「す、すみません!歩かせるような采配をしてしまって……」
「……気にしなくても良いわ。空振りを誘う低めの変化球は振らなければボールになるもの。先程の打席では相手がバットを振らなかっただけよ」
「ですが……」
「それよりも相手打者に集中よ。バッターボックスで待機している4番と、その次の5番……。あの2人は先程ヒットを打った1番と同じ雰囲気を感じるわ」
「あの1番打者と……?それなら歩かせた方が良いんでしょうか?」
「大会ならそうした方が良いでしょうね。でもこれは練習試合……。あの雰囲気で飛躍的に能力が上昇した選手の全貌を見るべきだわ」
「さ、流石由紀先輩です。動揺の色が見えない……」
「別に私は関係ないわ。きっと……天王寺先輩ならそんな指示を出すと思ったからよ」
「…………」
「さぁ、戻りなさい。4番、5番と勝負するわよ」
「は、はい!」
「敬遠の気配はなし……。どうやら勝負をするみたいね」
「ここからでも感じる気迫……。これが天王寺先輩の言ってた3年生ブーストというものかしら?」
「あの気配は素人目でも危険だとわかるわね。由紀程度では玉砕するわ」
「あ、亜紀ちゃんって結構厳しい事を言うよね。お姉ちゃんなのに……」
「私は客観的にものを言っただけです。そこに姉とか妹は関係ありません」
無表情で、淡々と、バッサリと、辛辣に亜紀ちゃんは由紀ちゃんに対してそう評価した。余程メンタルが強くないとその言葉に心が折れちゃうよ……。
ズバンッ!
『ストライク!』
「ワンストライク……。コースギリギリだからか、見逃してくれたな」
「あの圧を放つ打者を相手に甘いコースは愚行……。加えてあの4番は草野や上杉クラスのパワーがあるから、ピンポン球みたいに場外まで飛ばされるのが目に見えてる」
「松浦が何を狙って打つのか、バッテリーはどの球種を用いて抑えに行くのか……。それによってこの打席の、そして試合の命運が決まるね」
恭子ちゃん、志乃ちゃん、天王寺さんがそれぞれ考察を述べる。私はそんなに試合を分析出来ないから、3人みたいに物事を考えられない。でも私だってベンチから皆を助けられる存在になりたいよ!
ズバンッ!
『ボール!』
「バッテリー側も慎重にならざるを得ない。甘いコースに投げられないのはもちろんの事、多少のボール球くらいなら強引に打ってくる可能性もあるから、嫌でも勝負を避け気味になってしまう」
「夢城姉とアラベルにはまだ早過ぎた相手だったかも……」
「まぁそれがわかれば、この試合を組んだ意味が出るってものだよ。ここで向こうの勢いになる前に準備をする必要がある。ユイ!」
「はい!」
「念の為に肩を作っておいてくれ。もしかしたら出番がくるかも知れない。志乃はユイに付き合うように」
「了解です!」
「わかった……」
天王寺さんの指示でユイちゃんと志乃ちゃんが肩を作りに行った。あれ?私は?
「私の出番はないの?」
「彼方は来月のGWに投げてもらうつもりだから、今日……というか今月組む練習試合では出番はないよ」
「こ、今月の試合は投げちゃ駄目なんだ……。でも来月のGWって?」
「GWには私の方でゲストを呼ぶ予定だから、その時に存分に投げると良いよ」
天王寺さんが呼ぶゲスト……。一体誰を呼ぶつもりなんだろう?
カキーン!!
「ああっ!?」
「打たれたわね。由紀ちゃんの投げたコースは悪くなく、球も走っていた……。それをいとも簡単に打ってのけるなんて……!」
松浦さんが打った球はそのままグラウンドの外へ。スリーランを打たれて逆転されちゃったよ……。
「流れが良くない……」
「由紀は問題なさそうだけど、ロニエが不味いかもねぇ……。今のホームランで萎縮してなきゃ良いけど」
まぁそれも含めて捕手としての務めがわかれば良いけど……って天王寺さんは呟く。逆転はされちゃったけど、まだ試合は終わってないし、ここから反撃開始といきたいね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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