私と神童さんの勝負……いえ、神童さんの投球練習の途中にユイと早川さんがこちらに駆け寄って来た。
「何があったの?真深が疲弊しているなんて、ただ事じゃないわ!」
ユイが信じられないといった様子で私と神童さんを交互に見ている。そ、そんなに珍しい事なのかしら?
「ああ……。なんとなく事情がわかった気がするよ」
「早川さん……?」
「多分だけど、上杉さんが神童さんに勝負を挑んだんだと思う。神童さんの実力はトッププロクラスだからね」
「ほ、本当なの真深!?」
「ええ……。私が神童さんに勝負を挑み、その結果1球もかする事すら出来ていないわ」
「そ、そんな……」
「うわぁ……。神童さんってばどこまで成長し続けるんだろうか?」
このままでは1球も当てる事もなく勝負が終わってしまう……。それだけはなんとしても阻止しなければいけないわ!
(そういえばこの状況……身に覚えがあるわね)
4年前に行われたリトルリーグの世界大会。そこで早川さんと勝負した時と同じだわ。あの時も私は手も足も出なかった……。神童さんを早川さんと重ねてる。だからなのか……早川さんの前では同じ失態を繰り返したくないわ。
「…………!」
(上杉さんの雰囲気が変わりましたね)
(世界大会でも感じた事のない、上杉さん自身の圧を感じるよ)
(中々良い面構えをするじゃないか。野球界を引っ張る奴はそれくらいの気概は持たないとな)
(真深……。このまま終わりじゃないわよね?)
神童さんの投げるラストボール……空振りする訳にはいかないわ!
「ふぅ……。今回は付き合ってもらって悪かったな」
「いえ。私も久し振りに神童さんの変化球が捕れて良かったです」
「上杉も。打者役として入ってくれて助かったよ。お陰で色々イメトレが出来た」
「役に立てたのなら……幸いです」
結局最後に投げられた球も私は打つ事が出来なかった……。
(当てるところまでは良かったのに、その結果はピッチャーライナー……。思わず自分の無力さを痛感してしまうわ)
私は何をしに、ここまで来たのかしら……。
「しかし最後の1球は思わず鳥肌が立っちゃったよ」
「そうですね。上杉さん程の実力の持ち主でも29球も空振りさせる神童さんもそうですが、最後の1球は神童さんにとっても特別な球でしたから」
私の後ろで早川さんと二宮さんがそのような会話を繰り広げていた。ど、どういう事……?
「えっ?それってどういう事なの?」
気になったのか、ユイが2人に尋ねる。
「……神童さんの高校時代で神童さんをまともに打てる人はかなり少ないです。私の知る限りでは3年間ぶつかり合っていた大豪月さんくらいでしょう」
「新越谷が去年の夏大会で白糸台に勝てたのも新井さんを打ち崩せたお陰だし、結局神童さんの球は打ててないしね……」
「それに神童さんが最後に投げた球は……」
「待て二宮。そこからは私が話そう」
二宮さんの言葉を神童さんが遮る。私が最後にピッチャーライナーになったあの球に……何かあるのかしら?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない