9回表。ツーアウト一塁の状況で、2番の朝海さんが初球から沖田の球を捉える。しかしその打球は高く打ち上がり過ぎて、フライになりかねない……。
「ああっ!このままだとアウトになっちゃうよ!?」
「でもなんで打球を高く打ち上げるような真似をしたんだろう?」
そこが疑問に思うところ。朝海さんはわざわざアッパースイングによって、打球を高く打ち付けたんだ。まるで何かを試みているように……。
「朝海姉さんは闇雲に打ち上げた訳じゃない……」
「ど、どういう事!?」
「朝海姉さんはずっと待ってたのよ。この球場に風が吹くのを……」
「風……?そんなの吹いてないですよ?」
夕香さんと夜子さん曰く、朝海さんはこの球場に風が吹くのを待っていたらしい。でもゴウさんの言う通り、風が吹いているようには思えない……。
「確かに普通なら難しい。でも朝海姉さんは親戚が所有している農林で自然と共に過ごしていた時期があって、その恩恵で朝海姉さんには風の流れが見えるようになった」
「風の……流れが?」
「選球眼ならぬ、選空眼……といったところ」
選空眼……。もしもそれが本当なら……!
「遥か上空で吹いている風に打球を乗せる為に……?」
「早川朱里が今答えを出したわね。そうよ。朝海姉さんはこの暑い中で日光に照り付けられたグラウンドから発生した上昇気流が外野側から流れてくる季節風とぶつかり、その気流同士が激しくぶつかり合った時……1つの突風が生じるのよ」
(選空眼……!)
朝海さんはまだスタートを切っておらず、空を見ている。あれが夜子さんの言う選空眼か……。
(見えるわ。風の天井が……!私に農作業を教えてくれた昌には感謝しないといけないわね)
「じゃあ私達が風を感じないのは何か理由があるの?」
「上空40メートルから起こってる事らしいから、私も夜子もわからないわ。それを感じられるのは朝海姉さんだけ……」
「でもこんな好条件が揃う機会は滅多にない……」
な、なんだか野球なのに、学校の授業を受けている気分だよ……。教科は理科。
「風に乗りなさいっ!!」
朝海さんが叫んだ瞬間、ボールは風に乗り、打球が伸びた。
『な、なんと打球が伸び始めました!!』
「ええっ!?」
「そんな馬鹿な……!」
風に押された打球はグングン伸びていき、そのままスタンドへと入っていった……。
『は、入ったぁ!なんと2番三森朝海選手の逆転ツーランホームラン!!』
『彼女は2打席目にも風向きを読んで、打球を動かしていましたね』
『まさに選球眼ならぬ、選空眼です!』
『選空眼……。まぁ風向きが見えていなければ、今の一打は難しかったでしょうから、強ちそれで正しいのかも知れませんね』
『三森朝海選手の執念の一振りによって、埼玉選抜が逆転しました!!』
今日の朝海さんは大活躍だね。風を視る打者として、今後も活躍が期待が出来そうだ。
「ナイスバッチ!朝海姉さん!!」
「風向きを最大限に活かした良いバッティングだった。2打席目のスリーベースよりも良かった」
そして朝海さんは妹2人に囲まれて祝福を受けている。とりあえず逆転に成功……。このまま逃げ切りたいね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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