェンスまで追い付けるの!?」
「これがオーストラリアの野球です」
「この野球をするようになった切欠が2年前のシニアリーグの世界大会で1人の選手がある偉業を成し遂げた事……。そこからオーストラリアの野球は外野手があのように前進守備をするようになったのよ」
「確かその人は今でもメジャーリーグで活躍していますね」
監督と二宮がそのような会話をしていると全員が開いた口が塞がらない状態だった。というかあの守備ってそんな最近に発展したんだ……。
「相変わらずあの守備範囲は出鱈目ね……。今の当たりは本来なら三塁打を狙えた筈よ」
「それがオーストラリアの守備力……ですからね。あの守備範囲を越えるのは容易ではないでしょう」
「打撃の要となっている清本ちゃんは歩かされる可能性があるからね~。この試合で本当に期待出来るのは後続の打者達になるっぽいよ~」
「日本代表は……オーストラリア代表の守備力を突破する手立てはあるのかしら……?」
「あ~あ。良い当たりを打てたと思ったんだけどな~」
「いずみちゃん、ドンマイ」
「しかしいずみさんの狙いそのものは悪くありません」
「外野の頭を抜ける当たりって事……?」
「いえ、鋭いライナー性の当たりを打つ事です。いくら出鱈目な守備範囲を持っていたとしても限度と限界があります。この試合はそこを突けば勝てる試合となるでしょう」
(その前にこちらの守備力が崩れなければ……ですが)
二宮の言う通り、あのような動きには必ず限界がくる。それを根気良く待てば良いんだけど、嫌な予感が拭えないなぁ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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