逆転の一打を打たれてしまった……。多分配球が読まれてたんだ。だとしたらこれは私のミス……。これからの配球を考え直すのも兼ねて、ヨミちゃんを慰めに行く。
「ごめんヨミちゃん……」
「ねぇタマちゃん」
「ど、どうしたの?」
ヨミちゃんからは落ち込んでいる様子はない。むしろ楽しそう……?
「タマちゃんのリードはきっと正しかった……。でも相手に読まれてたんだと思うんだ」
「そ、そうだね。だから配球の見直しを……」
「だからさ、タマちゃんがリードに迷ったらヘルプサインを出してよ!」
「えっ?サイン?」
どういう事だろう……?迷ったらヨミちゃんにヘルプサインを?
「さっきみたいに相手の裏を書こうとして、読まれる場面はきっとあると思う……。だからそんな時は私に助けを求めてみてよ!私の決め球で相手を捩じ伏せるから!!」
「ヨミちゃん……」
ヨミちゃんが頼もしく見える。去年とは大違いだ……。精神的にも成長してる。
(また……私は見誤っていたんだね。ヨミちゃんの成長を……!)
これからもヨミちゃんはまだまだ成長する。私はそれに着いて行けるだろうか……?
(……いや、弱気は駄目だよね。これから先、きっと色々な投手と組む事になると思う。その度にこんな調子だと捕手としての成長は出来なくなる。だから私も前に進まないと……!)
「……それってヨミちゃんがあの球をいっぱい投げたいだけじゃないの?」
「ギクッ……!い、いや、違うよ?ほら、朱里ちゃんも言ってたよ?決め球はここぞという場面で投げ切るものだって……。タマちゃんのリードに文句を言うつもりはないけど、勝負所ではあの球を投げさせてほしいなーなんて……」
「そっか。朱里ちゃんが……」
朱里ちゃんは多分こういう場面を見据えていたんだと思う。きっとこの場にいたのが朱里ちゃんだったら、さっきの場面では決め球を投げなきゃいけないんだと……そう私に要求してきたと思う……。
(今なら朱里ちゃんが言っていた『決め球とはここぞという場面で投げ切ってこそ決め球だ』……という意味がようやくちゃんとわかった気がする。ゴウさんの得意な球種だからといって、避ける場面じゃなかったんだね……)
そういえば朱里ちゃんと組んだ時の二宮さんは基本的にノーサインだった。投手の自由にした方が良い球を投げる……きっと朱里ちゃんも、そして多分ヨミちゃんも、そういうタイプの投手なんだよね。
「……ヨミちゃん」
「な、何かなタマちゃん!?」
「ここから私はサインを出さない……。ヨミちゃんの自由に投げて良いよ!」
「タマちゃん……」
「私は……私は絶対に逸らさないから!」
「……!うんっ!!」
この試合はヨミちゃんに任せてみよう……。きっとそうした方が良い結果に繋がりそうな気がするから……!
ゴウさんに逆転の一打を打たれてから、向こうに勢いが渡らないかと心配していたけど……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
(どうやら解を見付けたみたいだね)
武田さんの球の勢いが上がってきている……。元々尻上がりタイプの投手ではあったとは思うけど、今ではそれがハッキリと分かる。そしてこの瞬間も大きく成長しているという事も……!
(あの時武田さんが笑みを浮かべていたのは、多分こういう事だったんだろうね)
山崎さんと何を話していたのかはわからない……。でもきっと謝りに来た山崎さんに武田さんが思い切り投げたい……みたいな事を言ったんだろう。そして山崎さんもそれを了承した……。それが今の武田さんのピッチングに出ている。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
今の武田さんを打てる打者は多分……親切高校内にはいない。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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