ツーアウトランナーなし。左打席に3番の番堂さんが入る。
「よーし!まずは先制点!」
張り切っている番堂さんだけど、なんな不穏な空気が流れた気がする……。
「…………」
「…………」
数秒の沈黙の後、鋼さんが振りかぶる。投げられたのは……。
「ストレート!?」
「しかもど真ん中!失投したのかな?」
ど真ん中のストレート。もしかしてチャンスボール?でも十文字さんのプレイスタイル上そんな甘い球は投げさせないだろうし、様子を見るに鋼さんが失投したとも思えない。
「あっ……」
「ああ……」
金子さんとブルペンで投げてた吉田さんがほぼ同時に言った瞬間……。
ズバンッ!
『ストライク!』
ど真ん中のストレートに対して、バットが空を切る音とボールが十文字さんのミットに収まる音がした。つまり空振りである。
「……やっぱり向こうは長子の弱点を突いてきた」
「も、もしかして番堂の奴、まだど真ん中のストレートを打てないの?嘘でしょ……?」
金子さんの発言に対して、ゴウさんが唖然としてる。多分私達の方が唖然としてるよ……。
ズバンッ!
『ストライク!』
『どうした事でしょう!番堂選手、2球連続で投げられたど真ん中のストレートに対して、2球連続で空振りしました!!』
『前の試合での番堂さんは変化球に対して強く出てましたが、それは暗にストレートが苦手……というメッセージだったのでしょうか?』
『しかし見事な空振りですね!空振りの伝道師の血が騒ぐっ!!』
『騒がせないでよそんな血……』
……そういえば県大会で姫宮と当たった時の番堂さんもストレートに対して難航していたっけ。てっきり球威に圧されているのかと思ってたけど、単純に苦手だったからだったんだね。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
3球三振……。これはなんとかしないと、この試合で番堂さんが使い物にならないかも……。
「まずは西東京選抜が3人で切って行ったねぇ」
「で、でも最後の打者には3球連続でど真ん中のストレートだったね……」
「あれなんだったんだろ?この大会を勝ち抜いてきた打者なら、間違いなくスタンドインだったのに……」
「瑞希ちゃんがそんな隙だらけの配球は組まないと思うんだけどね……。もしかしたらあの打者に対する有効打かも?」
「まさか……。だとしたら世の中には色んな選手がいるんだね~」
「出だしは上々。相手に流れを渡さずに済んだ」
「で、でもよくあの打者がど真ん中のストレートを苦手としてるってわかりましたね……」
「二宮からの情報でね。何故かは知らないけど、番堂はど真ん中のストレートに対して空振りばかりなんだよ」
「さ、流石瑞希ちゃん……。どんな情報も早く拾ってくるね」
「役に立てたのなら何よりですが、この試合でそれが何度も通じるとは思わない方が良さそうですね」
「えっ……」
「……つまり二宮は番堂がど真ん中のストレートを克服するって思ってる?」
「可能性は高いでしょう。最低でもあと2度回ってきますし、他の打者の対策もありますし、1人1人全力で抑えに行くべきです」
「……二宮が言うなら、そうなんだろうね。わかった。対応された時に備えて、私の方でも考えてみる」
「……まぁ打てなかったのなら仕方ない。切り替えて守ってね」
「は、はい……」
「あんた、いい加減にその弱点は克服しておいた方が良いわよ?」
「ぐっ……!何も言い返せない……」
いつもゴウさんに対しては喧嘩腰の番堂さんも、今の状況では借りてきた猫状態だ。まだまだ試合は始まったばかりだし、なんとか番堂さんには立ち直ってもらいたいね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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