9回裏。ツーアウト二塁の状況で4番の土方さんに回ってくる。
「土方さん!あとは任せましたよ!!」
「まぁなるようになるさ。出来る事なら、私だって高知選抜を優勝へと導きたいしね」
一打同点、一発でサヨナラ負けのピンチの状況。全員がマウンドへ集結する……。
「どうするの?あの4番を歩かせて、次の打者と勝負する?」
「いえ、ここは勝負ですね。高知選抜の選手達はパワーヒッターが多いので、ランナーを溜める方がリスクが高いです」
「でもどうすると?あの4番のパワーと対応力は半端やなかよ?」
「う~ん……。まぁ方法がなくはないんだけどねぇ?」
「橘さん?」
「ちょっち博打打ちになるんだけどね……。蓮華ちゃん、耳貸して?」
橘が志木さんに耳打ちをし始めた。土方さんに対する作戦会議だろうか?
「……本当にそれで上手くいくんですか?」
「五分五分かな?奇しくもあの土方さんは私が過去に対戦した打者とタイプが似てる……というかほぼ同じ?だからやってみる価値はある」
「……何にせよ、私達は信じる事しか出来ないわね」
「こっちに打たせなさいよ?橘はづき、決して貴女は1人じゃないんだから!」
「ゴウちゃんも夕香さんにさんせーです!外野を含めた8人がはづきさんの味方ですからね☆」
「……ですね。橘さん、思い切りいきましょう!」
「皆……ありがとう。よし!気張って行くよー!!」
『おおっ!!』
内野陣で円陣を組んで、橘が気合いを入れる。とくに呑まれてないようで、とりあえず一安心……。
「……作戦会議は終わりですか?」
「はい。橘さんが必ず貴女を抑えます」
「良いですね。その気持ち……。私も全力で迎え撃つ事が出来ます」
ズズズズ……!
「「!?」」
(凄い圧……。橘さんが呑まれていない事を祈るばかりですね)
(このプレッシャーには覚えがあるね……。かつて梁幽館野球部へ入部した直後に感じたもの、そして川越シニアで嫌と言う程体験した和奈ちゃんの威圧感……。それ等に似てるんだ)
橘と土方さんが対峙する。それにしても土方さんから発せられる威圧感がベンチにまで来てるんだけど?耐性ない人は冷や汗出るレベルだよ全く……。
ズバンッ!
『ストライク!』
初球から最大変化のスクリュー。しかもかなり球速を上げてきているね。県大会からどれだけ練習を積み重ねてきたのか……。
(成程……。かなりキレのあるスクリューでしかも変化が大きく、球威も半端ない。沖田もよくこれを打てたものだ)
(まずはワンストライク……。次も同じ球で攻める!)
2球目。1球目と同じスクリューで、コースは高めへと……。
(ストライクゾーンに入ってくるか……。それなら!)
カキーン!!
「えっ……」
高めに投げられた大きい変化のスクリューに対して、土方さんは簡単にタイミングを合わせ、ライトスタンドへ運んで行った。は、入ってないよね?
『ファール!』
「ふぅ……。肝を冷やしたよ」
「僅かにタイミングがずれたか……。次はセンタースタンドに入れますね?」
「よ、予告ホームランとかいらないから!」
土方さんと橘が言い合ってる……。なんか打たれたっていうのに、橘は余裕を見せてない?気のせい?
(でもどうします?次はホームランを打たれますよ?)
(そこでさっき言った球を投げるんだよ。多分上手くいく筈……)
3球目。恐らくこれがこの試合最後の1球になるだろう。橘が打ち取るか、土方さんがホームランを叩き込むか……。
(私は私のこれまでの練習を活かして、そしてこれから相見えるであろう強敵の為に、投げる最高の1球!)
「いっけーっ!!」
変化の軌道からして1、2球目と同じ最大変化のスクリューだろう。だけど……。
(狙い通り……!あとはタイミングを合わせてスイングするだけ!)
不味い。土方さんのスイングとタイミングが合っている!
「…………!」
真芯で捉えられる……!
「なっ!?」
……と思ったその時。
「変化が……小さい!?」
「やっぱ予想通りだったね」
ガッ……!
これまでのスクリューよりも変化が小さく、尚且つ速い球威のスクリューに土方さんは根元で詰まらせ、その打球はピッチャーフライとなった。
『アウト!ゲームセット!!』
(まさか入部初日に奈緒先輩と勝負した時と全く同じ展開になるとはね……。あの頃の経験に感謝しかないよ)
この瞬間、6対5で私達埼玉選抜が、高知選抜に勝利したのだった……!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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