中村さんがライトゴロに打ち取られてしまった……。
「あ、あのライトは……!」
「芳乃ちゃん?どうかしたの?」
どうやら芳乃さんも気付いたようだ。向こうのライトの存在に……。
「鈴木美希さん……。朱里ちゃん達が出ていたシニアリーグの世界大会でアメリカ代表の選手として出場していた……」
『ア、アメリカ代表!?』
「そうだ……そうだよ。日本代表とアメリカ代表の試合を観に行った時も、鈴木さんは1番打者で先発してた……」
「で、でもなんで気が付かなかったんだろう……?」
「要因は色々あるけど……。順番に挙げていくなら、まずは選手登録名かな?アメリカで試合をする時は『ミッキー・スズキ』という登録名だったのに対して、日本で試合をする時は『鈴木美希』として登録されている……。これが初見の相手を混乱させる理由かもね」
日焼けしているけど、鈴木さんは純粋な日本人……。二宮から聞いた話によると、リトルでは日本で、シニアではアメリカでそれぞれ3年ずつ野球をしていたらしい。そして高校へ入学すると同時に、再び日本へと帰国した……とか。
(どこの高校かまではわからなかったけど、まさか親切高校に入っていたなんて……!)
親切高校は梁幽館と同じ全寮制の高校みたいだし、その辺りが理由なんじゃないかと今思っている訳だけど、実際のところは本人にしかわからないよね。
「2つ目の理由としては親切高校の試合履歴を見てみたけど……。公式戦での鈴木さんの出場はこの試合が初めてみたいだね」
「えっ?」
「温存していたのか、鈴木さん個人の理由があるのかはわからない……。でも意表を突かれたのは事実だろうね」
「で、でも元アメリカ代表の1番打者って事は間違いなく主戦力の筈だろ?そいつを温存して、今までの試合に勝って来たってのかよ……?」
「そうなるね。格上を相手にしても、主戦力の1人である鈴木さんを温存していた状態で勝ち上がって来たのは間違いない……」
「……何にせよ、そこまで大事に温存していた選手を私達の試合に出して来た事を光栄に思おう。そして最後に勝つのは私達だ」
ライトゴロなんてプレーを決められたのに、主将は冷静に判断し、思考した……。2年間主将を務めただけあって、とても頼もしい。
「さぁ、切り替えて試合に臨むぞ!」
『おおっ!!』
と、意気込んだのは良いものの……。
『アウト!』
2番の藤田さんはシュートで凡退し……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(しまった!入っていたのか!?)
3番の主将はコースすれすれのカーブを見逃し、三振となった。あのコースは手を出しにくいし、大体の打者は見逃すと思うから、仕方ないけど……。
「羽矢さんが投げた最後の1球……。あれは手が出なくても仕方がないね~」
「かなり厳しいコースでしたからね。カットに失敗してしまえば、凡退する事は間違いないでしょう」
(尤も和奈さんクラスのリストがあれば、あのコースの変化球でも強引にスタンドへ入れる当たりも打てるでしょうが……)
「す、凄い変化球……。でも黛さんも最近では凄い変化球を投げるようになったんだよね」
「それは……合同合宿の時に見た、2段変化するカーブの事ですか?」
「ううん。それとは別の球だよ」
(でも瑞希ちゃんなら既に知ってそうだけどなぁ……)
「えっ?何々?2段変化するカーブとか異次元過ぎない!?なんかアタシの知ってる野球と別の野球なの?朱里と言い、現実ではありえない魔球とか投げてる気がするんだけど……」
「ちゃんとした現実ですよ。まだまだいずみさんの……私達の知らない野球があるというだけです」
(いやー、瑞希の知らない野球ってなったら、いよいよ超次元野球になっちゃう気がするなー……)
「……ヨミちゃん、準備は良い?」
「もちろん!私はいつでも準備OKだよ!!」
今日の試合は武田さんと山崎さんのバッテリー。まさにこの決勝戦に相応しい新越谷の王道のバッテリーとも言える。
(この試合の行方は……案外武田さんだったりするのかもね)
私はそう思いながら、武田さん達を応援する。頑張ってね!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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