大村さんは二塁まで辿り着き、ツーベースとなった。
「ナイバッチ白菊ちゃーん!」
「それにしても凄かったなさっきの白菊は……。今まで見た事のないスイングスピードだったぞ」
「確かに……。いつの間にあんなスイングを身に付けていたのかしら?」
主将と藤原先輩の疑問に私なりの推測を脳裏に浮かべる。
(雷轟が地獄の合宿で得たのが『剛の打法』だとするなら、大村さんが今やったのが『静の打法』。しかしあのスイングはどこかで1度見た事があるような……?)
思い出した。確か去年の全国大会の決勝戦……清澄との試合で大村さんは似たスイングをしていた。あの時に比べてスイングが速く、鋭くなっているのは多分大村さんなりにスイングを研究していたんだろうね。そうじゃなければあれ程のスイングスピードは出ない。
(もしも雷轟が伸び悩んでいたら、大村さんのあのスイングが助けになるかも知れないね)
私はそう思いながら、先制のチャンスに期待する……。
「先に先制のチャンスを物にしたのは新越谷か……」
「逆に新越谷側はここで点を取れないと、厳しい展開が待っているでしょうね」
「川原のフルスロットルな投球もどこまでもつかわからない以上、ここで点を取れると大分楽になるが……」
「それは新越谷次第、そして柳大川越次第でしょう」
コンッ。
8番の川崎さんが送りバントを上手く決めて、ワンアウト三塁。そして次の打者は……。
「行ってくるね」
「はい!頑張ってください!」
川原先輩。全力投球を5イニング続けているが、疲れは特に見えない。多少汗をかいているけど、まだまだ余裕がありそうだ。まぁもしも無理そうなら、代打を出しているだろうけどね。
(川原さんか……。ウチの打線を苦しめている程のピッチングをするとはね。これまでの成績を蓮華ちゃんからもらったデータで確認する限りだと、甘い球ならスタンドインするくらいのパワーもあるし、ここは慎重に行かないとね)
(丁寧に攻めていけば、抑えられない程ではない筈……。外角を中心に投げてください)
(わかったよ)
ズバンッ!
『ストライク!』
外角高めギリギリのコース……。多分志木さんのリードだろうけど、かなり慎重に投げてるね。
(そういえば試合前に渡辺が言っていた事がある。志木さんのリードする時の癖……みたいなものらしいけど……)
一応全員にそれを伝えてはいる。だからあとは本当に朝倉さんの球の球威に負けないか、柳大川越の堅い守備陣を突破出来るか……の2択になっている。
更にそれを相手に悟られないように振る舞う事で、リードを読まれている……なんて思考に辿り着かせないように私達は攻撃の際に心掛けている。ちなみにこれは二宮の得意分野だ。二宮は先読みに長けているけど、読み合いには決してさせる事のない……そういう野球をする。相手が読み合い勝負に持ち込もうとしたとしても、二宮は更にその上を行く。つまり遥か高みから見下ろしているのだ。今この時も私達の試合を観ては対策を脳内に巡らせている事だろう。
カンッ!
『ファール!』
2球目にはタイミングを合わせる。川原先輩はこのタイミングで勝負を掛けに行くようだ。志木さんとの読み合い勝負に持ち込む……。成功すれば先制点を取れ、均衡が崩れるだろう。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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