6月某日。夏大会まであと1ヶ月を切ったある日の事……。
「さて……。夏大会まであと一月を切りました。ですので最後の追い上げとして、練習試合を組んできました」
ちなみに練習試合そのものはほぼ毎週やっているけど、藤井先生のこの発言は……まぁ所謂様式美ってやつだね。
「対戦相手は高知県にある天下無双学園です」
「て、天下無双学園……?」
「なんか強そうな名前……」
「響きが格好良いです!」
「でも聞いた事のない高校だぞ?しかも高知って……」
天下無双学園か……。あそこってちょっと変わった入学条件があって、それさえクリアすれば、どんな問題児だろうと簡単に入学する事が出来ちゃうって曰く付きの高校なんだよね。
「向こうの話によりますと、新しく誕生したエースを試したい……との事みたいですね。うちを対戦相手に指名したのも向こうのエースのようです」
天下無双学園、新星エース、そしてうちとの練習試合……。この3つのワードが私の中でパズルのピースが埋まっていく感じがした。何故だろうか……?
「あ、朱里先輩……」
「初野?どうしたの?」
「て、天下無双学園って確か『あの子』が推薦入学したところですよ!」
「……そういえばそうだったわね。それなら朱里先輩や私達がいる新越谷と練習試合をしたがるのも納得がいくわ」
初野が言うあの子……?あっ、思い出した!脳裏に彼女の口癖が思い浮かんで来ちゃったよ……。
「……どうやら早川さん、木虎さん、初野さんの3人は何か心当たりがあるみたいですね」
「は、はい。天下無双学園への入学条件とか、元チームメイトの事とかを思い出しました……」
『入学条件?』
天下無双学園の入学条件というワードにこの場にいるほとんどの人が首を傾げた。
「……天下無双学園の入学条件は特定の名字を持った人間。これさえ当てはまれば、どんな人でも簡単に入学する事が出来ます」
「その特定の名字って何?」
「幕末以降に活躍したの武士の名字とか、時代劇に関する名字だったり……」
「ば、幕末……」
「その中には新選組の名字があったりするね」
「し、新選組……」
幕末の武士、時代劇という言葉に主将が、新選組という言葉に山崎さんが反応した。あれ?もしかして2人共、そういうのに興味があったりする?確かに2人の名字も幕末以降に活躍した剣豪や新選組の偉人の名字だったりするもんね。
「な、なぁ朱里……」
「も、もしかしてそういう名字の選手も実在してるのかな……?」
妙にソワソワしてるなこの2人……。そんなに気になる?
「……今はわかりませんが、数年前の天下無双学園で4番を打っていた人が『岡田』、2番を打っていた人が『山崎』という名字でしたよ」
「そ、そっか……」
「そうなのか……」
山崎さんも主将も気のせいか顔が赤かったりするし、同じ名字の選手が過去に活躍しているのを聞くと嬉しくなったりするものなのかな?2人共よくある名字だけど……。
(ちなみに天下無双学園のOGには『武田』という名字の選手も入っているんだよね……)
まぁ武田さんの方は特に反応しなかったので、スルーしておく。
「……話を戻しましょうか。天下無双学園には早川さん達の昔馴染みもいらっしゃるみたいですが?」
「はい。沖田総司……。朱里先輩達の代が引退した後にエース投手として君臨していました」
沖田の実力は中学生にして超高校級の実力を持っていた。それが高校生になってから更に伸びたとなると……。
「で、でもそんなに凄い投手なら、なんでシニアリーグの世界大会に出ていなかったのかしら?」
「沖田さんにとっては意味のないものだと言っていました。それにその頃には彼女は既に高知で自分の実力を高めていましたし……」
木虎が言うような理由もあるだろうけど、沖田の性格を考えると別の理由も思い付きそうなんだよね……。
「何れにせよ、天下無双学園は古豪のチームです。気を引き締めて試合に臨みましょう」
『はいっ!!』
シニアの後輩がいる高校と試合……。何事もなければ良いけどね。
ズバンッ!
「今日はここまでにしておきますね」
「了解。……しかし私達みたいな1年生が練習試合とは言え、いきなりスタメンを任せられるとは思わなかったよ」
「それもこれも沖田さんのお陰ですね!まさに沖田さん大勝利ですよ~♪」
「まぁそれについちゃ感謝してるよ。沖田の球が捕れるってだけで私も正捕手になったし」
「次の練習試合もよろしく頼みますよ?」
「確か沖田の先輩と同級生がいるんだったっけ?」
「まぁそんなとこです。張り切って投げますよ~!」
「精々空回りしないようにね」
「その沖田さんの空回りを受け止めるのが捕手の仕事ですよ!」
「……程々に頑張るよ」
「じゃあ試合当日はよろしくお願いしますね。土方さん♪」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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