最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

1384 / 1797
自分のミスは自分で取り返せ

「し、しまった!?」

 

「…………!」

 

雷さんのトンネルを見た瞬間、これはチャンスだと言わんばかりに王さんは一塁を蹴った。

 

「あ~あ。遂にやっちゃいましたねぇ……」

 

私の隣に座ったのは雷さんのトンネルにぼやいている肩を作り終わった一色さんだった。

 

「まぁいつかやるとは思ってたけどね。どうせならうちとの対戦でやってくれたら良かったのに……」

 

一色さんと同じシニアの綾瀬さんが一色さんに同調していた。確かに雷さんは勢いのある動きから度々弾いたり、逸らしたりしているのはわかっていたけど、大切な試合ではやってほしくなかった……という意味では私も綾瀬さんと同意見なのかもね。

 

「ライトーっ!!」

 

外野は抜けないように深めに守っていた。万が一外野の後ろまで打球が飛んでしまうと、足の速いオーストラリア代表の選手なら下手すればランニングホームランになってしまう恐れがあるからだ。

 

尤も今回はその影響で結果的に王さんは長打を打った事になってるけど……。

 

「くっ……!」

 

ライトの剣さんがようやく打球に追い付き、ボールを拾う。その頃には王さんは既に三塁に辿り着こうとしていた。

 

≪急げ急げーっ!≫

 

剣さんが矢のようなレーザービームを放ち、一直線にキャッチャーミットに収まる。

 

 

ズザザッ!!

 

 

王さんのスライディングした足と高橋さんのミットが重なる。判定がかなり際どいけど……?

 

『……セーフ!セーフ!』

 

判定はセーフ。セカンドのトンネルから王さんのランニングホームランとなってしまった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「思っていたよりも早い段階であのセカンドは打球を逸らしましたね」

 

「しかしそれを差し引いてもランニングホームランにしてしまうなんて……。あの1番打者は侮れないわ」

 

「今年のオーストラリア代表の警戒する打者の1人になるのは間違いありません」

 

「先制点を取られて、オーストラリア代表は守備が堅い……。これは日本代表はピンチかもね~。下手したらここで敗退しちゃうよ~?」

 

「……何故かしら?非道さんの口調から心配の言葉に聞こえないのだけれど」

 

「ん~?そんな事はないよ~。トンネルなんて洛山だと日常茶飯事だからね~。それを見てるから、日本代表のトンネルくらいじゃ慌てる事はないのだよ~」

 

「非道さんは日本代表を信用してるんですね」

 

「まぁ日本人だからね~。日本代表の勝利を願いたいものだよ~」

 

(非道さんからはどこか余裕を感じますね。それは日本代表の勝利を願っているのではなく、日本代表の勝利を確信しているからでしょうね。何食わぬ顔で日本代表の勝利を信用しているのは少し……いえ、かなり異常です)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アウト!チェンジ!!』

 

王さんにランニングホームランを打たれたものの、後続をしっかりと切ってチェンジ。失点は1点で済んだ。

 

「……ごめん」

 

「良いよ良いよ。取られたら取り返せば良いんだから!」

 

渡辺さんはトンネルした雷さんを宥めている。本来なら渡辺さんもショックだろうけど、それをグッと堪えている。寛容な人だ。

 

(しかしこの1点は大きいものになる。誰かがオーストラリアの守備範囲を潜り抜ける打球を打たなきゃいけないんだけど……)

 

まず清本は余り期待出来ないだろう。1打席目で背中側に敬遠球を投げられているから、対応が難しい。

 

 

カンッ!

 

 

1番、2番と打ち取られた後に3番の高橋さんがヒットを打つ。ようやくこの試合で日本代表の初ヒットだね……。

 

『ボール!フォアボール!!』

 

4番の清本は再び背中側に外され、そのまま四球。これでツーアウト一塁・二塁のチャンス。

 

5番の剣さんだけど……。

 

 

カンッ!

 

 

『ファール!』

 

「剣さんは粘り強い選手だから、打ち取るのも苦労するんですよね~」

 

「そうそう。あの粘り強い打撃術は私も見習わなきゃね!」

 

一色さんと綾瀬さんはそのように剣さんを評価する。確かに2人の言うように剣さんは梅田シニア内でもかなり優秀な選手だ。彼女を打ち取るのは簡単じゃなかったし、今でも苦戦する事もあるとシニアの後輩から聞いている。

 

『ボール!フォアボール!!』

 

数球粘り続けた末に、剣さんは四球を選ぶ。これでツーアウト満塁だ。そして次の打者は……。

 

「雷!」

 

「剣……」

 

雷さん。同じチームメイトだった剣さんが慰めている様子だけど……?

 

「今更トンネルなんて気にするな。シニア時代に何度おまえの雑な守備でやらかしたと思ってる?」

 

「うっ……!」

 

あれ多分慰めてないよね?傷口を抉りに行ってるよね?

 

「それよりも自分が仕出かしたミスは自分で取り返せ!守備のミスは打撃で取り返せ!!」

 

「……そうだね。ありがとう剣!」

 

あれ?なんか雷さんが立ち直った……?もしかしてあれが剣さんなりの激励だったのかな……?

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

(そうだ……。今更ウジウジしても仕方ない。トンネルした事についてはチームメイト全員に頭を下げたし、早川監督は切り替えろとも言ってくれた)

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!』

 

「追い込まれた……」

 

カウントはツーナッシング。しかし今の雷さんからは追い込まれたとは思えない闘気のような何かを感じるよ。

 

ここで捕捉。二宮が言うには一流の打者が放つ闘気や威圧感からは相手投手を怖じけさせ、制球力を乱す効果があるらしい。

 

そこからすっぽ抜け等失投に繋がりやすい事だってそれなりにある(確率で言えば5割を越えると二宮は言っていた)。

 

≪しまった……!?≫

 

(すっぽ抜け!?ど真ん中に来てる!)

 

故に今起きたように相手投手の球がど真ん中に抜けていった。これも雷さんから感じられる闘気のお陰なのかな?

 

(そっちだって私のミスでランニングホームランを打ったんだ……。私だって相手投手のミスでホームランを打っても構わないよねぇ!?)

 

 

カキーン!!

 

 

雷さんは抜けた球を見逃さず、そのまま振り抜いた。その打球はバックスクリーンに直撃。つまり逆転満塁ホームランだ。

 

(雷さんが打ったのはまさに電撃のようなホームラン……だね)

 

なんて、ちょっと洒落た事を言ったけど、つまらなかったかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「自分が守備でやらかした分のミスを自分のバットで取り返す……。嫌いじゃないわ」

 

「それを差し引いても彼女のあのトンネルはなんとかしないとこれからも狙われ続けるでしょうね」

 

「流石にアメリカ代表が相手だったらスタメンを変えるんじゃないかな~?」

 

「しかし今の4点は大きい……。これは日本代表の勝利で決まったかしらね?」

 

「まだまだ油断は出来ませんが、投手としては4点リードは大分楽になるでしょう」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アウト!チェンジ!!』

 

7番は打ち取られたけど、この回は一気に4点も取れたし、投手としてはかなりありがたい。

 

(そろそろ私も肩を作っておくかな……)

 

4回が終わると同時に私は肩を作りにブルペンへと向かった。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

  • 見たい
  • 見たくない
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。