雷轟と武田さんが連れて来た人はどこかぼんやりしている人だった。下手したら二宮よりも無表情なんじゃないだろうか……。
「そ、その子は新入部員なの?」
「わかんない。でも興味ありそうだったから、私達に練習を観に来てもらったの!」
「そ、そうなんだ……」
「…………」
しかし本当にぼんやりした雰囲気だな……。でも誰かに似てるような?
「野球部に興味あるの?経験は?ポジションは!?」
「ちょ、ちょっと芳乃。その辺にしておきなさいよ……」
芳乃さんが詰め寄るように聞いてきて、息吹さんがそれを止める。当の本人はそんな光景に対してもぼんやりとしている。
「……野球、見てるの好き。ルールは知ってる」
ルールは知ってる……って事は野球経験のない初心者なのかな?そんな雰囲気は感じないけど……。
「じゃ、じゃあとりあえず自己紹介を……」
「2年生、猪狩泊。野球経験は壁当てしてたくらい……」
2年生なんだ……。転校してきたのかな?
「2年生って事は転校生?」
「そう。親の都合でここに来た……」
そういえば中村さんや春星なんかも親の都合で新越谷に来たんだっけ?親の都合ってなんとも便利な言葉だね。
「…………!」
芳乃さんが猪狩さんの下半身……というか足を見てる。壁当てしてるって事は投手志望なんだと思うけど、どうなんだろう?
(猪狩の名字と、猪狩さんの顔から察するに、彼女はプロで今も活躍している大ベテランの猪狩プロの血縁だろう)
というかあの人母さんよりも10近く年上なんだよ?四捨五入したら50歳にはなるんだよ?そんな人が未だにタイトルを1つ2つ取っていくのは凄過ぎる……。
「と、とりあえず猪狩さんは入部希望で良いのかな?」
芳乃さんが尋ねると、猪狩さんは無言で頷いた。寡黙で口数が少ないな……。
「でも……これで芳乃ちゃんを抜いて18人になったね」
「そうだね。紅白戦が出来るのは大きいかも」
「じゃあ早速やろう!」
『えっ!?』
芳乃さんのいきなりな発言に対して、私を含める全員が驚いていた。
「1年生達の実力も試合形式の方が見やすいしね!」
まぁ一理ある……かな?18人揃えば紅白戦したいとは思っていたけど、まさか今日いきなりとはね。
「1年生と猪狩さんはどうかな?」
「私は賛成です!実践経験も早い内に積んでおきたいですし!」
「そうですね。私も実践経験を早く積むに越した事はないので、賛成です」
「私も賛成。試合したい」
「皆に任せる……」
どうやら1年生3人は賛成で、猪狩さんは皆の判断に任せるみたい。
「じゃあ決定だね!皆も準備しよう!」
「えっ?本当に試合するの……?」
息吹さんは困惑してるけど、なんだかんだ皆もやる気はあるみたい。特に雷轟と武田さんはやる気満々だし……。
(まぁ私も新フォームを試す良い機会かもね)
私が投げるかどうかはまた別の話だけど……。
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