7回裏。好投してくれた渡辺もここで降板となり、リリーフを務めるのは……。
「後はお願いね……」
「任せてよ」
私が投げる事になった。なんでもフォーム変更をしたばかりの時期はなるべく実戦で慣れさせておいた方が良いと、芳乃さんが言っていたからだ。ちなみに渡辺はそのままライトに入った。
「良いな~。朱里ちゃん」
「ヨミちゃん。ただでさえ朱里ちゃんはヨミちゃん達に気を遣って普段も余り投げないのにわがまま言ったら駄目だよ。それに朱里ちゃんのフォーム調整も兼ねてるんだから……」
武田さんが羨ましそうにしているところを山崎さんが制止させる。ごめんね?こんな時期にフォームの変更なんかしちゃって。
「……でも確かに朱里ちゃんは私達に遠慮し過ぎなところもあるよね。もっと朱里ちゃんが凄いんだってところを見せてあげたいよ」
「だから芳乃ちゃんも今年は朱里ちゃんの投入を多くするかもって言ってるし……」
あの、それって私が聞いても良い話なんですか?
「おっ?朱里先輩が登板ですか?」
「まぁ一応ね」
「やった!沖田さんも楽しみにしてたんですよ。朱里先輩と勝負をするのを……!」
「勝敗がどうなるかはわからないけど、良い勝負にしよう」
「もちろんですよ!沖田さんも、土方さんも、朱里先輩の投げるのは球を楽しみにしてます!」
笑顔で沖田はそう言った。土方さんに私の事をなんて言っているか気になるな……。
「朱里先輩と実戦でバッテリーを組むのは久し振りですね」
「そうだね。シニアの紅白戦以来だよ」
その紅白戦ですら木虎よりも二宮と組む事の方が多かったくらいだしね……。
「捕球の方は大丈夫そう?」
「はい。珠姫先輩には負けられません」
相変わらず木虎は年齢関係なしに対抗心バチバチだよね。シニア時代でも二宮を相手に対抗心を燃やしていたし……。
「じゃあこの試合で投げる球は……」
私は木虎に配球の相談をする。この局面で投げられる球は限られてくるからね。
「……で、お願い」
「わかりました」
相談も終わり、いよいよ実戦だ。フォームを変えて試合で初めて(地獄の合宿と紅白戦を除いて)投げる……。気持ちが昂ってきたよね!
(朱里先輩と勝負が出来るなんて光栄ですね……。あの摩訶不思議な球に対して沖田さんなりに色々考えてきたんですからね。絶対に打たせてもらいますよ!)
(……とか沖田は思ってそうだね。まぁ沖田も私の対策を入念にしていた方だし、当然偽ストレートも狙ってくるよね)
まぁその幻想はぶち壊させてもらうけど……ね!
(えっ?アンダースロー!?)
ズバンッ!
『ストライク!』
(よし!良い感じ!)
木虎の捕球も問題なさそうでなにより。これならなんとかなりそうだね。
(これは……今までの朱里先輩とは違う。別次元ですよ)
ズバンッ!
『ストライク!』
(リリースポイントの低いアンダースロー、下から上に浮き上がるストレート……。ノビもキレもシニア時代とは比べ物にならないですよ。世界大会のデータを参考にしてきたのに、これじゃあ……)
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(結局……当てる事すら出来なかった……)
まずは1人。そして沖田の次が……。
「そう気を落とさないの。早川さんのあの球を見られただけでもありがたいと思わないと」
「土方さん……。打てそう……ですか?」
「……直に見ないと何とも言えないね。ベンチからの視点に限れば、そこまで難しい球じゃないと思ってる」
……成程。土方さんからすれば私の燕を打つのは容易いと?
(それなら見せようじゃん。燕の発展型を……!)
私が地獄の合宿で得たものを!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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