ツーアウト二塁。埼玉選抜の4番打者、雷轟遥が左打席に立つ。
(空蟬はまだ完成していないけど、それを差し引いても、雷轟の打力は頼りになる……)
沖田を相手に最終的には打ち勝ってるし、期待値は高い。
ズバンッ!
『ストライク!』
しかし今沖田の球を打てるかどうかはまた別の話だ。変化球も練習試合に比べて、格段とキレを増している。
カキーン!!
『ファール!』
成長しているのは雷轟も同じ。野球を本格的に始めたのは去年からとは言え、様々な強敵と渡り合った成果が如実に出ている。
『雷轟選手、沖田選手の変化球を捉えて場外へ!』
『凄まじいパワーですね。変化球はストレートに比べて比較的に軽いですが、あそこまで飛ばせる打者はそうはいません』
でもこれで野球始めて1年ちょっとなんだよね。身長も並はあるから、清本が血涙を流してしまうレベル。まぁ清本は清本で140センチしかないのに、スラッガーレベルのパワーヒッターなのも大概……というか滅茶苦茶可笑しいんだけどね?
「タイム!」
ツーナッシングのタイミングで捕手の土方さんがタイムを掛けた。雷轟はどちらかと言えば追い込んでからも粘ってくるタイプの打者だし、空振りを取れる変化球とか、配球とか相談するのかな?
「土方さーん!」
「そんな捨てられそうな子犬みたいな仕草で、助けを求められても困るんだよね……。で、どうするの?」
「沖田さんは最近編み出した魔球を投げたいです!」
「……あれは県対抗総力戦の決勝戦まで取っとくって言ってなかった?」
「いやー、やっぱり埼玉選抜は強力だったって事ですかね~?」
「決して笑い事じゃないけどね……。あんなビックリボールを受けるこっちの身にもなってほしいよ全く」
「でもでも土方さん、雷轟遥の恐ろしさは知ってるでしょ?」
「否定が出来ないのがまたなんとも……。確かに雷轟さんは凄い打者だし、さっきヒットを打たれた番堂さんもそうだし……わかったよ。投げても良い。もし私が捕れなくても責任は取らないよ?」
「大丈夫ですよ!沖田さんは土方さんを信用してますから!」
「……じゃあ私は戻るよ。精々打たれないようにね」
約3分の会議が終わって、土方さんが戻って来た。果たしてどんな作戦を立てて来たのか……。
「行きますよー?沖田さんのとっておきを喰らうが良いです!」
そう言って沖田はボールを投げた……上空へと。
『えっ!?』
実況、解説を含めたほぼ全員が同じ反応をした。多分今の光景で平然としているのは向こうのバッテリーくらいだよね?
『な、なんという事でしょう!沖田選手が上空に向かって、ボールを放り投げたぁ!!』
『傍目から見れば暴投……に見えますが……?』
「な、なんだかわからないけど、これはチャンス!」
二塁ランナーの番堂さんがスタートを切る。まぁ暴投だと思うよね?私もそう思うもん。
(ふふん。ランナーに走られる事は想定済みですよ!この球の本領は……ここからです!)
「落ちろぉ!!」
沖田が声を大に叫んだ瞬間、なんと上空からボールが落ちて来た。
(えっ?えっ?ど、どういう原理なの!?)
雷轟も戸惑っている。というかほぼ全員が戸惑うよこんなの!
ズバンッ!
『ス、ストライク!バッターアウト!!』
「これが沖田さんの新魔球……その名も『天竜』です!」
(天高くから流星の如く飛んでくる竜のような球……。受けてる私からしても、未だにその原理がよくわかってないんだから、恐ろしいよ。ある意味では群馬選抜の風薙さんよりも凄い球を投げている……)
沖田の新しい球種……あれが打てないと、埼玉選抜の勝ちは遠退く一方だ。しかも対策がわからないときてる……。これはもしかして今までの試合で1、2を争うくらいにヤバいんじゃないだろうか?
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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