ブンッ!ブンッ!ブンッ!
スイングする時に出る風切り音がベンチまで聞こえてくるよ……。
「豪快なスイングだね……」
「白糸台の4番打者で、雷轟と上杉さんと同じように剛のスイングを身に付けた選手でもある……。大会でもホームラン二桁打ってるし、かなりの強打者だよ」
アメリカのエクスリーグチーム出身らしいけど、そこでも4番を打っていたようだ。
「同じ剛のスイングを得た者同士、頑張ってほしい気持ちもあるんだけどね……」
雷轟、上杉さん、バンガードさんの3人は地獄の合宿を経て、覇竹のスイングを得た……。3人で苦楽を乗り越えてきたから、一種の友情みたいなものを感じているかも知れない。しかし……。
「わかってるよね?こうして違うチームで試合をしているというのがどういう意味か……」
「うん……。それに決勝ではお姉ちゃんや真深ちゃんがいるし、今この時だけじゃないんだよね。この気持ちは……」
先に決勝進出を決めている群馬選抜には風薙さん、上杉さん、ウィラードさん……。この3人に加えて、他のスタメン達もかなりの実力者だそうだ(二宮情報)。
(そんな人達に挑む為にはまずこの試合に勝たなければいけない……!)
ズバンッ!
『ストライク!』
橘も全力でバンガードさんを抑えに行っている。バンガードさんがどういう打者かは嫌と言う程わかっているだろうからね……。
カキーン!!
しかし力押しで抑えられるような選手ではないのも確か。橘のスクリューを簡単に捉える。
『ファール!』
(た、助かった……)
橘はこれまでも機転を利かせて強打者を抑えて行っている。土方さんの時と同様に抑えられるかな……?
ズバンッ!
『ボール!』
ギリギリのコースだけど、バンガードさんはそれを見送ってボール。普通なら手が出ても可笑しくないんだよ?今のコースは……。
(もしもバンガードさんの経緯が違えば、上杉さん達と競いあったり、対決していたりしてたんだろうか……?)
そしてその時は風薙彼方という投手の存在をもっと早く知っていたんじゃないかな……なんて思っちゃうよね。
ズバンッ!
『ボール!』
カキーン!!
『ファール!』
先程からファールとボールを繰り返し、フルカウントになった。ここまで来たら歩かせるのもアリなんじゃない?
(まぁ橘の目を見る限り、そんな事はないみたい……)
大宮さんからも特に指示は出てないから、このまま抑えに行くつもりだろうし、頑張ってほしい……!
「もう15球くらい続いてるよね……」
「はづき側はもうストライクゾーンに投げるしかないからね~。決め球のスクリューも変化量を間違えれば歩かせてしまうし、そうなると、最悪サヨナラ負けの可能性すら出てきちゃうし……」
「だからはづきちゃんも歩かせるような真似はしてないんだと思うな。そして多分……次の1球で決めに行くと思う」
「おっ?その心は?」
「バンガードさんは臭いコースを全部カットしていってるし、段々と投げられるコースがなくなってるから、取り返しの付く内に決めると思う……。はづきちゃんのウイニングショットで」
「はづきのウイニングショット……?スクリューの事かな?」
「何がはづきちゃんにとってのウイニングショットなのかはわからないけど、次の1球は……恐らくそれを投げるよ」
次で16球目……。橘も余り球数を費やすのは危険と判断している筈だ。野性的勘はシニア随一だったからね。その勘でバンガードさんに対する回答がなくなってきている事に気付いているだろう。
(コースは……1ヶ所だけあった!)
(橘さんは彼女に対する有効打を思い付いたようですね。それなら私はそれを信じるのみ)
志木さんは真ん中にグラブを構えた。その姿からはどんな球を、どのコースに投げようとも、捕ってみせる……という意志を感じる。
「これが私の……全力だっ!!」
橘のフォームはスリークォーターから、オーバースローに変わった。これまで練習していたのかな?見るのはこの場面が初めてだ。
(これまで見なかった橘さんのフォームから投げられる1球は相当力の込められた1球の筈……!)
(力を感じマース……!デスがそれを打ってこそ、真のスラッガーというものデース!)
カキーン!!
バンガードさんの放った豪快な打球音が球場中に響き渡った……。
「私の魂は……そう簡単には砕けないんだよ」
バシッ!
『アウト!』
打球音こそ大きかったものの、打球は段々と失速していき、センターのグラブにスパッと収まった。
『ゲームセット!!』
色々とヒヤヒヤした場面はあったけど、なんとか3対2で西東京選抜に勝利……!決勝戦進出だ!
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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