最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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どうするべきか

今日は合宿最終日。夕方に来る船で私達は帰る訳だけれど……。

 

(まだ……天王寺先輩が言っていた私の今後については未定なのよね)

 

アメリカの高校でまた切磋琢磨したいとも思っているし、もう遠前高校野球部の一員でもある……。それが余計に私を悩ませる。

 

(はぁ……。まだ起床時間前なのに、目が冴えちゃったわ)

 

まだ大竹の葉は全部落ちてないし、気を紛らわせる為にも素振りをしましょう。それに遥ちゃんやバンガードさんには負けてはいられないし。

 

「真深……?」

 

私の隣で寝ていたユイが目を擦りながら私を見ていた。起こしちゃったかしら……?

 

「どこに行くの?」

 

「海辺よ。気分転換にね」

 

(本当は特別練習メニューの遂行も兼ねてるけれど、それを言う必要はなさそうね)

 

「そう……?私はもう少し寝てるわ。起床時間まであと1時間もないけど、寝られる内は寝ておかないとだし」

 

睡眠時間はとても大切だから、ユイの気持ちはわかる。

 

「ユイ……」

 

「?」

 

「ユイは……どうするか決めてる?合宿前に天王寺先輩から言われた事……」

 

「……私はもう決めているわ。実は合宿に行く前から答えを見付けていたの」

 

「合宿……前から?」

 

「ええ。ウジウジ悩んだ状態で合宿に行く訳にもいかないから、私の中で整理を付けた。真深は……」

 

「私は……まだ……」

 

「……普通はおいそれと決められる内容じゃないものね。でもなるべく早く答えを出さないと、悩む理由が増えてくるわよ?」

 

そうよね……。早く答えを出さないと……!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

大竹を持って海辺へと向かう。そこには先客が……。

 

「早川さん……?」

 

そこには特別練習メニューによる水切りをしている早川さんがいた。

 

「おはよう上杉さん。上杉さんも自主練?」

 

「おはよう。ええ、私も遥ちゃんやバンガードさんには負けてられないと思って、こうして早めに練習しようと思っていたのよ」

 

(まぁ……建前みたいな理由だけれどね)

 

ユイからの進行状況を聞くと、ユイも、早川さんも、あと少しで完遂するらしい。私達ももう少しで全ての葉が落ちそうだから、帰るまでには間に合うと思う。

 

「……お互いにあともう少しといったところだし、2人で練習しましょうか?」

 

「構わないよ」

 

(それに早川さんに聞きたい事もあるし)

 

でもそれをすぐに話題には出せないわね……。

 

「早川さんの昨日のピッチングは凄かったわ。ユイと同じフォームで、同じストレートを持ち、尚且つユイよりも1歩先を進んでいる……」

 

「……大袈裟だよ。私自身は大した事はない」

 

(天王寺先輩の言う通りね……)

 

早川さんと二宮さんは自己評価がかなり低く、他者を優先させる傾向にあるって……。データによれば早川さんの投球イニングは少なめ。それは早川さん自身が遠慮しているのではないか……と、早川さんと対戦経験のある私は思っている。

 

「ユイもあの世界大会から……そして今回の合宿において、自分は完全に早川さんに遅れを取っている事を自覚した……と言っていたもの」

 

「ウィラードさんが……」

 

ユイは早川さんの事を同じ投手として尊敬しながらも、投手としての最大のライバルだと言っていた。理由としては同じフォームで投げている投手だからなのと、同じアンダースロー投手に憧れを抱いているからだと……。

 

(私も……早川さんはもちろんの事、ユイや彼方先輩だって尊敬に値する選手だと思ってる。互いに互いを高め合うライバル関係が素敵だもの)

 

ユイは天王寺先輩が言っていた『彼方先輩の引退後に遠前野球部に残るつもりなのか、それとも彼方先輩とアメリカに帰るのか』という問題に対して、既に答えを出しているみたい。

 

(私は……私はどうするのが正解なの?どんな選択肢を取れば良いの)

 

「ねぇ、早川さん」

 

「どうしたの?」

 

「……私とユイは遠前高校で天王寺先輩に聞かれているの。私達は何の為に野球をしているのかと、彼方先輩が引退した後はどうするのかと……」

 

どうすれば良いのかわからない……。そのあまりに私は早川さんにすがっていた。何をするのが正解なのか……わからなくなってきたから……。

 

「実際に上杉さんはどうするつもり?」

 

「……わからないわ。私も、ユイも、彼方先輩にはとてもお世話になったの。当初はその恩返しのつもりで、彼方先輩と共に行動をしているわ。それが終われば再びアメリカに帰る予定だった……。でも遠前高校野球部で過ごして来た日常も私達にとっては本物よ。だから最後までやり切りたいとも思っているわ。彼方先輩と共にありたいと思う反面、遠前野球部でも頑張りたい……という2つの想いが入り混ざってるの」

 

「…………」

 

早川さんは黙って私の話を聞いてくれている。こんな……私の独りよがりな話を……。

 

「……私は、私達はどうすれば良いのかしら?」

 

だからなのか、つい頼ってしまう。すがってしまう……。

 

「……さてね。あくまでも決めるのは上杉さん自身だよ。自分の事は自分で決める」

 

早川さんは私の目を見てそう言った。そうよね。自分の事は自分で考えなければいけないわよね。それは当たり前の事……。

 

「厳しいのね。早川さんは」

 

なのに私はそう返してしまう。私は弱い人間ね……。

 

「私ならそうするだけだよ」

 

そんな私に、早川さんはそう返す。

 

(ヨミや珠姫が早川さんに懐いている理由が、遥ちゃんがいつも早川さんといる理由が……なんとなくわかる気がするわ)

 

だって馬鹿みたいな悩みにも、優しく諭してくれるんだもの。

 

(……でも、そろそろ決めるべきよね)

 

遠前高校野球部に残留か、彼方先輩と共にあるべきかを……!

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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