「そうだな。まずはどこかは話したものか……」
最後に投げたあの球について……どこから話そうかと神童さんは悩んでいた。
「皆は私が最後に投げた球の正体は知っているか」
あの球は確か……。
『ムービングファストボール……ですよね?』
私達4人が同時に解答。
「そうだな。私が最後に投げたのはムービングファストボール。……元々私はストレートがかなり遅い投手でな?小学生の頃に所属していたリトルチームの監督にはストレートが遅いと話にならない……と言われてたんだ。その時に試行錯誤して編み出したのがこのムービングファストだったんだ」
小学生の頃からムービングファストを物にしていたのね……。天才としか言い様がないわ。
「更には他の変化球がないと、この先は通用しない……と言われた私はスライダー、カーブ、シュート、シンカー、フォーク、カットボール、チェンジUPと可能な限り変化球を覚えた。無論かなりの時間を労したがな」
それで今の神童さんがいるのね。あれ?でも……。
「数多くの変化球を投げるのは多大なリスクを生じるのではないですか?」
(そう……。二宮さんの言うように、小学生の内からバンバンと変化球を投げていては肩や肘に負担が掛かってしまう。そんなリスクがわからない人ではないと思うのだけれど……)
「その疑問は最もだ。それについては私の育った環境が幸いしてな……。専門のスポーツドクターが私に付き添い、その方のアドバイスを元に、今の私がいるんだ」
成程……。環境の良い場所で練習する事で、それに見合った実力が身に付く訳ね。
「……それで話を戻すが、ムービングファストは私が最高のライバルになると思った奴に対してしか投げない。私にとって、初めて取得した球種だからな」
それって私が……。
「さて……。そろそろ良い時間だし、皆の所へ戻ろうか」
「そうですね。それに有意義な話も聞けました」
「私の昔話がか?変わった奴だな」
先頭を神童さんと二宮さんが歩き、早川さんがそれに着いて行く形に、私とユイはそれを追い掛けた。
「真深……」
「……ユイ、私はなんとしてもこの合宿を乗り切り、特別練習メニューも完遂してみせるわ」
「……そうね。私も皆には負けられないわ!」
今日は本当に色々な事があったわね。私達と新越谷、白糸台の合同チームと黒獅子重工の3軍と洛山の混合チームと試合をしたり、エルゼちゃんやリンゼちゃん達と練習したり……。その中でも1番大きいのは神童さんとの対決ね。
(私の中では完敗だと思っていた……。けれど新たに目標が出来たわ)
神童さんと次に勝負が出来るのがいつかはわからない……。それなら同世代で最大のライバル……早川さんから打ち崩す事を目標にこれからは頑張っていきましょう!
この時の私は最大のライバルとなる投手が早川さんの他にいた事、その投手の壁が想像以上に大きい事をまだ知らない……。
「くしゅんっ……!」
「風邪?」
「ううん、多分大丈夫……。それよりも早くこの薪を割って力を付けないとね!他の特別練習メニューをしてる朱里ちゃん達や真深ちゃん達を追い抜くつもりで!!」
「張り切り過ぎは怪我に繋がるから、程々にね」
「はーい!私だって朱里ちゃん達には負けられないからね!」
「頑張ってね。ヨミちゃん」
「うんっ!!」
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない