ツーアウト三塁。打席に立つのは親切高校の4番打者……。
「剛田星奈……通称『ゴウちゃん』と呼ばれている選手だよ!」
「……そういえば電光掲示板にも『ゴウ』で登録されていますね」
「渾名かなんかで選手登録が出来るってかなり珍しいケースじゃないのか?特に高校野球で……」
川崎さんが言うように、剛田さんはかなり特殊なケースでこの高校野球に臨んでいる。電光掲示板に『ゴウ』と表示されているのがその特殊ケースだ。
「そのゴウさん……ってどんな選手なの?」
「それはね!」
息吹さんの質問に食い付いたのは芳乃さん。芳乃さんは親切高校が美園学院に勝ってから、かなり入念にデータを集めていたみたいだ。
「ゴウさんの選手タイプを一言で言い表すなら……遥ちゃんに匹敵するパワーヒッターだよ!」
「えっ……?遥クラスのパワーヒッター!?」
そう。今芳乃さんが言ったように、剛田さん……いや、ここは選手登録名に合わせるべきかな?ゴウさんは雷轟に負けず劣らずのパワーヒッター。しかも変化球が得意なタイプの……。
カキーン!!
『ファール!』
「あ、危ねぇ。ポールすれすれじゃねぇか……」
武田さんは変化球タイプの投手だから、ゴウさんとの相性は悪い。変化球ならどんなコースでも、嬉々として打ちに行くのがゴウさんのバッティングスタイルらしい。
「ゴウさんは変化球にとても強くて、特に遅いタイプの変化球は今まで1度も打ち損じた事がないくらいなんだよ」
「厄介な打者だよね。でも武田さんの球を打ち切れなかったのは助かったかも……」
本来なら武田さんの決め球の1つであるあの魔球がゴウさんにとってはおやつでしかない……。でもそれは地獄の合宿に行く前までの武田さんの場合だ。
ズバンッ!
『ストライク!』
「!?」
地獄の合宿を乗り越えた武田さんは全体的に球速が大幅に上昇し、変化球も鋭くなっている。例に挙げるなら、カットボールとツーシーム。この2球種はストレートとほとんど遜色ないので、球の見極めがより困難になった。今ゴウさんが手出し出来なかったのがそのツーシーム。
「でもヨミ先輩も負けていないですね!」
「そうだね。今の武田さんを打てる打者はそう多くないよ」
地獄の合宿で得た屈強な上半身……。そこから投げられる球は鋭く重い。更に合宿を終えてからも日々武田さんは成長していっている。私は本当に武田さんに追い付けるのかな?
(ツーナッシング。ここはゴウさんの得意なタイプの球になっちゃうけど……。行くよ。あの球!)
(うん!いっ……けーっ!!)
3球目。武田さんの決め球の1つであるあの魔球が投げられる。ゴウさんはそれを待っていたかのように、タイミングを合わせるけど……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
「……っ!」
武田さんがこの勝負を制した。ゴウさんもまさか自分の得意なタイプの球種を空振りするなんて思っていなかっただろう。唇を噛み締め、悔しそうにしていた。
(武田さんのあの魔球と、強ストレートと呼ばれる武田さん本来の球……。この2球種が合宿とは比べ物にならないレベルの威力を発揮するんだよね)
今だって、私にとっての1番の投手としてのライバルは武田さんなのだ。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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