6回表。恐らくこの回がお互いにとっての分岐点になるだろう。
「行ってくる……!」
台湾から来たスラッガー。陽春星その人が打席に立った
(ここで秋先輩の妹さんか……。和美先輩との戦績は1勝1敗だけど、果たして今の私は彼女を越えられるのかな?)
(これまで2打数1安打……。貢献は出来てると思う。でもそれだけじゃ足りない。チームの為にも、姉さんが母校の梁幽館を越える為にも……絶対に打つ)
春星と橘が睨み合う。春星は確かに優秀なスラッガーではあるけど、ある一部分においては雷轟よりも劣っているところがあるんだよね。
(まぁその一部分でスラッガーという役割がある訳なんだけど、それが原因で雷轟や清本に比べると物足りない……というのが二宮の評価みたい)
ズバンッ!
『ストライク!』
まぁ春星はまだ1年生だし、まだまだこれからだから、新越谷での野球生活を頑張ってほしいね。
「始まったな。この試合の分岐点である秋の妹と橘の対決が……」
「姉としては春星に頑張ってほしいけど、梁幽館のOGとしてははづきにも勝ってほしい」
「身内としては複雑そうですね」
「君から見て陽春星はどう映る?シニアリーグの世界大会では対決したそうだが……」
「私が直接彼女を見たのは1打席きりですが、その中で思ったのが怖さが足りない……の一言に尽きますね」
「怖さ?」
「彼女はスラッガーにはほぼ必須と思われる威圧感がないのが1番の理由でしょうか。その部分では和奈さんや雷轟さんよりも劣っています」
「威圧感……か」
「奈緒も時々放っているやつ」
「私はそこまで自覚はなかったが……。雷轟のような打者の場合は何かしらの切欠で威圧が出来るようになったんだろうな」
「だと思いますよ。ですが雷轟さんの場合はまだ始めて数ヶ月の段階でその域に到達しています。それこそ常人が何年もの月日を費やしてやっと習得が出来るものなのですが……」
「成程、納得した。春星の今後の課題がわかった気がする。……でもそう考えるとやはり雷轟は規格外の存在」
「その代わり……と言うべきか、補給率が並の初心者よりも低いから、それでバランスが取れているのか……」
「それで守備まで上手かったら、色々な人が放っておかないと思う」
「そうだな」
(今2人が言った条件が当てはまる人に数人は心当たりがありますが、一応彼女達は一定以上の年月は野球をしていますし、この場で口にする事ではありませんね)
カキーン!!
『ファール!』
「橘も良い当たりを打たれているが、上手く追い込んだな」
「多分次の1球で勝負が決まる……」
「この打席がこの試合の行方を握っている感じがしますし、お互い確実に仕留めたいところでしょう」
初球は見逃し、2球目はレフト線に大ファールとなってツーナッシング。春星と橘の雰囲気から見て、恐らく次の1球で勝負が決まるだろうね……。
『ゴクリ……!』
新越谷side、梁幽館side、そして観客席の全体から息を呑む音が聞こえる。静かになってるからかな?
(でもこの緊迫した雰囲気に対して春星も橘も緊張せずに集中してる。というか目を瞑ってるし……)
それ程集中してるんだろうね。
(……!行くよ陽春星!)
(あの投手が投げる次の球は恐らく今日1番の球……。何が来る?)
互いに目を開け、橘が投球動作に入った。
(橘がこの局面で投げてくるのは2択。1つは橘の決め球であるスクリュー……それも最大変化のものだ)
そしてもう1球は……。
(見てますか朱里せんぱい。私の信念の1球を……!)
橘の自慢のスクリューを元にした、偽ストレートだ。
「…………!」
「ああっ!春星ちゃんのスイングタイミングがずれちゃってるよ!?」
「あれだと空振りしてしまう……」
「…………」
「あれ……?」
「どうしたの朱里ちゃん?」
「……春星の今のスイングなんだけど、かなり早いタイミングで振ってきたなって思ってね」
「そういえば……。じゃあ春星ちゃんがやろうとしてるのって……」
(もう一丁……!)
成程ね。回転を用いて橘が投げた偽ストレートに無理矢理タイミングを合わせたって訳か……。
(対朱里のストレートに見せた変化球の対抗策。事前のデータがなかったら、使わなかったかな……)
カキーン!!
一回転して当てた橘の偽ストレート。そのタイミングは完璧で、打球はそのままセンタースタンドへと入っていった。何にせよ勝ち越し成功だね……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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