6回裏。投手は川原先輩から息吹さんへと交代。
「ふぅ……」
ベンチに戻って座るなり、川原先輩から物凄い脱力感を感じた。とりあえず1番近くにいた私が川原先輩にドリンクとタオルを渡す。
「お疲れ様です」
「ありがとう朱里ちゃん……」
川原先輩からは大量の汗が流れていた。まぁ4イニングも全力投球したら、疲れるよね。私だったらその半分くらいしか持たないかも……。
「全力投球はかなり久し振りだったよ。お陰で疲労感が凄まじい……」
「確かに今まで見た中でも1番の成果でしたね。2回から打者を三振に切っていましたし、山崎さんとのリードとも上手く噛み合っていました」
「絶対に打たせたくない……って思ったからかもね。ストレートとチェンジUP、あとはSFFも朱里ちゃんから教わって投げたけど、ストレートとの相性が抜群だったよ」
川原先輩にはかなり前からSFFを伝授していた。それを川原先輩は短期間でものにし、更には精度を上げてきた。その結果が柳大川越の打線に三振の山を築いた訳だけど……。
「しかし今日投げたストレートは速かったですね」
「うん。多分自己最速かも。それを連続して投げられたのが楽しかったかな。欲を言えば、完投したかったけど……」
「流石にあのペースのままだと倒れかねませんよ。私だって去年の全国大会の準決勝で無理が祟って倒れてしまいましたし……」
本当に、あの時は反省点が多かった。倒れちゃうし、二宮からも説教をくらうしで踏んだり蹴ったりだ……。川原先輩もその様子をスタンドから観戦していたので、事情も知っている。やや複雑そうな顔をしていた……。
『アウト!』
「……まぁあとは息吹さん達に任せましょう」
「そうだね。私も次の登板に向けて、実力を磨いていくよ」
芳乃さんの話によると、次の川原先輩の登板は全国大会の初戦。その時までに川原先輩がどのような成長をするのかが楽しみでならない。
「新越谷は投手を川原から川口へと交代……。それによって柳大川越の打線はより打つのが困難になったな」
「先程までの川原さんは剛の投手なのに対して、川口さんは柔の投手……。投手としてのタイプが全然違います。柳大川越の投手陣で言えば朝倉さんと、柳大川越のOGである大野さんくらいの差がありますからね」
「つまりここから柳大川越が逆転する術は……?」
「余程の油断を川口さんがしない限りはありませんね。このまま新越谷の勝利でしょう」
(私個人として見ておきたいものも見られましたし、この試合は収穫が多かったですね)
「柳大川越といえば……おまえと似たリードをするという捕手もいたみたいだが?」
「星歌さんのかつてのチームメイトである志木さんですね。確かに近しい何かは感じられましたし、志木さんを見る事で私に足りないものもわかりました」
「まぁ優秀ではあったが、おまえに比べればまだまだ甘い部分も見受けられる」
「私は私、志木さんは志木さんです。本人にしか出来ない事がきっとありますよ」
「志木にしか出来ない事があるのはまぁわかるが……」
(二宮にしか出来ない事……という部分に今の白糸台は依存しつつあるな。完全に依存させない為に、二宮は試合の日でも不在な事も多いし、監督も許可を出す訳か……。本当に、どれだけ先を見据えているんだろうな?)
『アウト!ゲームセット!!』
交代した息吹さんは四球を出すものの、二塁から先を踏ませる事なく、そのまま柳大川越の打線を抑え切った。
1対0で私達が勝った訳だけど、この試合は投手としてのタイプが正反対だった川原先輩と息吹さんが上手く機能したね。秋大会のリベンジもこれで達成した……。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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