「全員落ちずにクリアするとは中々やるではないか。今日は初日だから終わりにするが、明日以降は倍以上のキツさが待っているから、それ相応の覚悟をしておけ!」
『はいっ!』
なんか体育会系になってきた気がする……。
「明日からは洛山野球部の代表と個人的に来ている奴等も合流する……。力を合わせて、私の練習メニューから生き残る事だな」
「この後は食事と入浴、それ以降は就寝、朝は4時起床だから、疲れた人達はゆっくり休んでた方が良いよ~」
4時起床か……。私は朝がそんなに強くないから、眠気に負けそうだよ。
「それと……練習前に呼んだ連中は食事の後でそれぞれの場所で待っておけ」
メニューUの私とウィラードさん、メニューSの雷轟とバンガードさん、上杉さんはこの海で待っているように言われ、メニューAの武田さん、川原先輩、鋼さん、夢城さんの4人は林の方で待機しておけとの事だ。
ちなみに山崎さんと二宮もそっちに着いて行くみたい。チームのエースの監視も兼ねてるのかな?
「わぁ……!」
「す、凄い豪華な食事……」
誰かが洩らした言葉に同意する。カルパッチョ、ローストビーフ、ピザと……これは稲荷寿司?なんかバターが掛かってるっぽいけど……。
「これ等の料理はこの島に来ているシェフが作ってくれている。彼女に感謝するように!」
「……ってこれを1人で作ってるの!?」
「去年の秋頃から自主的にこの島に来る条件として、食事を作ってもらっているからな。私もこれ程の料理がお目にかかれるとは思わなかったが……」
社長の後ろにいる人がこの数々の料理を作ったシェフが……ってあのシェフなんか見覚えがあるんですけど!?
「…………」
「あ、あれって美園学院の三森さんじゃ……?」
山崎さんが言ったように、シェフの招待は三森3姉妹の1人……夜子さんだった。えっ?これを1人で作ったの!?
「今回もよく出来た料理だったな」
「これくらいは朝飯前。それに今回のは最近の中では自信作の創作料理……」
しかも頻繁にこのレベルの料理を作ってるみたい。朝海さんと夕香さんって滅茶苦茶良いものを食べてるな……。正直羨ましい!
「……ちなみに他の姉妹も来てるの?」
「姉さん達は明日になると洛山の人達と合流する予定……。私はシェフとして社長に呼ばれて、一足早くこの島に来た」
私の質問に対して夜子さんはそう答えた。今の発言から三森3姉妹が秋頃から洛山の地獄の合宿に参加してるみたい。園川さん達はこれに対してどう思っているのかも気になるところだけど、私が気にしても仕方ないか……。
食事が終わり、私達5人は海のまえまで来ている。食事は滅茶苦茶美味しかったです。もうコックになれよ夜子さん……。
「待たせたな」
社長が何やら担いでいる。なにあの馬鹿みたいに大きいの……。竹?
「し、社長……?その担いでいるのはなんですか?」
「メニューSの連中用に竹林から切り出した竹だ。3つある」
3つ……?ああ、雷轟、上杉さん、バンガードさん用に持って来たの?
「その大きい竹で何をすれば良いんデスカ?」
「素振りだ」
「えっ?」
「素振りだ。この竹に付いている葉が全て落ちるまでな。ただし休憩はありだから、気にせず体力のある時に振り続けろ」
「これを……振り続ける?」
「こんなの……普通の人間じゃ出来っこないわよ」
ウィラードさんの言う通り、普通の人間がやる事じゃないし、出来る訳がない。しかし……。
「無理だと思っているな……?だが洛山高校の清本和奈は既に3本分の竹の葉を全て落としているぞ」
や、やっぱり清本もこの練習をこなしていたのか……。やるねチビッ子スラッガー。
「更に清本和奈には私から竹を送って自主トレをしてるぞ」
どうやって送ってるんだろう……。
「和奈ちゃんには負けられないね!」
「ナンバー1スラッガーになる私には必須科目デスネ!振ってやるデス!」
「清本さんの素早いスイング……その秘密がこの竹を振る事にあるとしたら、私もそれに近付けるかしら?」
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
3人は早速竹を振り始めた。うわっ!凄い勢い!
「これが特別メニューS……覇竹の素振りだ!」
覇竹の素振り……清本がやった高速スイングの元がこんな厳つい練習だったとは……。
「そしてメニューUの貴様達にはこの小石を……」
バシャッ!バシャッ!バシャッ!
「このように投げてもらう」
「これって……水切りですか?子供の頃とかによくやった……」
「その通り。遊び程度なら2、3回で良いが、貴様達には20回以上はやってもらう!」
「「に、20回以上!?」」
「そうだ。早川朱里に、ウィラード・ユイ。貴様達2人はアンダースローの投手としての決め球……燕の完成形を極める為にやるんだ」
「……というか早川さん、貴女もアンダースローだったのね。世界大会ではオーバースローだったから、わからなかったわ」
「まぁリトル時代はアンダースローだったしね」
こんな形でウィラードさん達に私がアンダースロー投手だって知られるとは思わなかったけど……。
「22年前に世界一のアンダースロー投手である早川茜もこの練習をこなして燕を完全な代物に仕上げたんだ」
「「そ、そうなんですか!?」」
ん?あれ?なんでウィラードさんも反応したの?
「ウィラードさんって早川茜さんの事を知ってたんだね……?」
「だって私はあの人のアンダースローに惹かれて今の私がいるんだもの。そう言う早川さんだって……」
「や、だって私の母さんだし……」
「そ、そうなの!?確かに同じ早川だけど、そんなに珍しい名字じゃないし……」
なんだこれ?ウィラードさんとは仲良くなれそう。もしも私とウィラードさんが同じ学校の野球部だったら、互いに切磋琢磨してたのかな?
「と、とりあえずやってみようか……」
バシャッ!バシャッ!
水切りなんて久し振りにやったけど、余り跳ねなかったな……。
(ん?これを20回以上ってもしかして滅茶苦茶キツい?)
バシャッ!バシャッ!バシャッ!バシャッ!
(ウィラードさんの方は一発で4回跳ねてる!?これは私も負けてられないな……!)
私とウィラードさんが水切りをしている横で、雷轟、上杉さん、バンガードさんで馬鹿みたいに大きい竹を振ってる。これを昔の人々はやってたんだなぁ……。
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