5回表も渡辺は三者凡退に退け、良い感じに相手打者を抑えている。
「さて!この回は1番からだし、チャンスを作って行くよ!」
「まずは同点、そしてそこから逆転のチャンスを作っていきましょう」
上位打線から始まるこの回が最大のチャンスだと見て良いと思う。渡辺に安心してもらう為にも、点を取っていきたいね。
「う~ん……」
「雷轟……?」
ベンチに戻ると、雷轟が何やら思案顔をしていた。吉田さんの攻略について考えているのかな?
カンッ!
「希ちゃんが打った!」
「一二塁間抜けたぞ!」
先頭の中村さんも出塁したし、このまま勢いを付けていきたいね。番堂さんを狙うのも金子さんのカバー力を見る限りは多分無理そうだし……。
「新越谷にもチャンスが到来したね~」
「星歌さんが立ち直り、朱里さんが繋いでからは流れが新越谷に行っていましたし、来るべくして来たチャンス……という事ですね」
「じゃあこの回で点を取れなかったらどうなるの?」
「流れは姫宮に行き、恐らくはそのまま姫宮が逃げ切るでしょうね。初回に取った2点はそういうものです」
「でも新越谷には台湾からの留学生や、歩美と藍まで入ってるし、前の試合で完全試合を達成させた猪狩プロの姪っ子もいるし、既存のメンバーも打力は上がってるよ?そんな新越谷を負かす要因になるのかな?」
「姫宮も金子さんと吉田さんを筆頭に、着実に力を付けていっている高校です。この試合では4番の番堂さん以外は2年生と3年生で構成されているスタメンですが、これまでの試合は去年の3年生の引退後に構成されたメンバーで数ヶ月に渡り、力を付けていっています。全体的に守備力や連携能力が埼玉県の高校でも随一ですね」
(今の姫宮を上回る高校は埼玉の中でもそうは多くないでしょうね。あの守備連携を越えられるかどうか……というのが鍵を握っていそうですが、雷轟さんや、陽さんのようなスラッガーが一発を狙えば展開は簡単に進むのでしょうが……)
カンッ!
「あっ、また打った!」
「これでワンアウト一塁・三塁のチャンスだね!」
「本来ならチャンスではありますが、回ってくる4番の雷轟さんは今日2打席ノーヒット……。ここで雷轟さんの意地を見せるか、吉田さんが抑え切るか、はたまた第3の選択肢か……」
「第3の選択肢?」
「代打攻勢です」
「でも4番の遥に代打を出すかな~?遥って足も速いんでしょ?それこそ歩かされた時の為に仕込んだホームスチールとかもある訳だし……」
「あくまでも選択肢の1つというだけです。どのような選択肢を取るのかは新越谷次第ですよ」
1番の中村さんがヒットを打ち、2番の藤田さんが送りバントでランナーを進め、3番の主将がまたヒットを打った……。中村さんの走力ならもしかしたらホームも狙えると思ったんだけど、外野のカバーが早くて、三塁止まりだったんだよね。
「こ、これは最大のチャンス……!遥ちゃん、お願いね!」
「一発風穴を開けてやれ!」
雷轟に期待の声があがる。そんな中でも雷轟は思案顔のままだから、皆も怪訝な顔をしているのがわかる。そして雷轟が口にしたのは……。
「……私、この試合では打てないかも知れない」
『えっ……?』
雷轟らしからぬ、弱気な発言だった。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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