「頼んだぞ遥ーっ!」
「ホームラン打って同点だ~!」
「頑張るよっ!」
張り切った様子で打席に立つ雷轟。吉田さんの球を攻略出来るか……。
ズバンッ!
『ストライク!』
吉田さんのストレートは現埼玉県内の投手陣の中では速い部類に入ると思う。少なくとも真ん中よりは上だ。
(そしてそのストレートと併用して投げるチェンジUPと、サークルチェンジの影響でよりストレートを速く見せる投げ方を主にしている……か。私も似たような事は出来るけど、あれは相当練習しなきゃ取得は難しいと思うんだよね……)
しかも吉田さんは去年の夏頃までは外野手だった筈……。あの投げ方を身に付けたのが私達と初めて試合をしたあの時点が最速だとしても、1、2ヶ月という事になる。吉田さんが凄過ぎる……。もしかして本格的に投手をやる前に、練習していたのかな?
「……姫宮のエースである吉田さん、そして主将である金子さん。この2人を中心としたチームは中々統率力の高いですね」
「如何にも全員野球……って感じがするよね。洛山でも取り入れられたら良いなぁ……」
「まぁ洛山の野球スタイル上は難しいんじゃない?むしろそういうのは白糸台で瑞希が率先していそうなんだけど……?」
「白糸台の野球部1軍はあくまでも自主性に任せる事を方針としていまして、私はそれに従うだけです。余計な労力を割かなくても良いので……」
「あくまでも必要範囲内だけかぁ……。瑞希ちゃんらしいなぁ」
「……で、星歌からホームランを打ったあの4番打者のデータは取れたの?」
「私なりに彼女……番堂さんのデータは入手し終わりましたが、ここでは口にしないでおきましょう」
「ええっ?何それ気になるな~?勿体ぶってない?」
「別にそういうのではありません。ただ……彼女の実態については、恐らくこの試合である程度明らかになるでしょう」
「み、瑞希ちゃんが言うなら、きっとそうなんだよね?」
「星歌さんの球を完璧に捉えた事から1つの仮説が思い浮かびますが……」
(あくまでも仮説の域を出ませんからね。確証を持っておかないと、今後彼女と対峙した時に、誤った対処をしてしまいそうです)
カキーン!!
『ファール!』
「……それよりも今は雷轟さんの方に集中した方が良いでしょう」
「遥ちゃん、この大会に入ってからは余りホームラン打ててないって言ってたし、この試合で打てるようになると良いなぁ……」
「新越谷を応援する身としては遥には頑張ってほしいよね☆」
カキーン!!
『ファール!』
2球目、3球目と、吉田さんが投げる球をファールにしていっている。それもホームランすれすれで……だ。
「やっぱ遥のバッティングは見ていて気持ちが良いなー」
「私も見習いたいです!」
川崎さんと大村さんがそのように話しており、大半が2人と同じ意見なんだけど……。
『…………』
その中の一部……地獄の合宿を乗り越えた私達4人と、芳乃さんは雷轟の様子が少し可笑しい事に気付いた。
「ね、ねぇ朱里ちゃん。今の遥ちゃんって……」
「そうだね。どこか焦りを感じている」
思い当たる伏は色々とあるけど、その中でも大きな要因が2つ。
(1つは雷轟が段々ホームランを打てなくなってきているという事。そしてもう1つは……風薙さんの存在だ)
群馬県大会では風薙さんは出場させないと以前二宮経由で天王寺さんから聞いた。全国大会まで温存するつもりだと。故に雷轟が新聞なんかで知る機会もないんだけど……。
(雷轟は前に言っていた。県大会が終われば、その後に始まる県対抗総力戦の前に風薙さんに会いに行く……と)
だから私は雷轟に風薙さんの所在を教えた。きっと雷轟は風薙さんと話をしたい……いや、しなくちゃいけない事があるんだろうし、風薙さんも雷轟と話がしたいと言っていた。そして雷轟は全国の舞台に新越谷が駒を進める事が出来たのならば、群馬まで足を運んでみる……と。ちなみにこれは私と雷轟しか知らない事だ。
(だからなのかな?雷轟が焦って見えるんだ……)
『アウト!!』
「ああっ!?」
「遥ちゃんが打ち取られた!?」
「…………」
この試合……もしかしたら不味い方向に事が進みそうかも知れないな……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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