「まさか真深が打ち上げるなんてね……」
「最後に投げてきたのは……シンカー?」
「ええ。それも含めて、全ての球種が今まで対戦してきた投手にはなかったわ。ユイや恵梨香ちゃんが言ってた不規則に曲がる変化球……特にあのシンカーは打つのに時間が掛かりそうね」
「真深がそう言うのなら、この試合の得点は難しいかもね。あたしがヒット打てたのもかなりギリギリだったし、ユイと真深に投げてきた変化球はあたしの時よりも数段キレていたわ。次の打席ではあたしも打てるかわからない……」
(イーディス先輩にそこまで言わせる球を投げるなんて……。一ノ瀬さん……か。まだまだ世の中は広いわね)
「…………」
(イーディスちゃんがギリギリの内野安打、暮羽さんもバントもなんとか決める事が出来た様子だったし、ユイちゃんと真深ちゃんは凡退させられた……。試合が進むに連れて、段々と選手のレベルが上がっているけど、この試合は準決勝までとは比べ物にならない。遥も順調に育ってきているし、私もいつ追い抜かれるかわからない……)
「この試合で、ようやく私も全力が出せるかも……」
「彼方先輩……?」
「……なんでもないよ」
1回裏の私達埼玉選抜の攻撃。1番の中村さんが打席に入る。
(遂に直接対決……。風薙さんの球を直に見るのは8ヶ月ぶりだ)
全国大会では私はベンチだったから、今度はバットで皆の助けになりたいところだ。
『マウンドに立ちますは、豪速球を放つ右腕投手!全国大会から数えて、これまで打たれた安打は僅か3本!更に未だ無失点の防御率0.00!!この決勝戦で彼女を打ち砕く選手は現れるのか!?風薙彼方選手!!』
『しかも風薙選手はこれまでストレートしか投げていなくて、この成績ですから、かなり脅威的です。プロはもちろん、メジャーでも今すぐ通用する実力を持っていますね。唯一の救いは四球がこれまでに10個と少し多めなところでしょうか』
今解説で言っている四球も二宮が言うには、色々な打者の様々な可能性を見る為なんじゃないかって事みたいだけど、その心理は風薙さんにしかわからない……。
「…………」
(遥ちゃんのお姉さん……。全国大会で辛酸を舐めさせられてからこの日をずっと待っとったよ。今日は打つけんね……!)
風薙さんが第1球目を投げる。ここで皆の特訓の成果が通用するかどうかがわかってくる。果たして……?
カンッ!
『打った!?』
中村さんが打った打球はそのままバックネットへ直撃。
『ファール!』
「…………!」
「これくらいやったら皆も出来るけん。でも次は前に飛ばす……!」
特訓の成果は出てる。あとは前に飛ばすだけ……!
「……良かった。これならギアを上げても、問題なさそうだね」
(えっ?ギアを上げるって……?)
ズバンッ!
『ストライク!』
(ま、まだ速くなると!?)
2球目に投げられたストレートは1球目に投げられたストレートよりも速くなってる。このままじゃ不味いな……。
ズバンッ!
『ストライク!バッターアウト!!』
1番の中村さん、2番の友沢と連続三振。
(次は私の打席か……!)
なんとしても、雷轟に繋がなきゃ……!
「…………」
私に対しても、中村さんや友沢に投げてきた速くなったストレート。
(でもこれくらいなら、まだなんとか……!)
ガッ……!
(しまった!打ち上げた!?)
打球はふらふらとピッチャーの頭上に上がり、そのまま風薙さんが捕球……。
(えっ……!?)
ポーン……。
する事はなく、そのまま地面に落ちた。
『セーフ!』
と、とりあえずヒットにはなったけど、一体どうして?グラウンドにいる全員が戸惑ってるし……。数秒の沈黙の後、サードにいるウィラードさんが風薙さんに駆け寄った。
「か、彼方先輩……?」
「……悪いけど、この回はもう1人付き合ってもらうよ」
「えっ……?」
風薙さんの視線は雷轟の方を向いていた。じゃあ今のはわざと雷轟に廻す為に……?
(お姉ちゃん……!)
とにかく今は雷轟を応援しないとね。
金原いずみの藤和生活……(藤和高校野球部の登場人物は全てオリキャラ及び他作品キャラになります)見たい?
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