今日は試合の日……なんだけど、私達新越谷の試合は2戦目で、試合までには3時間以上あるのと、私が個人的に興味があるのとで、逆ブロックの試合観戦へと赴いている。
「一ノ瀬さん……だっけ。朱里ちゃんの先輩さん」
「そうだよ。私の前の川越シニアのエース」
「事前情報で聞いてはいたけど、あの美園学園を破る程の実力があるんだよね……」
「まぁシニア時代も三森3姉妹を抑えていたし、別段不思議ではないんだけどね」
問題は何故2年間表立って出て来なかったのか……というのと、3年生になったとはいえ何故今年になって表舞台に参加し始めたのか……という事だ。
「あっ、そろそろ始まるよ!」
「この試合も結構注目する部分だよね……」
親切高校の相手は熊谷実業。埼玉県随一の打撃チームだ。
『ゲームセット!!』
「…………」
「…………」
「…………」
私達3人は開いた口が塞がらない状況に遭遇していた。
「く、熊実って県内で1番打点を取っているんだよね?」
「そう……だね。一ノ瀬さんは変化球投手だから、変化球の対応が遅れがちだってわかってはいるんだけど……」
「ま、まさか熊実が1点も取れずに負けるなんて……」
スコアは4対0で親切高校の勝ち。しかも熊実がヒットを3本しか打ててないとは……。打たれたのは序盤だけだし。
「一ノ瀬さんが投げてた変化球……まるで天下無双学園の沖田さんみたいだった……」
「まぁ沖田に変化球を教えたのは一ノ瀬さんだからね」
「そ、そうなの!?」
あれ?そういえばまだ言ってなかったっけ……?まぁ何れは言うつもりだったし、早いか遅いかの違いかな。
「あのぐにゃぐにゃ曲がる変化球が……。あんな個性的な変化球なんて他に投げる人いないと思ってたや」
私の知る限りでも一ノ瀬さんと沖田くらいだよ。
「はぁ……」
球場を出たところを私達が話していたら、溜め息が聞こえた。
「あーあ。なんであんなにフルスイングするのか……。投げる度にビクビクするんだけど」
背後からネガティブな声が聞こえたので、振り返ると、そこには一ノ瀬さんが俯きながら歩いていた。前を見ないと危ないですよ?
「あんな脳筋集団とは2度とやりたくないよ。三振は取れたけど、心臓がもたないよ……」
と、とりあえず声を掛けるべき……?でも一ノ瀬さんとは最低限の関わりしかないし、一ノ瀬さんからしたら余り関わりたくないんじゃないかな?
「あ、あのっ!」
「うぇっ!?」
……とか思っていたら、既に武田さんが一ノ瀬さんに声を掛けてきた。山崎さんもちょっと驚いてるし。
「な、何々何なの……?いきなり声を掛けるなんて陽キャなの?私とは相容れない存在だから程々に……って早川もいる」
あっ、一ノ瀬さんが私に気付いた。
「ええ?早川っていつの間にリア充の仲間入りを果たしたの?いや、でも元々人気ある陽キャだったような……。そんな早川のお友達が私みたいな陰キャに何か用でも?」
(あー、この卑屈な感じは間違いなく一ノ瀬さんだ……)
会うのはシニア引退以来だけど、この人の内面は全く変わってないや。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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