……で、試合は進み6回。この試合は川原先輩と朝倉さんによる激しい投手戦が繰り広げられている。
朝倉さんの方はストレート、カットボール、SFFの3種類を駆使し、それに加えてバックの守備力によってほとんどの打者が内野すら抜けないという結果に陥っている。これには少なからず志木さんのリードも影響していそうだけど、実現までに達しているのは間違いなく朝倉さんと内野陣の努力の賜物だと思われる。
そして川原先輩はと言うと……。この試合の初回までは相手打者を打ち取るピッチングをしていた。向こうの守備陣までとはいかなくても、着実にこちらの守備力を伸ばす為のものだった……。しかしリミッターが外れたのか、同じリリースポイントから放たれる豪速球と、チェンジUP、SFFで2回から全ての打者を三振に仕留めている。5回までで奪三振12個だ。
「光先輩、調子はどうですか?」
「まだいけそうかな。無理そうだったら、あとは任せるね?」
「はい!今日は息吹ちゃんがリリーフに回る予定だから、そのつもりでね!」
「い、一応肩は作り終えてるけど、私の出番あるのかしら……?」
ちなみにこの5イニングでお互いまだ無安打四死球0という、勝った方が完全試合になりかねない状況だ。
「代打を出すのは延長戦に入ってからでも良いとして、問題は朝倉さんの球と、内野陣の鉄壁守備の2つを乗り切れるかだよね」
「そうだね。代打を出すとしても、その辺りの突破口が開けない事には難しそうだよ」
朝倉さんの球を外野まで飛ばせたのは雷轟のみ。しかも雷轟はこれまでの2打席はどちらも球威負けしているから、朝倉さんの成長も目覚ましいものだ。
(今日のスタメンで雷轟の次に外野へボールを飛ばせる可能性があるのが、この回の先頭打者の……)
「行って参ります!!」
「頼むぞ白菊!」
「ホームランかっ飛ばせ~!」
大村さん。長打力には期待が出来るけど、技術的な部分が不足していた。今では春星なんかも大村さんに何か教えているみたいだし、今では大村さんも主戦力の1人だ。去年の清澄戦では刀条さんの球を攻略していたしね。
(もしかしたらこの試合を決めるのは……)
それが大村さんだったら、良いのにね……。
「試合は予想通り……いや、予想以上の展開を迎えているな」
「川原さんも、朝倉さんも、互いに現状完全試合の状態ですからね。ですが試合が動くとすれば、恐らくこのイニングになりそうです」
「6回表の新越谷の攻撃は……大村からか。技術的な部分はまだ未熟だが、一発がある。新越谷の打線は今雷轟以外は外野にすら打球が飛んでいないし、今日の新越谷のスタメンでは雷轟の次に期待値が高いパワーヒッターだろうな」
「藤原さんや、川原さんも惜しいところではありますが……。当てた時に打球が飛ぶのは大村さんの方だという事ですね」
大村さんは打席に向かう時こそは張り切っていたけど、打席に立つとやたら静かに……。集中しているのかな?
(彼女……凄い集中力だ。生半可にいくと打たれそうだね)
(……ですね。際どい所を攻めつつ、最悪歩かせる事を視野に入れます)
(了解。蓮華ちゃんのリードを信じるよ)
(遥さんが新たに得た『剛の打法』と対極の私のスイング……。お母様に教わった『静の打法』を試す時。初球で打ちます……!)
朝倉さんが1球目を投げた……その刹那。空間が変わった気がした。えっ?何この空気!?
「空蟬(うつせみ)!!」
カキーン!!
『打った!?大きい!!』
大村さんは初球から打っていき、その打球は鋭いライナーを描き……。
ドンッ!
フェンスに激突した。ホームランまであと1歩だったけど、とりあえず朝倉さんの完全試合の阻止に成功した。
(しかし今のスイング……。清本や雷轟がやってたものと少し似てる。それでいて、別の雰囲気を感じた……)
大村さんはあのスイングを空蟬と言ってたけど……?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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