「ご、ごめんね藍ちゃん。星歌が打たれちゃって……」
「……いえ、星歌先輩の狙いそのものは間違っていませんでした。沖田さんがそれを読んだんだと思います」
(そう……。沖田さんは星歌先輩の決め球を打とうと考えていた筈。その裏を突いて他の球種で攻めようとしたのに、それを、星歌先輩の数ある球種の中の1つを狙い打ちした……。シニア時代ではあれ程の打撃技術はなかったのに……!)
ライトからだとよくわからないけど、木虎が悔しそうにしているのはなんとなくわかる。丸くなったけど、プライド高いからね。
(次は4番の土方さんか……)
沖田と同じ1年生ながら、川越シニア内でも二宮と木虎しか捕れなかった沖田の変化球を難なく捕球し、天下無双学園の4番に抜擢される程の実力の持ち主。沖田よりも手強い打者なのは間違いないだろうね。
「よろしくお願いします」
(バットに……何かを巻き付けている?)
「随分と変わったバットを使うのね」
「ああ、これですか?さる方からもらった特注品なんですよ。そちらの4番さんが持っているバットと同じように……」
(遥先輩の持っている木製バットと同じ……?)
「……とは言っても、普通の金属バットに鉛を巻き付けただけなんですけどね」
「な、鉛を……!?」
(信じられない……。そんな何キロあるかもわからない得体の知れない物を平然と扱っているなんて……!)
「……ではそろそろ始めましょうか。沖田が反撃の切欠を掴んでくれましたし、出来れば私もそれに続きたいですし」
木虎が土方さんと何か話しているみたいだけど、どうしたんだろうか?
(星歌先輩、勝負をするなら一切の油断を見せてはいけません)
(……もちろんだよ、元より星歌が油断出来る程の実力がないんだから)
ズバンッ!
『ストライク!』
(少なくとも勝負を避けられている……という訳ではなさそうだ。それならタイミングを合わせて打っていけば良いかな)
初球はストライクを取ってからの2球目……。
(高めの変化球……。ボール球になるし、これなら簡単に手出しは出来ない筈)
(……とか藍ちゃんは思ってそうだけど、そんな簡単に土方さんが抑えられるなら、この沖田さんがもう抑えてるんですよ)
(高めに曲がってくる高速シンカーか。それなら……!)
「はっ!!」
カキーン!!
(だ、大根斬り!?)
土方さんが打った打球はピッチャー前でバウンドし、大きく跳ね上がった。
(な、なんて打球なの!?これだとボールが落ちる前に内野安打になってしまう!)
「ええっ!?内野安打になっちゃうよ!」
「内野安打……と言うには少し早いかな」
えっ?ピッチャー前でワンバウンドしたんだよね?打球はいつ落ちてくるの!?
「が、外野は急いでバックをお願いします!!」
木虎が大声で外野陣にバックを促す。私達も慌てて、ネットいっぱいまで下がるけど……。
「……少し力を入れ過ぎたかな。これじゃあ場外まで飛んでしまう」
(土方さんのあの打ち方は本来ランニングホームランを狙う為のものらしいけど、他校のグラウンドだったり、狭めの球場だったりするとあの打ち方は悪手になるんですよね。まぁ球のコース的には仕方ない部分もあるけど……)
打球はそのままネット外へ。
「え、エンタイトルツーベース……」
華奢な見た目から放たれる雷轟クラスのパワー、更に後から木虎に聞いた話だと土方さんは鉛を巻き付けたバットを使用していたみたいだ。
(去年の全国大会でも凄い打者は沢山いたけど、私達が見たのはその中のほんの一部に過ぎなかった……という訳か)
世の中の広さを実感したよ。私達の知らない打者がまだまだ潜んでいるって考えると、軽く恐怖だよ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない