最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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県大会4回戦!新越谷高校VS稜桜学園⑤

7回表。出来る事なら延長線になる前に決着を付けたいところだけど……。

 

 

ズバンッ!

 

 

『ストライク!バッターアウト!!』

 

先頭2人が凡退に……。

 

「スマン……」

 

「私も打ち上げちゃったわ……」

 

息吹さんは内野フライ、川崎さんは三振してしまい、あっという間にツーアウト。

 

「泊ちゃんがパーフェクト決めてるから印象は薄くなっちゃうけど、泉さんもここまで4安打完封だもんね」

 

「時々朱里先輩が投げるストレートに見せた変化球を見せ球に使ってくるから、それに釣られてしまうケースも観られますね……」

 

芳乃さんと木虎が言うように、泉さんは偽ストレートを上手く扱えている。まぁそれは捕手の高良さんの影響な気もするけど……。とにかくそれによって私達の打線が悉く凡退の嵐になる訳だ。

 

「行ってくる……」

 

猪狩さんがボンヤリとした様子で打席へと向かう。掴み所がわからないけど、なんとなくやってくれそうな期待感もある。なんなんだろうね。猪狩さんって……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「泊の3打席目だね」

 

「彼女の打撃方面はどうなんですか?」

 

「良くも悪くも壁当てしかしてなかったし、ボクもそれしか教えてこなかった……。投手としての務めを果たす為には打力なんてのは完全に蛇足でしかないからね」

 

「で、でも猪狩選手は打撃能力も高かったような……」

 

「ボクの場合は正直たまたまに過ぎない。ボクの打撃センスがあったから高校時代、そしてプロでも何年かは二刀流も出来ていた……。まぁ今は投手1本じゃないと現役選手達と渡り合うのは難しくなってるからね」

 

(それでも50近い選手が男女混合のプロリーグでタイトルを取れるレベルなのはまた猪狩選手が規格外の選手だからだと思うな……)

 

 

カンッ!

 

 

『ファール!』

 

「……タイミングは完璧に取れていますね」

 

「ほ、本当に壁当てしかやってないんですよね!?」

 

「間違いないよ。しかし打撃方面でも結果を出そうとしてる……。しかし1、2打席目のあの娘の打席結果はどうだった?」

 

「え、えっと……。確かどっちも四球だったよねいずみちゃん?」

 

「うん。振るべきじゃないコースもわかってるし、選球眼も並以上はあるね」

 

「……となると計2打席を費やして、あの投手の持ち球、フォーム、リリースタイミング、変化球の変化タイミングと変化量を調べていた説が濃厚だね」

 

「……本当に貴女の姪は素人ですか?」

 

「間違いなく猪狩の血だね。壁当ての時もそうだが、1つの事に打ち込むのに必要な集中力と、泊独自の野球センスが宿っている。だから……」

 

 

カンッ!

 

 

『ファール!』

 

「に、2球目もタイミングバッチリ……」

 

「いざというときに頼りになる打者としての資質も兼ね備えている。あれは高校時代のボクを彷彿とさせているよ……」

 

「持ち球も打力も似てますからね」

 

(そうなるとこの試合は決着ですね。そして決定打を決めるのは……)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カウントはツーナッシングで追い込まれている。しかし猪狩さんは……。

 

「…………!」

 

「と、泊ちゃんは間違いなく集中してるね」

 

「星歌ちゃんわかるの?」

 

「せ、星歌はたまに泊ちゃんとペアで投球練習をするんだけど、その時の泊ちゃんは延々とコントロール練習を繰り返してたんだよ。星歌が何か言おうとしたら……」

 

「したら?」

 

「今打席に立ってる時と同じように、ギラギラとした眼に、なんかオーラがあるようか気がするんだ……」

 

渡辺の話を要約すると、猪狩さんの集中力と、持続力がこの打席で発揮されようとしている。

 

(うむむ……。追い込んだけど、なんかヤバい気がするなぁ)

 

(1球、外してみましょうか?)

 

(安定取るならそうなんだけど……。なんか嫌な予感がするんだよねぇ)

 

(私は、私達は泉さんの判断に任せますよ。稜桜学園野球部が出来たその時から……)

 

(ありがとねみゆきさん……。ここまできたら3球勝負。確実に仕留めていくよ!)

 

この雰囲気……。多分次の1球でこの打席の運命が決まるね。

 

(これで……三振だ!)

 

(ここまでのあの投手の配球を傾向立てると……。ストレート、見せ球、変化球、ストレート、見せ球、見せ球、変化球、ストレート。セオリー通りに来るなら次は……だけど)

 

3球目。泉さんが投げたのは……。

 

(遅い……チェンジUP?)

 

「…………」

 

違う。あれは……スローボール!これまで1球も投げていなかったのに、この局面で、しかも他の球と同じリリースポイントで投げてくるなんて……!

 

「……うん。やっぱり警戒していて正解だった」

 

「!?」

 

 

カキーン!!

 

 

猪狩さんは、これすらも視野に入れていたのだろうか?渡辺は集中力を高めると信じられないような能力発揮が見られるかも知れないと言っていた……。

 

(集中した時の読みは二宮以上かも……)

 

味方で良かったよ。そう思いながら、猪狩さんが放った打球が大きなアーチを描いているのを眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「相手の打線を完璧に抑え、打者になった場合でも決めるべき時は自身で決める……。今回で言えば、ソロホームランですね。猪狩泊さんは初心者という触れ込みでしたが、もしもしっかりと経験を積んでから野球部に入っていたとしたら……」

 

「エースはあの娘だった……か。成程ね」

 

「最後まで観て行かないのですか?」

 

「ボクが知りたい事は知れたから充分かな。それに今日のナイトゲームでは先発を任されているし、今から準備をする必要がある」

 

「あ、あの!良かったらサインをもらえませんか!?」

 

「あっ、和奈ズルい!アタシもサインください!」

 

「まぁお安いご用さ。レディーがボクのサインを求めているのなら、それに応えるのが務めさ。君にも書こうか?」

 

「……一応、お願いしても良いですか?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アウト!ゲームセット!!』

 

7回裏も猪狩さんは3人で抑え、大会の4回戦だというのに、見事完全試合を決めた。

 

(これは……実質上彼女がエースみたいなものだよね?)

 

主将や芳乃さんは私と武田さんをWエースと呼んでいたが、こうなってくると猪狩さんが3人目のエースとして君臨しても可笑しくないよね?

 

「負けてられないなぁ……」

 

「で、ですね……」

 

次の試合で登板予定の渡辺と、川原先輩が、喜びの声をあげる皆の声と被せてそう呟いた。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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