食事が終わると、社長の指示で私、ユイ、早川さん、遥ちゃん、バンガードさんの5人は海岸で待機。
「待たせたな」
すると社長が物凄く大きな竹を担いで歩いてきた。あの雄々しい感じがとても絵になるわ……。
「し、社長……?その担いでいるのはなんですか?」
「メニューSの連中用に竹林から切り出した竹だ。3つある」
な、成程。あの大きな竹は私達の為に用意してくれたのね……。
(あの大きな竹を使って私達が出来るのは……素振りかしら?)
「その大きい竹で何をすれば良いんデスカ?」
「素振りだ」
「えっ?」
「素振りだ。この竹に付いている葉が全て落ちるまでな。ただし休憩はありだから、気にせず体力のある時に振り続けろ」
「これを……振り続ける?」
「こんなの……普通の人間じゃ出来っこないわよ」
ユイの言うように、普通じゃあんなに大きな竹で素振りなんて不可能。でも……!
「無理だと思っているな……?だが洛山高校の清本和奈は既に3本分の竹の葉を全て落としているぞ」
(清本さんはもう私達の遥か先を行っているのよね……)
彼女に出来て、私達に出来ない道理はない……。負けてはいられないわ!
「和奈ちゃんには負けられないね!」
「ナンバー1スラッガーになる私には必須科目デスネ!振ってやるデス!」
「清本さんの素早いスイング……その秘密がこの竹を振る事にあるとしたら、私もそれに近付けるかしら?」
遥ちゃん、バンガードさんに負けじと私も続く。同じ練習を共にする仲間であると同時に、合宿が終わると敵同士……。清本さんを含めた全員を越えて、最後に勝つのは私なのよ!
ブンッ!ブンッ!ブンッ!
「これが特別メニューS……の素振りだ!」
覇竹の素振り……。これを成し得た時に清本さんがやっていた高速スイングが身に付くのよね。
(それに素振りをしていると、なんだか落ち着いてくるのよね。振っているのは大きな竹だけれど……)
合宿に行く前は天王寺さんに言われた事に対して私なりの解答を出さないと……という気持ちでいっぱいだったのに、こうして素振りをしていると、焦った気持ちが払拭されていくわ。まぁ振っているのは大きな竹だけれど……。
(それでも何れ……答えを出さないといけないわね)
そういえばユイと早川さんはどんな練習をしているのかしら?
「そしてメニューUの貴様達にはこの小石を……」
バシャッ!バシャッ!バシャッ!
「このように投げてもらう」
あれは水切り……よね?
「これって……水切りですか?子供の頃とかによくやった……」
「その通り。遊び程度なら2、3回で良いが、貴様達には20回以上はやってもらう!」
「「に、20回以上!?」」
「そうだ。早川朱里に、ウィラード・ユイ。貴様達2人はアンダースローの投手としての決め球……燕の完成形を極める為にやるんだ」
あっちはあっちでかなりハードな練習をしているみたいね。水切りで20連鎖ってテレビに出れそうなレベルよ?いえ、それよりも気になる事が……。
「……というか早川さん、貴女もアンダースローだったのね。世界大会ではオーバースローだったから、わからなかったわ」
「まぁリトル時代はアンダースローだったしね」
そう、早川さんがユイと同じアンダースローの投手だった事……。私の推測が当たった形になったけれど、社長の話から察するに早川さんのアンダースローはユイのフォームと瓜二つのものになるの……よね?
(でも私が初めて早川さんと対戦した時点で早川さんはオーバースローだった……。リトルからシニアに上がったタイミングでフォーム変更をしたのかしら?)
「22年前に世界一のアンダースロー投手である早川茜もこの練習をこなして燕を完全な代物に仕上げたんだ」
「「そ、そうなんですか!?」」
早川茜さん……確かユイが憧れていたプロ選手だった人よね?僅か2年足らずで引退したってユイは言っていたのを覚えているわ。
「ウィラードさんって早川茜さんの事を知ってたんだね……?」
「だって私はあの人のアンダースローに惹かれて今の私がいるんだもの。そう言う早川さんだって……」
「や、だって私の母さんだし……」
「そ、そうなの!?確かに同じ早川だけど、そんなに珍しい名字じゃないし……」
やはりというか……ユイの憧れの選手だった早川茜さんは早川さんのお母様だったのね。言われてみれば早川さんからテレビで見た彼女のお母様……早川茜さんの面影があるような気もするわ。
(ユイと早川さん……。現状ではユイの方が僅かに練習の進行具合は上みたいね)
でもこの合宿が終わる頃には……その差も埋まっていそうね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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