この試合の見所の1つ……。それが春星と吉川さんの対決。今、その一幕が開けようとしていた。
ズバンッ!
『ボール!』
(初球はボール球で様子見……か)
春星はかなり慎重なタイプのスラッガーだ。姉の秋月さんは初球打ちが多い印象にあるけど、その反対に春星が初球で打つ事は余りない。台湾にいた頃からそれは変わっていないが、それを向こうがどう思っているかだね。
(初球は見送り……。データ通りだな)
(初球打ちは余りないけど、甘く入ると簡単にスタンドインさせる実力者だから、くれぐれも慎重にね)
(わかってるさ……!)
ワンボールナッシングから2球目……。
(吉川さんが投げたのはシュートか……)
春星は横に曲がる変化球に対する打率が低めである。台湾にいた頃はそのような相性があったりした訳だけど……。
カキーン!!
それはあくまでも台湾にいた頃の話。今の春星はむしろ横系変化球は得意な部類に当てはまるようになったのだ。
『ファール!』
「惜しいっ!」
「タイミングは完璧だったのになぁ……」
「でも次は打てるよ!」
ウチって結構投手陣多いけど、横系変化球を安定して投げる事が出来るのは私と川原先輩だけ……。武田さんの場合はやや不安定な形でシュートを結果的に投げる事が出来る。いつでも投げられるようになれると良いね。
(苦手を克服する為に、マシン打撃で徹底的に対策。そして時々私と川原先輩に頼んで横系変化球を投げてもらう事によって、特訓は形になっていった……)
しかも春星は練習試合では横系変化球に対しては凡打の方が割合が多い。これが天然によるものか、わざとなのかはわからない。
もしもこの土壇場で完璧に対策が出来るようになったとしたら、春星の打撃センスはまさに天才的というべきだろうね。
カキーン!!
3球目に吉川さんが投げたカットボールも、春星は対応して場外へと飛ばす。結果はレフトに切れて……。
『ファール!』
ファールとなる。しかし今ので決め切れなかったのはちょっと痛いな……。
「吉川が投げるシュートとカットボールにも難なく対応しているな」
「流石は私の妹。姉として鼻が高い」
「…………」
(事前の情報では陽春星の苦手な球種は横に曲がる変化球……となっていましたが、この打席でそれが覆されましたね。新越谷に留学してからの彼女のデータも一通り持っていますが、それを見る限りでは苦手が克服されている様子はなかった……。この試合まで隠していた可能性が高いですね)
「そしてそれをさせているのは恐らく朱里さんと川口芳乃さんでしょう」
「……?何の話だ?」
「いえ、こちらの話です。しかしシニアリーグの世界大会で対決した時の彼女はもういませんね」
「まだ高校1年生だというのに、貫禄がある……。新越谷からしたら頼もしいのだろうが、梁幽館には頑張ってほしいものだ」
「それも現時点では心配しなくても問題ないでしょう。少なくとも吉川さんの方にはまだ余裕があります」
「余裕……?」
今のファールで追い込まれた……。こちらも春星の苦手克服をここまで隠し通していたのと同じで、吉川さん側にも何かしら隠している可能性がある。
(これで追い込んだ……。いくわよ和美!)
(ああ……。これで三振だ!)
(あの腕の振り、リリースポイントから見て……投げてくるのはストレート!)
4球目に春星が張っているのはストレート。吉川さんの腕の振りから見て、ストレートに対応したスイングを放つ。しかし……。
(えっ……!?)
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
吉川さんが投げたのはチェンジUP。しかもストレートと全く同じリリースポイントから放たれた球だ。
(成程。そう簡単には打たせないぞ……って事だね)
しかしあれ程の球を打つのは骨が折れそうだね。同じリリースポイントから放たれるストレートとチェンジUP……。見極めには時間が掛かりそうだ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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