チーム虎は渡辺が、チーム山は川原先輩がバトンを受け取り、それぞれ2イニングを投げ抜いた。
渡辺も、川原先輩も、ランナーを背負いつつも無失点で凌ぐ。うちの投手陣はこんなにも頼もしいんだね……。
(まぁ互いに無失点で凌いでるって事は私達が負けている訳なんだけど……)
しかも既に7回裏のツーアウト。そんな状況で迎える最後の打者は……。
「…………」
我等がチーム山の4番打者、陽春星だ。
「……もう1度勝負したい」
『えっ……?』
春星の言葉に全員がきょとんとした。唐突だもんね。仕方ないね。
「……もしかして猪狩さんと?」
私が春星に尋ねると、春星はコクンと頷いた。可愛い動きしやがって……!
「……私は構わない。星歌が良いと言うなら」
「えっ?星歌!?」
猪狩さんは渡辺が代わっても良いって言うなら春星との勝負をするみたいだ。そして呼ばれた渡辺は物凄く戸惑ってる……。
「せ、星歌は別に構わないよ。春星さんとの勝負はこれからの紅白戦でも出来るから……。猪狩さんは春星さんと勝負……したい?」
「……春星との勝負は1勝1敗。ケリを着けるという意味でも、私は春星と勝負したい」
「そっか……。じゃあ星歌はライトに戻るね。応援してるから!」
「ありがとう……」
渡辺の許可を得て、再び猪狩さんがマウンドに。
「この時を待ってた……!」
「この紅白戦……どの打者との対戦も楽しかったけど、春星との勝負は特に楽しかった。もう1度勝負出来るのはとても光栄……」
心なしか春星も、猪狩さんも楽しそうにしている。猪狩さんに至ってはこの紅白戦が初マウンドだよね?もしかして猪狩さんってジャンキー側の住人?
「紅白戦には延長戦がないから、実質これが最後の春星ちゃんの打席だね!」
「春星さんが猪狩さんを打つか、猪狩さんが春星さんを抑えるか……。とても興味深いですね」
芳乃さんと藤井先生もこの2人の勝負を楽しみにしている。
(これは……私のリードが責任重大ね。猪狩先輩の決め球を上手く活かせる采配をしなければ……!)
(初球から全力で行く……!)
猪狩さんは初球から決め球のライジングキャノン。その球威はこれまでの中で1番だろう。この局面でまだ威力が増すのか……。
ズバンッ!
『ストライク!』
「…………!」
「…………」
春星が空振り!?差し込まれる事はあっても、空振りはなかった筈……。しかもこの手の球は春星にとっては得意球なのに、空振りだなんて、猪狩さんはこの試合だけでどこまで成長するんだよ!?
カキーン!!
『ファール!』
2球目のライジングキャノンを春星はドンピシャのタイミングで捉える。今のでも僅かにボールの下を叩いてたか……。
(楽しい……!)
(楽しい……!)
((いつまでも、この勝負を続けたい……!))
本当に2人共楽しそうだね。周りもこの空気に触発されて、ウズウズしてるし。かくいう私もね……。
(……今出せる全力を、ここにぶつける)
(ライジングキャノンですね。悔いのないピッチングをお願いします)
(ん……)
3球目……。恐らくこの1球で2人の勝負が、紅白戦の結果が決まる……!
(私の全力の1球を……食らえ……!)
(絶対に……打つ……!)
カキーン!!
「打った!?」
「だ、打球は!?」
「…………」
「…………」
(最高の……1球だった)
打球は春星の2打席目と同様に、センターネットに直撃。ホームランとなった。
ベースを回っている春星も、春星に打たれた猪狩さんも無言だった。恐らくこの1打席の余韻を感じているのだろう。本当に素晴らしい勝負だったよ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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