最強のスラッガーを目指して!【本編完結】   作:銅英雄

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捕手の理由

一ノ瀬さんと雷轟の1打席勝負は一ノ瀬さんの勝ち。雷轟にとっては嫌な結果になってしまった。しかもそれだけじゃなく……。

 

「何が……何が駄目だったのかな?私のアドリブが弱かったから?だから変化の勢いが上がった一ノ瀬さんの球を捕れなかったの……?」

 

一ノ瀬さんの変化球を逸らした山崎さんにも影響が出ており、山崎さんが落ち込んでいる。それはまるでこれまでの捕手としての自信が崩れ去っていくような……。

 

「珠姫ちゃん、大丈夫かな……?」

 

「こればかりは本人次第な気がするけどね……。というか雷轟はもう大丈夫なの?」

 

「強くならなきゃって想いはあるけど、3日後の決勝戦で借りを返せば良いかなって思ってるんだよね」

 

どうやら雷轟の方は立ち直ったようだ。あとは山崎さんなんだけど、どうしたものか……。

 

「……そこで何をしているんですか?」

 

私達に声を掛けてきたのは二宮だった。君こそここで何をしてるの?しかもさっきまで坂柳さんがいたから、ちょっと坂柳さんが戻ってきたのかと勘違いしちゃったよ……。それくらい二宮と坂柳さんは似ている。

 

「二宮はどうしてここに?」

 

「私は今から白糸台へ戻るところです。ここ数日は西東京と埼玉の往復ですね」

 

凄いバイタリティーの持ち主だよね。定期券か何かを持っているんだろうけど、普通そんな頻繁には来れないよ?清本も、金原も、私達の試合をよく観に来てくれているけどさぁ……。

 

「それで山崎さんが落ち込んでいる様子ですが、何かあったのですか?」

 

(一応二宮にも話しておくかな?もしかしたら同じ捕手として何かわかるかも知れないし……)

 

私は事の顛末を二宮に話した。

 

「成程……。捕手としての自信と、これまでの経験が崩れる感覚がした……という訳ですね」

 

「二宮さんは……二宮さんはこういう時にどうすれば良いと思う?」

 

少し落ち着いた山崎さんが二宮に尋ねた。山崎さんも二宮から何かを得ようとしているのが伺える。落ち込んでいた割には強かだよね。

 

「……私はシニア時代に一ノ瀬さんとバッテリーを組んだ事が何度もありますので、山崎さんのような無様な結果にはならないでしょう」

 

「ぶ、無様……。で、でも初見だったから、不意を突かれたところもあったし、私もまだまだなんだなって思ったよ」

 

「そういえば二宮は一ノ瀬さんの変化球を初見で難なく捕っていたよね?その時の経験を話せば良いんじゃないの?」

 

リトル時代からそうだったけど、二宮が球を逸らしたシーンは過去に1度しかなく、その1度もリトル時代の初期だ。それ以来二宮はどんな球でも逸らす事なく、捕球能力を大幅に上げていた。

 

「私のですか?」

 

「き、聞いても良いかな?」

 

藁にもすがる思いで山崎さんは二宮に頼み込んでいる。余程追い込まれていると見えるね……。

 

「私の場合は……投手の様々な情報を収集し、ありとあらゆる可能性を廻らせ、自分にとっての想定外を1つでも減らす事が大切だと思っています」

 

「…………」

 

「近い将来、山崎さんと一ノ瀬さんがバッテリーを組む可能性もありますし、多くの事を考えた方が山崎さん為にもなりますよ」

 

確かに……。早ければ県対抗総力戦で山崎さんと一ノ瀬さんのバッテリーが成立する可能性があるのか……。

 

「私の為……。うん、ありがとう二宮さん」

 

「礼を言われるような事はしていませんよ。山崎さんが、山崎さんなりの解答を見付けただけです」

 

「それでも言わせてほしいんだ。二宮さんの言葉で私なりの答えが見付かったから」

 

「そうですか……。ではもう1つだけ言わせてください。これから先、山崎さんが今日みたいな悩みを抱えたなら、自分が野球を、捕手を始めた切欠を思い返してみてください」

 

「私が捕手を始めた切欠を……?」

 

「その思いが活力になる事もありますからね。私も辛い時は似たような事を思いました」

 

私としては二宮が辛かった時を想像し辛い……。だっていつも無表情なんだもん。

 

「……わかった。私なりに色々考えてみるね!」

 

これで山崎さんの問題も解決に近付いたと思う。

 

「それでは私はこれで失礼します。決勝戦、良い試合を期待していますよ?」

 

そう言って二宮は去って行く。西東京と埼玉の往復は大変そうだな……。

金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?

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