(あれが埼玉一のスラッガーと噂の雷轟遥……か。パワーだけじゃなく、スイングスピードもとてつもない速さだった)
「ドンマイ。切り替えて行こう」
「……もちろん」
(雷轟のレベルが直接感じられたのは良かったかな……)
『アウト!チェンジ!!』
雷轟がホームランを打った後、松岡さんは5~7番を凡退に抑えた。
「初回もそうだったけど、やっぱ打ち上げるな……」
「松岡さんの投げるストレートはノビと回転数が良いからね。それに……」
「それに?」
「松岡さんの本領はここからなんだよね」
「昨年の秋大会の映像でも松岡さんは序盤に打たれるものの、中盤以降に持ち直しているケースが多い……。その理由としては松岡さんの対応力、修正力が他の投手よりも群を抜いてるからなんだよ」
最早あれは才能の域だと思う。なんて羨ましい……。
「そういえば初回に比べて少しフォームが修正されていたな」
「攻撃の時には川原先輩を観察してますからね。恐らく今回は川原先輩が投げているフォームに合わせて、似せてくるかも知れません」
「私の……?」
「可能性は高いかもですね」
去年の夏大会で息吹さんが中山さんのコピーを成功させたのは数日に渡る練習の成果。それに対して松岡さんはその日の内……それも僅か10球にも満たないくらいでコピーを成功させる。しかもコピー前のフォームや、リリース等の良さを上乗せする形でだ。
「だが遥が打ってくれたホームランは大きい。この1点は守り抜きたいな」
「うん……。私も頑張って相手打線を抑えるよ」
(川原先輩の後には藤原先輩を投げさせる予定だし、飛ばして行っても問題じゃないけど……)
問題は松岡さんのコピースペック次第かな。場合によっては藤原先輩の球までコピーして、修正してくるかも知れないからね……。
「さぁ、切り替えて守るぞ!」
『おおっ!!』
「……新越谷が先制点を取りましたね」
「打ったのは?」
「雷轟さんのホームランですね。それ以外の打者は松岡さんを相手に打ち上げている……と梁幽館の偵察部隊から通知が来ていました」
「梁幽館の偵察部隊……というかはづきだね。ところでアタシ達はどうして新越谷とは別の試合を観戦に?アタシも和奈も試合がない日だから良かったけど」
「新越谷と深谷東方の試合と同時進行でやっているので、こちらの方を見ておこうかと……」
「そ、それにしても今年の大会は各都道府県が2つの球場で大会を進めているみたいだね……」
「そうですね。その理由としては2つ……。1つ目は全県の大会参加校が最低でも2倍近くに増えている事です」
「凄いよねー。特に東京なんか東西合わせて200校はあるんじゃないかな?」
「た、ただでさえ参加チームが多い東京が東と西で分けているのに、まだ増えるんだ……」
「話を戻します。2つ目は今年の夏大会直後に行われる県対抗総力戦です」
「4年に1度しか行われないし、お祭りみたいなものだから、『我こそは選ばれるぞ!』って感じの参加校が多いもんね」
「いずみさんの言うように参加高校が多いのはそれが理由ですが、運営側は各県が2つの球場で多く試合を進め、代表選手をピックアップしやすいようにする為でしょう」
「県対抗総力戦か……。アタシ達は選ばれるかな~?」
「選ばれたら光栄だよね」
「少なくとも2人共選ばれると思いますよ。……それよりもこちらの試合を観る事に集中しましょう。埼玉県大会に大番狂わせが起ころうとしています」
イニングは進んで4回表。ツーアウトランナーなしのこの状況で回ってきたのは……。
「行ってくるよ!」
「頼んだぞ遥!」
「2打席連続ホームランです!」
「頑張るねっ!!」
4番の雷轟。スコアは1対0で私達がリードしているけど、両チーム合わせて打ったヒットは雷轟のホームランのみ……。このスコアでわかるように、初戦から投手戦が行われている。
(しかも厄介なのは松岡さん側からは三振が出始めたという事……)
このまま雷轟が松岡さんから勝ち続けられるのなら大して心配はしていない。でもなんか不安なんだよね。嫌な予感がするというか……。なんだろうこの不安の正体は?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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