『アウト!チェンジ!!』
初回の私達の攻撃は三者凡退で終わってしまった。
(しかし春星をも打ち取ってしまうとはね……)
太刀川さんの投球内容は秋大会の時と変わってはいない……。しかし格上を相手に萎縮しない気持ちが咲桜のWエースの1人として君臨している(ちなみにもう1人のエースは工藤さん)訳だね。
「あの、朱里先輩……」
「どうしたの木虎?」
「ヨミ先輩から事情の方は聞きました……。その、朱里先輩が怒りに呑まれないか……私達全員が心配してるんです」
……良い後輩だ。木虎はシニア時代から素直で、ストイックで、負けず嫌いな部分もある子だったけど、私に対しては敬意を持っている良い人間だ。
(そしてそれは今でも変わらない……。皆に余計な心配を掛けちゃったね)
「……大丈夫だよ」
「朱里先輩……?」
「武田さんから事情を聞いたのなら経緯は省く。そしてそれに対しての憤りを感じているままなのも事実……。でもそんな怒り任せの投球で抑えられる程、咲桜は甘くない。だから木虎は木虎なりの最高のリードをお願いするね?」
「……はい!」
「咲桜のあの投手中々凄いじゃん!今の新越谷の打線を三者凡退に抑えるなんて……」
「だね。今日の試合では元台湾代表の4番打者が出ているのに……」
「咲桜のWエースの一角……太刀川さんの長所として、バックを信頼して打たせて取るピッチングは慣れているのか、それが当たり前かのように投げている事ですね」
「でもそれって逆に言えば、相手打線を三振に抑える事が出来ないって事なんじゃ……?」
「それはありえません。太刀川さんの球を映像で見た事がありますが、球筋そのものは正にエース級です。その気になれば三振も狙えるでしょう。……とは言えピンからキリまでありますので、一概には言えません」
「つまり……?」
「あのピッチングスタイルは長年磨き上げた代物……。打たせて取るピッチングにおいては他の投手よりも数段上手でしょう」
(そして恐らくあの捕手もそのスタイル完成に一役買っている……。確か去年の夏大会で亮子さんの球を捕っていた……小鷹さんですね。彼女が太刀川さんをここまで育て上げた捕手と言っても過言ではありませんね)
さーて、全力全開で行きますかね……!
「…………」
(1番は松井さんか……。秋大会では3番を打っていたみたいだけど、今日の咲桜の打順は監督である今井さんと、多分友沢が1枚噛んでいるんだろうね)
「う~ん……」
(何か唸ってる……?)
「……85点ってところだナ」
なんか点数付けられたんですけど……?どういう事?
(まぁその点数が高いのか低いのか……。私のピッチングを見てから、また改めて採点してほしいものだね!)
松井さんの突然の採点発言は気になるけど、今は自分のピッチングに集中しないとね。
ズバンッ!
『ストライク!』
(……85点なんて早川朱里の評価はあくまでも去年の大会の活躍と、私達自身の成長を加味した上での点数だったが、採点が甘かったか?それにアンダースローにしては球が速い。映像で見るよりも全然速く感じるゾ。下手をすれば早川朱里のオーバースロー時代よりも……!)
(朱里のあのフォーム……成程。リトル時代の朱里と同じフォームという訳か……。面白いじゃないか)
今日は投球が冴えている気がする。切欠は怒りからだろうけど、感情が1度落ち着いた今では負ける気がしない……という感情の方が強くなっている。出来る事ならば、このまま完投を目指したいところだけど……?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
-
見たい
-
見たくない