二宮が去った後は雷轟とも別れ、山崎さんと2人で歩いている。
「調子はどう?少しは落ち着いた?」
「うん……。二宮さんのお陰でモヤモヤしてたのがなくなったかな」
「それなら良かったよ」
なんで二宮があそこを通りすがったのかは知らないけど、そのお陰で山崎さんが立ち直った。
「私……焦っていたのかも知れない」
「……と言うと?」
「自分の出来る事を増やす為に、他校の捕手のプレーとかを映像で見てたりしてたんだ」
映像でとはいえ、自分と同じポジションの選手のプレーを参考に出来るのなら、そうするべきだろう。私も似たような事はしてるし。
「その中でも……やっぱり二宮さんは凄かったよ。朱里ちゃんからもらった川越リトルシニアの試合データをもらったのも合わせて見てみると、二宮さんが捕手として出ている試合は無失点が多かったんだ」
「ああ……」
確かにそれは凄い。二宮は味方投手の良い所は徹底的に活かして、駄目な所は素早く修正させる……。それで点を取られていても3点以内に抑えている。ちなみに1軍レベルの投手だと無失点が多く、完全試合やノーヒットノーランも何度も達成させているから、川越シニアは『鉄壁のシニア』なんて呼ばれていたんだよね。その要因は二宮がリードをしている投手に限り……という。
(冷静に考えて、去年の白糸台は凄かったよね。神童さんと二宮のバッテリーとかプロチームですら完封しそうだよ……)
実際に二宮と組んだ神童さんの防御率は1にも到達していないから、恐ろしいものだ。
「その頃から……ううん、多分もっと前から私は焦ってたんだと思う。去年の試合で言えば、夏大会で梁幽館と対戦した時のヨミちゃんのあの球……。予想よりも大きく変化したから、上手くアジャスト出来なかった。思えば切欠はそこからだったんだよね」
「武田さんの成長速度を見誤っていた……か」
それで言えば、今の武田さんは止まる事を知らない勢いでどんどん成長していっている。地獄の合宿で大きく化けたし……。まぁそれに関しては川原先輩にも同じ事が言えるけど、武田さんの方が伸び代は凄い。不確定要素もあるけど、はまった時のピッチングは格上をも凌駕するからね。
「今でもヨミちゃんはどんどん成長していっているし、置いていかれるんじゃないかって不安なんだよ。今年は藍ちゃんも入ってきたし……。藍ちゃんはバッティングも凄いし、捕手としての能力も優れている……。私にないものをいっぱい持ってるし」
まぁ木虎はね……。二宮という強力なライバルがいたから、2年間はスタメンマスクを被れなかったんだよね。その悔しさからか、二宮と差別化が出来る点を今でも探しているらしいし、二宮も木虎の成長を危惧しているって聞いた事もある。初野共々強力な後輩だよ全く……。
「まぁそうかもね。でも山崎さんは山崎さんなんだし、山崎さんにしか出来ない事をやっていけば良いんじゃないかな?」
「私にしか出来ない事……か」
主に武田さんのお守りだよね。口には絶対に出さないけど……。
「見習える部分は見習えば良いけど、決して自分を見失わないようにね」
「そう……だよね」
山崎さんはどこか吹っ切れた顔をしている。こっちはもう大丈夫だろう。
「ありがとう朱里ちゃん」
「私は何もしてないよ」
「そんな事ないよ。いてくれるだけでも元気が出て来たから……」
私ってそんな人間かな?どっちかと言えば、雷轟とか武田さんの役割だと思うんだよね。
「それに私だけじゃなくて、新越谷の部員全員が朱里ちゃんに支えられてきたと思うんだよ。精神的支柱って感じ」
「私がねぇ……?」
思った事を言ってるだけなんだけどね……。それが人によっては救われるって事なのかな?
「……よくわからないけど、元気が出たなら良かったよ。決勝戦のスタメン捕手は山崎さんだし、いつまでも元気をなくしたままだと試合にも影響が出ちゃうしね」
「うん……」
とりあえず山崎さんの精神的な問題は解決した……と見ても良いのかな?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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