「やっぱ凄いねー。あの猪狩選手の血筋を引いてるだけあるよ。あっさりと三者凡退だなんて……」
「い、いずみちゃん。まだ猪狩選手の親族って決まった訳じゃ……」
「でも流石に確定でしょ?猪狩なんて苗字はそうザラにないし、彼女の実力は確実に全国レベルだし、投げている球種も……。瑞希はどう思う?」
「猪狩泊についての情報はほとんどないですね。ただわかるのは……」
「猪狩泊。ベテラン投手猪狩守の姪であり、新越谷高校に入るまではずっと家の庭で壁当てばかりを繰り返していた……。その成果と僅か3ヶ月の練習でここまで成長するのは間違いなく彼女の野球センスがあってこそ……」
「「!?」」
「……今日この球場に足を運んだのは猪狩泊さんを観に来たからですか?猪狩守さん」
「まぁ可愛い姪っ子だしね。それに……」
(あの娘の成長具合がこの試合でどこまで見られるのか……というのも興味ある。楽しみだ)
「か、和奈……」
「う、うん……」
「……和奈さんも、いずみさんも、色々猪狩選手に要件があるのでしょうが、全ては試合が終わってからにした方が良いですよ」
「そ、そうだね。でも……」
「アタシ達が生まれる前から選手として大活躍してて、今でも最前線で大活躍している超ベテランプロが一緒にいるとか、緊張と興奮が止まらないよ……」
「……そういうものですか?」
「こ、こういう時に瑞希ちゃんの物怖じしない性格が羨ましく感じるよ……」
「ど、同感……」
「泊ちゃん!ナイスピッチ!!」
「……ありがとう」
芳乃さんが猪狩さんを称える。猪狩さんが称賛を受け取った後、ベンチの隅に凭れ掛かってボーッとし始めた。好きなのかな?
「しかし泊の人物像がわかんねーな……」
「そうね。どこかボーッとしてるし、ドローンを持ってくるし、いまいちキャラクターが掴めないわ……」
川崎さんと藤田さんは猪狩さんがどういう人物なのかわからないと言った。まぁ確かに結構謎が多いよね。もっと謎めいている人が複数いるせいで大してそうは思えないけど……。
「誰かクラスは一緒なのか?」
主将の質問に全員が首を横に振った。まぁ猪狩さんは転校生みたいだし、同じクラスだったら話題には出る筈だからね……。
「ボーッとしてる中で練習は真面目に取り組んでるし、特に投球練習になると目がギラギラしてるような感じもするし……」
「打撃練習でもそこそこ打ってたよね。紅白戦で野球部全体の打率を計ってるけど、猪狩さんは真ん中よりも上だし」
「う~む。最近は謎めいている人間がトレンドなのかな……」
「そんなトレンドはないよ」
多分……。
『アウト!チェンジ!!』
そうこう話している内に2回表も終了した。先頭の雷轟はヒットを打ったんだけどね……。
「まぁ何はともあれ、切り替えて行くのが大切だ。頑張ってくれ!」
『はいっ!!』
主将がベンチから指示出しするのも珍しい気がする。ほぼ毎試合出場してるし、当たり前と言えばそうなのかな?今回の場合は主将の後任だと思われる照屋さんのチェックを兼ねてるみたいだし。
「泊先輩」
「……チェンジ?」
「はい」
「わかった……」
ウトウトと微睡んでいる猪狩さんを起こし、猪狩さんは欠伸を噛み締めながら身体を解す。
「この回も抑える……」
グラブを装着した瞬間、猪狩さんが背筋をピンと伸ばす。マイペースではあるけど、決してやる気がない訳じゃないから、どこか憎めないんだよね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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