「逆転……されちゃった。私の……せいで……」
「何を小声で呟いているの?」
「ゆ、由紀先輩。わ、私のせいで折角のリードが逆転されてしまって……」
「……確かに今打たれたホームランについては采配に思うところがあると思うわ。けれどそれは貴女だけのせいではないの。私の実力不足でもある」
マウンドでは由紀ちゃんとロニエさんがなにやら話し合ってる。主に由紀ちゃんがロニエさんを慰めているように見えるけど……。
「ふぅ……。亜紀、伝令。選手交代だ2人に伝えてくれ」
「了解しました」
亜紀ちゃんが2人のいるマウンドへ駆け寄る。
「選手交代よ」
「そう……。まぁ逆転を許してしまったのだし、仕方がないわ」
「ロニエ・アラベル」
「は、はい!」
「貴女は今日の試合で由紀を動かしてみてどうだった?」
「……後悔と課題が残るリードをしていました。由紀先輩の投げる球は決して悪くありません。私のリードがもっとしっかりしていれば……!」
「……成程ね。では貴女はベンチに下がりなさい。ベンチから収穫出来る事もあると思うわ」
「はい……」
「亜紀、私はどうすれば良いのかしら?」
「由紀は逆転の目処が立つまで続投予定よ。それとも……限界だとか言わないわよね?」
「誰に向かってものを言っているのかしら?私はまだまだ余裕よ。あと1000球は投げられるわ。先程のホームランも犬に噛まれたとしか思ってないもの」
「それでこそ由紀よ。誇り高き夢城家の一員としてこれからも立派に振る舞いなさい」
「亜紀、もうあの家は滅亡しているわ」
「物の例えよ」
「お疲れ~!よく頑張ったね。とりあえずあとは志乃に任せな」
「…………」
「し、志乃先輩すみません。私、私……!」
ロニエさんは涙を溢しながら、志乃ちゃんに謝っていた。悔しいよね。自分の力不足を痛感してしまったら……。私だって野球を始めたばかりの頃は同じ事を思って泣いたもん。
「……アラベルはまだ捕手を始めたばかり。初試合で上手くいく事の方が少ない。むしろあの相手によくやった方」
「で、でも逆転されてしまって……」
「打たれた投手を立ち直させるのも捕手の仕事になる。次からはアラベルが引っ張っていかなきゃならない」
「まぁ今から志乃がマスクを被るから、ロニエはよく見ておきな。志乃のリードを……!」
「そんな大層なものじゃないけど……。まぁ行ってくる」
志乃ちゃんは軽く息を吐いてプロテクターとレガース、キャッチャーマスクを装着してマウンドへ。なんだか頼もしいなぁ……。
「とりあえず相手打線の流れを止める。配球は……で」
「わかりました。私は指示に従って投げます」
「従順過ぎて少し引く……。天王寺は一体どんな教育をしてるのか」
「松浦にホームランを打たれて、次は小原……。松浦と同格のパワーヒッターだ」
「そして例の3年生ブースト……。志乃先輩の采配と由紀の投げる球次第ではさっきの二の舞になってしまう……」
ズバンッ!
『ボール!』
「あ、相手に当たるかと思いました……」
「当てるつもりはないけど、当てるかもといった気迫の球とコース……。志乃はちゃんとわかってるね。ああいった打者の対策を。そして勝負の仕方を……」
「あれが……捕手としての正しいリードなんでしょうか?」
「そうでもないさ。あれはあくまでも志乃のやり方。ああいう風にリード出来るタイプと、出来ないタイプが存在する。ロニエは同じように出来る?」
「む、無理です。あんな攻撃的なリード……」
「まぁ出来なければ、それはそれで正解なんだけどね。ロニエには自分に合った采配を見付ければ良い。ああいうリードだってあるんだって事を覚えておけば良いのさ」
「は、はい!」
志乃ちゃんのリードは攻撃的で、ロニエさんのリードは保守的……。どっちも間違ってはいないけど、それは打者によって正解が真逆だったりするんだよね。あとは性格も出てくる。志乃ちゃんはそれをロニエさんに教えようとしていたのかも。
カキーン!!
『打たれた!?』
(打たれたけど、そう簡単には通さない……。夢城姉の渾身の1球を3年生ブーストだか知らないけど、易々と通す程甘くはない)
「……センター!!」
「任せなさい!!」
センターのイーディスさんが全力で後退し、小原さんが打った打球を……!
バシッ!
『アウト!』
見事に捕球!二者連続ホームランにならなくて良かったよ……。
「…………」
「ロニエ、今の打席で何か得られた?」
「はい……。リードには様々なやり方があるってわかりました」
「大切なのは柔軟な対応……。ロニエのやり方は間違ってないけど、それだけじゃ駄目だって事だよ」
「はい!これからも精進します!」
ロニエさんも落ち込んだ気持ちを払拭出来たみたい。立ち直って良かったよ!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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