ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
木虎を三振に取った泉さんはその勢いに乗って後続を凡退に仕留める。高良さんのリード能力を考えると得点も難しそうだ。
「泊先輩、準備は良いですか?」
「…………」
猪狩さんは新越谷野球部の中で1番マイペースな人間。今こうして木虎に尋ねられているこの場面でも、ベンチでボーッとしているし……。
「……チェンジ?」
「はい。誠に残念ながら、三者凡退です」
木虎の歯に衣着せぬ物言いに約2名が傷を負った気がする。しかもあれって自傷も兼ねてるよね……?
「……わかった」
猪狩さんはベンチから立ち上がって、伸びをしてから、マウンドへと向かった。本当にマイペースな感じが独特な雰囲気を醸し出してるよ……。
「今日は良い天気……」
猪狩さんはそうだよ呟いた。な、なんか緊張感ないな……。
「あれ……?新越谷の先発は19番?いつの間にそんな人数になったんだろ」
「えっと、電光掲示板には……猪狩って書かれていてるね」
「えっ?猪狩ってあの『猪狩コンツェルン』!?しかも大ベテラン投手の猪狩守さんの親族って事!?」
「……その可能性は大いにありますね。詳しい家族構成まではわかりませんが、ほぼ確定かと」
「でも今まであんな投手見た事ないなぁ。本当にあの猪狩選手の親族なら、どこかで野球をやらせていると思ってたから……」
(和奈さんの言う通りあの猪狩守さんの親族ならば、リトルなり、シニアなり、ガールズなりで名はあった筈。それが全くの無名なのは不可解ですね。しかし……)
ズバンッ!
『ストライク!』
「その血はキチンと受け継いでいるみたいですね」
「は、速くない!?」
「あの速さは全盛期の猪狩選手に匹敵しますね。あれより上の球速となると、大豪月さんか、風薙さんくらいでしょう」
「そ、それにもしかしたら……」
ズバンッ!
『ストライク!』
「嘘……」
「ライジング……と呼ばれた猪狩守さん独自のホップするストレート……。彼女の存在がこの高校野球界に革命を起こすのかも知れませんね」
「み、瑞希ちゃんが言うと冗談に聞こえないよね……」
「だね……。アタシ達も他人事じゃないね」
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
猪狩さんの調子は良好で、相手の先頭打者である泉さんを三振に抑えた。
「これで野球経験は壁当てだけ……だもんねぇ」
「味方として頼もしい限りじゃないか」
「それって逆に敵に回った時は……」
『…………』
か、考えたくないな。猪狩さんが敵に回った時の事を……。
「初めて泊ちゃんの球を見た時はストレートも、変化球も、決め球のライジングも……初心者離れしてたよ」
「正直あの状態ですら全国レベルだったからね。それが新越谷野球部での練習と試合の日々で更なる成長をしている……。もしも猪狩さんの基盤がしっかりと固まった状態で入部していたらエースは間違いなく彼女になっていたね」
「そ、そんなに!?……って言いたいところだけど、それだけ泊ちゃんが凄いんだよね。同じ投手としてもあれは嫉妬しちゃうよ」
武田さんも猪狩さんの凄さは一緒に練習してる分伝わっているみたい。
『アウト!チェンジ!!』
1回終了。お互いに三者凡退という、投手戦を匂わせる試合になりそうだ。そして今年の夏大会はかなりハイレベルな投手が敵味方共に揃っていそうだ……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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