春星のソロホームランによって勝ち越しに成功したものの、橘の立ち直りはかなり早く、一塁・二塁のチャンスまでは作れたのに、追加点を得られなかった。そんな中で気になったのは……。
「むぅ……!」
(雷轟が余り調子良さそうに見えないんだよね。さっきの打席でもらしくなかったし、ちょっと不安だな……)
でもそんな事も言ってられないか。なんせこの回から武田さんに変わって私が投げる事になってるし。
「頑張ってね朱里ちゃん!」
「まぁ頑張りはするんだけど……。本当に私が投げても良いの?今日は武田さんが完投する予定だったんじゃないの?」
私は今日試合が始まる前に芳乃さんから終盤に私が投げる事を聞いたんだけど……。
「もちろん私はまだまだ投げられるし、投げたいけど、多分この試合は朱里ちゃんも投げた方が良いと思ったんだよね」
「えっ?なんで……?」
「それはわからないよ?でもなんとなくそう思っただけ」
武田さんはあっけらかんとそう言った。なんでそんな曖昧な理由なんだろうか?
「ま、まぁとにかくこの局面は朱里ちゃんに任せるね!」
「了解。この1点を死守出来るように頑張ってくるよ」
なるようにしかならないけどね……。
「新越谷は投手を早川に交代するみたいだな」
「奈緒は朱里と直接対決をした事があったんだっけ?」
「ああ。去年の夏大会でな。悔しいが私の完敗だったよ」
「朱里さん程手数の多い投手はいませんからね。初見で打つのは難しいでしょう」
「それは……去年君とバッテリーを組んでいた神童よりもか?」
「球の威力そのものは神童さんの方が上ですが、球種は朱里さんの方が多いです。そして今の朱里さんは……昔の朱里さんに近付いてきています」
「昔の早川に……?それはシニア時代か?」
「いえ、シニアよりも昔……リトル時代の朱里さんにです」
「リトル時代の朱里……どんなピッチングをするのか、いまいち想像が付かない」
「それならよく見ておいた方が良いですよ。利き腕こそは違えど、今の朱里さんはリトルと同等のピッチングをします」
6回裏。投手は武田さんから私に交代し、私がいたライトには雷轟が、雷轟がいたレフトには息吹さんが入った。
深谷東方との試合では大村さんが途中出場だったけど、今回は息吹さん。出番は平等に与えなきゃね。特に実力が拮抗している選手同士だと尚更……。
まぁそれはさておき、大会初マウンド。私の球を捕ってくれる山崎さんを始めとする、頼もしい守備陣……。彼女達のお陰で私は気持ち良く投げられるんだ!
(それに今の私のピッチングを橘にも見てほしいと思ったからね。地獄の合宿で生まれ変わった私を……!)
見ててよ……。私の練習の成果を!
ズバンッ!
『ストライク!』
(よし。制球は定まっているね)
あとは相手側の反応だけど……。
「…………!」
うん。橘を始めとする梁幽館全員が私の予想通りの反応をしてくれているね。もしかしたら芳乃さん達はこれを見越していたのかも知れない。なんていう準備の良さだ。
(ともかく私は私のピッチングをするだけ……)
抑えようと、打たれようと、それは変わらない。だから早川朱里の生まれ変わったピッチングを見て行ってよね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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