1回の裏は非道さんのタイムリーツーベースと、清本さんのツーランホームランによって1対4と3点差を付けられてしまう。
追加点によって封鎖されたのは2点分は三森……夕香さんの足に、非道さんのタイムリーによって朝海さんの足に、それぞれ合計2点分ずつ重りが付いている。これが多大に影響するのかどうか……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
後続の打者は川原さんが温存していたSFFを混ぜる事によって上手く打ち取った。それにしても良い球だわ……。
そして迎えた2回表。先頭は6番からで、ここから連続で左打者が続き、9番の川原さんも左打者。このイニングは点差を詰めるチャンスでもあるわ。
「姉さん達、ちょっと……」
「「夜子……?」」
そんな三森さん達が耳打ちをしている。作戦会議でもしているのかしら?
「それにしても黛さんのあのカーブ……どんな原理で2段変化してるんだろう?」
ヨミが黛さんのあのカーブに疑問を持っている。それに関してはこの場にいるほとんどの人が同じ気持ちね。私も原理まではわからないもの。
「……私の推測ですが、黛さんの指の力にあると思います」
疑問に答えたのは二宮さんだった。
「指の力?」
「ほぼ全ての変化球に共通しますが、手首と肘の捻りが変化球のキレを増します。黛さんの場合は恐らくボールを握る中指と親指の捻りが並大抵ではないでしょう。それ等が合わさって、2段変化を可能にしているんだと思っています」
成程……。それであのような2段変化が出来るのね。
「……日本に留学してからは学ぶ事がいっぱいね」
「そうね……。もしも先輩に着いて行かなかったら、私の視野は狭いままだったわ」
私達……特にユイは黛さんのあのカーブに感心していた。私もユイも、元々は彼方先輩に恩返しをするという目的の為に日本に来たけれど、表向きにはアメリカで学んだ野球を日本でも活かす為、更には様々な相手と戦い、仲間と切磋琢磨する事で自分の視野を広げる為のものでもあるのよね。
(この合宿も……今までの常識を打ち破る為にあるのかも知れないわね)
『セーフ!』
試合に戻ると、先頭打者がヘッドスライディングを用いて内野安打を決めた。足に重りが2つあっても、並以上の走力ね……。
「流石朝海姉さんね!私も続くわよ!!」
流れはこちらに来ていると思うし、最低でも同点にはしておきたいわ。
「そういえばあの2人になんて言ったの?」
「なんて事はない。この合宿が終わったら私が2人の為にロールケーキを作るって言っただけ。姉さん達はそれが楽しみなのか、異様な張り切りを見せてるけど……」
耳打ちしていたのはそんな内容だったのね。本当になんて事はなかったわ……。
カンッ!
……何にせよ、実力が発揮出来るのは良い事だわ。動機はどうあれ、野球に対して真摯に向かっているもの。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
8番の珠姫は三振。あの2段カーブはかなりのキレと変化量だし、手が出なくても無理ないわ。
(まぁ珠姫の事だから、ただの見逃し……という訳でもなさそうだけれど)
ワンアウト一塁・二塁のチャンスで9番の川原さん。6番と7番を見ていると、黛さんは左打者に対してシュートと普通のカーブを投げている。
カキーン!!
『ファール!』
「ああっ!?惜しい~!」
「でもタイミングは合ってきてるよ!」
「ファイト~!」
初球から上手くタイミングを合わせて、ライトフェンスへ。川原さんもかなりパワーがある打者ね……。
カキーン!!
2球目を見逃し、3球目にシュートを完璧に捉えた。その打球はセンターオーバーだ。
「ランナー回れ回れ~!」
「2点返せるよ~!」
足に2点分の重りが付いてるのに、あの2人は問題なく走れているわね。
(……いえ、問題がないように見えて、重りの効果は出ているわね)
それを悟られない振る舞いをしているあたり、一流の打者なのかもね。
「2点目!」
「3点目!!」
これで1点差……。この回中に同点までいけるかしら?
「ナイスラン。姉さん達……」
「ふふん!この程度の重りで私達の走塁を封じたと思ったら大間違いよ!」
「多少の走りにくさはあるけれど、これくらいなら何も問題ないわ」
なんだか夜子さんの話を聞いているとやや不純な理由で張り切っているようにも見えるけれど、まぁ私には関係のない話よね……。
「では打点をあげた者は封鎖する奴と、封鎖箇所を選ぶが良い!」
川原さんと早川さんが話し合った結果、センターとレフトの腕を封鎖となった。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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