6回表。2番から始まるこの打順が恐らく最後のチャンスになると思われる。
(そういえば去年は私が2番打者として友沢と対峙していたんだっけ……)
感慨深く思いながら、私はグラウンドを見る。
(シフトは内野陣がやや後退……。先頭打者でランナーもいないから、ヒッティングを仕掛けてくると踏んだのかな?)
ここで藤田さんが塁に出られるかどうか……というのはかなり大きい。果たしてどうなるか……。
(芳乃のサインはなし。それなら……!)
コンッ。
『セーフティバント!?』
敵味方の意表を突くセーフティバント。打球は一塁線を転々と転がるけど……。
「はっ!?ファースト!!」
数瞬遅れて太刀川さんが指示を出す。だけどもう遅い……と言わんばかりに藤田さんは一塁ベースへと駆け込んだ。
(ふぅ……。上手くいって良かったわ。私だって皆には負けていられないもの)
ノーサインでなければ、きっとこの判断はしなかっただろう。クリーンアップを前に、この出塁は大きい……!
「やるね~あの2番☆」
「う、うん。シフトの隙を突いた良いバントだったよ」
「局面的にバントで来る確率がほぼなかった為に、セーフティバントをする……というのが頭から抜けていたようですね」
「瑞希ちゃんは今のは想定出来てたの?」
「可能性の一端として頭を廻らせる……くらいの事はしますかね。その際にファーストとサードに前進指示をブロックサインで出します」
「うーわ……。やっぱ瑞希は敵に回したくないよね~」
「ま、まぁ既に私達は瑞希ちゃんと敵対してるけどね……」
「そうだった……。今年は県対抗総力戦もあるから、もしかしたら瑞希達と2度も戦わないといけない可能性もあるのか~……」
「私が代表メンバーに選ばれない可能性もあると思いますが……」
「いやいや、辞退でもしない限りはないでしょ。それとも瑞希は辞退するの?」
「いえ。気になる事もありますし、通知が来たら、代表メンバーになろうと思います」
「まぁそうだよね~」
カキーン!!
「やった!痛烈な当たり!!」
「内野抜けろ~!」
3番の春星は初球から太刀川さんの変化球を捉える。痛烈な打球は二遊間を……。
「任せろ!」
バシッ!
抜けなかった……。セカンドにいる友沢が横っ飛びで打球をキャッチしたのだ。
「くっ……!」
藤田さんは既に二塁ベースへと辿り着いている為に二塁セーフ、そして一塁へと駆ける春星は……。
『アウト!』
僅かに届かず、アウトとなった。これでワンアウト二塁。そして……。
「よーし!今度こそ打つぞ~!」
4番打者の雷轟……。3度目の打席に立つ。この打席が、この試合の行方を占う事となるだろう。内外共々空気がピリッとしている。
(そして雷轟を応援する私達も……)
雷轟が打てば新越谷の勝ち、打てなかったら咲桜の勝ち……。これはそういう打席なのだ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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